106話 鑑定屋「夜空」の1日 後編
ルートが定まった……
こうして、ヘルリアさんが来て店が始まる。
彼女は店内に入り、罪花と叶を見つけるとそちらに向かった
そして、二人のいる場所で一緒に笑顔で話している。
俺はキッチンに予め用意しておいた三人に紅茶と紅茶用の砂糖とミルクをクッキーを、彼女達が談笑している机の上に運んでからカウンターに戻る
サクヤから聞いたが……最初はここの監視として定期的に来ようとしてたらしいが……気づけば二人と仲良くなり、常連になっていた
うん、まぁ、彼女は兵士としての腕はいいらしいが……密偵としてはあまり良くないらしく、あまり大きなミスをしない限りは大丈夫らしいし、罪花と叶のいい友人となってくれてるしいいか……
とそんなことを考えながら、俺はアニメとかで見る感じで、コップを掃除したりしていた。
開店中だし、仕事もないが……一応お客様がいるから気を抜けなくて暇なんだよな……やることがないからこうやって働いてるふりをしてるが……前に
「何でコップをずっと磨いてるんですか?」
とヘルリアさんに聞かれた時
「趣味です……」
って答えて以来、突っ込まれなくなったんだよな……俺も話に混ざろうと思っても、女の人同士の話にあまり突っ込むのはいけないと思ってあまり聞き耳を立てず、こうして暇を潰している。
他にも俺は雰囲気として置いてある酒瓶に埃が被ったりしないか確認したり、店の内装を変えたり、サクヤと脳内で話したり、三人のお菓子を追加したりと色々な事をして時間を潰した。
(もうこんな時間か……)
そんなこんなしていると、お昼近くになった、俺はその頃になると、キッチンに向かい、冷蔵庫に用意しておいた、昼飯の材料を手に取った、今日の昼飯はトマト味の物を食べたい気分だったから、トマト系の海老やムール貝を入れたシーフードパスタとコンソメスープとパンにした。
俺はさっさと、料理を準備し、サクヤから手順を聞きながら四人分調理していく
そして完成すると、三人の場所に運んでいく。
するとヘルリアさんは、俺に気づくと
「むっ、もうこんな時間か……いつもすまない。これはいつもの代金だ……しかし、いつもだが、こんなに安くていいのか?」
「いえ、構いませんよ、これも趣味ですので、それに、ついでですので構いませんよ」
「そうか、ジンさんの腕なら何倍の値段でも大通りでも売れると思うが……それどころか、有名料理店でも食べれるものではないと思うが……」
「いえ、まだまだこんな未熟ですよ」
「……まぁいいか、私が食べれなくなるのも困るな」
とヘルリアさんは何か呟いた後に、財布から50リア取り出し、俺に支払った
これもいつもの日常だ……
最初は、帰ってからの遅い昼食にしてたが
叶に気づいて以来、叶にも話かけるようになり
叶がまだ慣れてない頃にミスしそうな時や、接客できない時はご飯の話でもしてればいいってアドバイスしていたら
その話を聞いていた彼女も興味を持ち、代金を払うから料理を、とサクヤに適当に値段を決めて貰い、それからハマったのか毎日作るようになった……俺も一人カウンターの方で昼食を食べる
うん、自分でいうのもなんだが、かなり美味しい、最近かなり上達してきたな
トマトの味を損なわずに、魚介のエキスなどは濃厚に出せているし、少しピリ辛にしたくてほんの少し入れた胡椒と唐辛子もいいアクセントが出ている……
その後、食べ終わった皿を下げ、皿を洗い、また暇潰しをしていると夕方になる……
その頃になると
「では、私はそろそろ帰らせて貰う、またな」
とヘルリアさんは席を立ち店を出ようとする
「はい、ではまた」
「今日も楽しかったわ」
「ヘルリアさんじゃーねー!」
「あぁ、また話を聞かせてくれ」
とヘルリアさんが帰っていくのを皆で見送って行く……
「……今日も何もなかったな」
見送った後、俺はそうつい呟いてしまう
「えぇ……そうね」
「うん!今日も平和だったね!」
と二人はそう返してくれるが……本当にこの店は人が全く来ない……
(あぁ……だからこの店潰れたんだよな……まぁ、俺は店ごと貰って、食材費も無料だからこんな生活が成り立ってるんだよな……)
……しかし本当に暇だ、そう考えていると
『……そこまで、暇なら、久しぶりに転生者の村にでも行きませんか?』
と突然、サクヤから提案が来た
トマトパスタは作者の好物のひとつです。