105話 鑑定屋「夜空」の1日 前編
ハルバート侯爵が来てから二週間程、何事もなく平和だ
朝日が上る頃の時間、俺は目を覚ます。
当たり前のように俺の部屋で俺とは違う布団で寝ている叶の姿を確認して、俺はキッチンに向かう……
(もう叶が部屋で寝てるのにも慣れたな……)
最初の頃は何処に行くでも付いてこようとしてたが、サクヤ曰く、最近は家の中なら、寝る時以外は一緒に居なくても良いし、行き先を告げれば、叶は一時間程は我慢できるくらいになったらしいが、あまり一緒の部屋で寝てるのも、気が落ち着かない
そんな事を考えながら、俺は洗面所に行き顔などを洗った後、キッチンに立つ
(今日は和食がいいかな……後、昼の食材も三人……いや、四人分出しておかないとな……)
そして、手慣れたように魔法で昼の材料を用意し、食材を冷蔵の魔道具の中にしまう。
そうこうしている内に
「ふわぁぁ……お兄さん……おはよう……」
と叶が目を覚まし、俺に挨拶してくる。
「あぁ、おはよう。朝準備したら、朝食用意するから、罪花も起こしてきてくれ」
罪花は夜更かしを良くしてるから起きるのがいつも最後なんだよな……
「はーい……」
と叶は眠そうに洗面所に向かっていく、俺はその姿を見送った後、俺は店の方に向かった。
昔は酒場だったからか、キッチンはあるが、リビングがなく、全員揃って、ご飯を食べれる場所は店の方くらいしかないが、ご飯を食べる時は色々伝えたりできるし、一人で食べるよりは皆で食べる方がいいから、俺達は普段は店の方で集まって食べるようにしている。
(うーん…適当に味噌汁と鮭と卵焼きと漬け物とお米でいいかな……)
そんな感じで、献立を考えながら食器を取り出し、食事を魔法で出して行く
俺は席につき、お茶を出して飲みながら、しばらく、待つと
「お兄さん連れてきたよ!」
「おはよう……」
と元気な叶と眠そうな罪花が来た、二人がやってきた。二人は席についた
「よし、それじゃあ食べるか」
「えぇ……」
「はーい!」
俺達は朝食を食べ始める、いつも通り魔法で出してるが美味しいな……叶も美味しそうに食べている、罪花はうとうとしながらちまちま食べているな……
「罪花、眠そうだが、何かしてたのか?」
「……えぇ……ちょっと裁縫をしてたら、つい夜更かししてしまって……そうだ……後で裁縫に必要な素材とか出してくれる?」
「……あぁ、それはいいが、夜更かししすぎるなよ」
「罪花ちゃん何作ってるの?」
「……えっと……ゴスロリ服、作ってみたくて……色々試行錯誤してるの」
とこんな感じで会話しながらゆっくり朝を過ごす。
そして皆が、朝食を食べ終えると食器を洗い、軽く掃除をしたり店の準備をする。
この店の掃除は最初の方はあんまり、掃除しなかったが、最近一人だけ常連が出来たからな……そんなことを考え掃除をしてると、開店の時間が近づく
「そろそろ変身するから少し待ってろ」
と俺は二人に声をかける、そうすると二人はそっと俺の方を見ないように顔をそらした、何回か変身する姿を見せてるが、まだ慣れないらしい
「変身終わったからもういいぞ」
俺は変身を終え二人に声をかけ、最後に店の外に出て最近作った、三日月の書かれた店の看板を出そうとすると、店の外で待ってる人物と目があった
「あっ、ヘルリアさん、どうも」
俺はその人物、ヘルリアに挨拶をすると
「あぁ、おはようございます。ジンさん」
と彼女は返事を返してくれた、ジンとは俺がマスター状態の時に彼女に名前を聞かれ咄嗟に答えた名前だ……ちなみに彼女が、常連客だ……サクヤ曰く侯爵家の監視らしいが……彼女にはそういう能力は全く無いから安心していいらしい……
「そろそろ開店しそうだと思って待たせて貰いました。」
「そうかい、丁度今開店だから、店のなかに入るといいよ」
「ありがとうございます。」
こうして二人で店のなかに入っていき、鑑定屋「夜空」の1日が始まる。