村雨の書10 再開1
〜村雨 守視点〜
「はぁ……こんなんで本当に魔王に勝てるのかよ……」
俺は城にある兵士の訓練所で一人ひっそりと小さな声でボヤいていた……
数日前……怪しい男……ムーンに言われた通りにやってみてるが……ただ魔力がすぐに枯れて疲れるだけだ……こう言う時、誰かと稽古して何が変わったか確かめたいが……魔王戦からずっと……自分の弱さを見せないように誰とも稽古をさせて貰えない……しようとしても魔王戦の時に来ていた兵士とかが止めるし確かめられない……八方塞がり状態だ……
……気分転換に街に行くか
俺はそう思い無言で練習所から出た……
そして自分の部屋に戻り茶色のフード被り少しの金を持ち城から出た……
色々行動を制限されているが、街に出たりするのは許可されている、何でも勇者が街を歩いてたら住人に活気が出るとかそんな理由らしいが……
俺は無駄に広い貴族街を歩き貴族街の門から出て平民街に来た……貴族が苦手だ……最初は弱いだの散々影で罵り、嘲笑っていたのに……魔王を倒した途端、ほとんどの貴族が手のひらを返したり娘を嫁にと言う貴族達が押し寄せてきて軽くトラウマだ……
平民街の屋台で串焼きを買い俺は一人広場で座りながら空を見上げていた。
こうやって何も考えず空を見ている時が一番落ち着く……
ぼーっとしながら過ごしていると夕方くらいになった。
そろそろ帰ろうと思うと不意に強い風が吹きフードが外れた。
「あっ!勇者様だ!!」
一人の男の子の声が聞こえた。
その声に他の住民達も反応する。
「勇者様だ!」
「勇者様よ!こっち見て!」
俺は住人に囲まれた……久しぶりに来たけど前はバレなかったが……今回はバレてしまった……
「は……ははは……」
俺は住人達の称賛の声などに答えていく。
皆の尊敬の眼差し……称賛の声……吐きそうだ……
そんな事を思っていると
「ちょっと押さないでよ!」
「うおっ、何だ」
そんな声が聞こえ始め、しばらくすると……
「村雨!!」
聞き覚えのある声が聞こえてきた。
俺はその声の方に視線を向けた……そこには……俺の前世のクラスメイト、永山が居た。
俺は目を見開いた。
どうしてだ……何故だ……なぜ永山が……ここは異世界だぞ……
「村雨!やっぱり村雨じゃないか!俺だよ!同じクラスの永山だよ!」
永山が話しかけてくる。
あぁ……確かに永山だ……
「ちょっと!勇者様に失礼よ!」
「そうだそうだ!」
他の住人が永山を捕まえようとする……
「そいつは俺の知り合いだ、離してくれ!」
俺はその住人を止めるように話した。
すると住人達の動きが止まった。
「そいつは俺の知り合いだ、話したい事があるから二人きりにしてくれ。」
そう言うと住人達は困惑し始めた……
「ですが……」
「頼む、本当に邪魔をしないでくれ」
俺はそう言いその住人の一人を睨む。
「っ……」
すると他の住人達が蜘蛛の子を散らす様に去っていった。
そしてそこには俺と永山が残っていた。
「永山……久しぶりだな……」
そう言うと永山は涙を流し始め……
「村雨……本当にごめん!!俺のせいで……お前が死んじまって……」
と永山は俺に頭を下げた。