68話 エア2
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68話 エア2
俺は少しだけ歩き森から開けた場所に出た、すると遠くからでも沢山の人が居るのが見える……
俺はそれを見てふと思い出した事があり少し立ち止まった……
(……そういえば……いざ来てみたが……作戦なんて何も考えて無かったぞ……)
『……今、調べてみましたが、この集団をまとめようとする人物が居ます。そこを通って助言するフリをして誘導する作戦はどうでしょうか?……足止めの方法は話を聞いてから考える事にしましょう……』
(……それでいいな、ありがとうサクヤ)
『いえ、まとめようとしている人までは私が案内します。』
とサクヤと作戦を決め俺はまた歩き出す。
転生者の集団に近づくに連れ俺に気づき始めたのか俺を見たり、指さしたり、ひそひそ話す人が出てき、周りがざわつき始めた、俺はそんな人達を避けながら歩き、少し気づいた事をサクヤに話しかけた。
(しかし全員若いな……高校生くらいか……?)
『はい、獅子鳥高校と言う高校生達です。先生も居ますね……この高校は現勇者村雨さんが通ってた高校でもあります。あっ、しばらく真っ直ぐ進んでください。』
(まじか……あの勇者が通ってた高校か……勇者と言いこの高校は異世界に呪われてるのか……?)
『そうですね……あっ、もうすぐつきます。』
(おっと、そうか……よしやるか)
そう言われ俺は少し歩いていくと大人と高校生が数人集まっている集団を見つけた。
『その集団が目的の場所です。』
(そうか、ありがとう。)
俺はその集団に近づいていく……その集団もこちらに気づいたのか俺を見ている……こっちから話しかけると少し不自然だから相手から話しかけやすいようにするか……
「何なんだこの集団……俺はこの平原にウサギを狩りに来ただけなのに……ウサギ狩りに来たどっかの村人達か?まぁいいか……さっさとウサギ捕まえて帰るか……」
と聞こえる様に独り言を呟いた……こう話していると異世界人っぽいし、無口よりは話しかけやすいだろ……話しかけて来なかったら……まぁ、仕方無いがこっちから話しかけるか……
そんな事を思っていると
「すみません」
と少し顔にシワがあるがきりっとした女の人が話しかけてきた。
俺はその声を聞いて立ち止まった。
「はい?どうかしましたか?」
と俺は首を傾げた。
「あの、私は虎山花子と言います。私達は転生者なんですが、この世界の事を知らず、教えてもらえると嬉しいのですが」
と女の人……虎山さんが話してきた……
(転生者っての思いっきり言ってきたな……これはどう反応したらいいか……この世界の人は転生者を知っているのだろうか……)
『白夜様、勇者パレードが演説の時、俺は異世界から来た転生者だ、と言ってました、なので知っている体で話してよいかと』
(そうか、ありがとうサクヤ)
「転生者……?あぁ!勇者様がよく言ってるあれか!別の世界の住人って奴なんだろ?いいぜ、教えてやるよ!」
と俺は返事をした。
「本当ですか!ありがとうございます。」
と虎山さんは頭を下げてきた……年上の人に頭を下げられるのって何か嫌だな……
「いいっていいって、困った時はお互い様だよ、俺の名前はエアって言うんだ、宜しくな」
と俺は挨拶をする。
そして虎山さんが頭を上げると
「で、何が聞きたいんだ?俺は物知りだからな!どーんときいてくれ!」
そう言い俺は胸をドンと強く叩いた。
「うえっ……げほっごほっ」
その衝撃で俺は少し噎せた……強く叩きすぎた……まぁ馬鹿っぽく振る舞った方が話しやすいか……?その路線で行くか……
そう思いながら俺は息を整える様に深呼吸した。
と息を整えると
「えっと、トラヤマさん?ハナコさん?達は、この世界の事を知りたいんだよな?どんな事を知りたいんだ?」
と聞く……まずそれを聞いてどこまで知っているか知らないとな……もし色々知っているなら変な行動も出来ないからな……
「……まず、ここは何処なのか教えてもらえませんか?私の事は虎山でお願いします。」
と虎山さんが話しかけてきた。
「おう、分かったぜ、トラヤマさん、ここはな……えっと……ウサギ狩りにしか使ってないからあんま気にしてなかったな……」
と俺は少し思い出すふりをした、そして思い出したかのように
「あぁ!そうだそうだ、ここカナシス平原って言ってな、王都メザイヤの北にあるだだっ広い平原なんだ、ウサギやスライムとかたまに出てきて狩りや冒険者の初心者がよく来るんだよ!ここのウサギはよく走ってるから足の肉がいい弾力を持っていて……こう、焚き火で焼いて塩で食うと本当に美味いんだよなぁ……」
と俺はヨダレを少し垂らしながら馬鹿っぽく言う……
「おっと、失礼、話がズレてしまった、俺が知ってるここについてはこれだけだぜ?他には無いか?」
そう俺は話を戻そうとする。
すると虎山さんはそれを聞いて少し考え始めた……
「……王都まで歩いて大体どれくらいかかりますか?何か、王都に入る時に注意する法律みたいなのはありますか?」
と虎山さんが話しかけてきた。
『この質問は足止めに使えますね。この人数で行くと怪しまれる事と捕まったりする事を伝えて王都に行くのを避けさせるのが良いかと』
とサクヤの助言が飛んできた……流石サクヤ、頼りになるな……
「んー法律ねぇ……王都までは大体一時間ほどだぜ、俺も王都から来たんだ……おっとそうだそうだ、王都に入る時は入場料として身分証明書と25リア払う事になってるぜ、再入場はその日の内なら身分証明書見せりゃ無料だぜ……あっ、でも転生者さん達はお金と身分証明書持ってるか?無いと冒険者ギルドで働いて払う事になってるぞ……だけどこんな人数で行くと怪しまれて捕まりそうだな!それに泊まれる宿とかも無さそうだな!はははは」
と俺は説明しながら馬鹿っぽく最後に笑った……
「そうですか……街には行けるけど泊まる宿が無く怪しまれると……はぁ……」
虎山さんがその話を聞いてため息を付いた……笑うのは少しやりすぎたか……
「まぁ!落ち込むなよ!数人なら普通に行けんじゃないか?でも一度にこんなに沢山は無理だと思うけどな!」
と俺は罪悪感から励まそうとする……
「まぁ、転生者だし無理もないか!勇者様も最初何も分からず泥棒に間違われて捕まったって聞くしな!はははは」
と俺は転生者の失敗談を話して場を和ませようとして話してみた。
そうだ……そう言えばこの人達は勇者の知り合いなんだ……俺には無理だが、勇者に頼めば何とか出来るかもしれないな……
確かこの高校の生徒とか言ってたし知り合いも数人居るだろ……
俺一人だと信じてもらえないかもしれないから勇者や魔王以外の数人を案内して説明して貰うのもありだな……勇者は俺がムーンになって誘導するか……
まずはこの話をその流れにするか……
「そうだ!勇者様も転生者だから勇者様に頼んだらもしかしたらこの人数も行けるんじゃないか?メザイヤには勇者様も居るからな!勇者ムラサメ様は優しいから転生者同士話せば何とかなるかもな!ははははは」
と俺は流れを変えるため露骨に勇者の名字を出して話してみた
すると
「えっと、ムラサメ様ってどんな人かのです?」
とずっと黙って俺達の話を見ていた一人の高校生が俺に話しかけてきた……
「ん?ムラサメ様はな!君達みたいな年齢で優しい人だぜ!黒髪黒目で女の人達にはマモル様とか言われてるぜ!でもそんな女達にも興味を示さず日夜しゅぎょ……」
俺はさらに下の名前を出し、色々話し始めようとすると
「村雨守だって!?」
その生徒が俺の話を遮って声を出してきた……まぁ、異世界で知り合いが勇者やってたら驚くよな
「……もしかして勇者様と知り合い?」
俺はその生徒に首を傾げながらそう聞いてみた。
「いや、まさかな……同じ名前の人なだけかも……もっと教えてくれ」
とその生徒は凄い俺を睨み付けるように話しかけてきた……うーん……確かに同姓同名の人の可能性ってだけで信じない可能性があるな……どうするか……
『念写の魔道具を出して勇者の姿を見せるのはどうでしょうか?』
(なるほど……)
「うーん……待ってな……確かここに……」
と俺はマジックバッグの中を漁り始めた
「くそっ……どこだ……出ろ、念写の魔道具……あぁ、あったあった」
そう俺は唱えながら念写の魔道具を道具創造魔法で作り出し取り出した。
見た目は片手サイズの青い水晶でとても綺麗だ
『この魔道具は握りながら"写せ水晶よ"と言うとイメージした物を空中に映し出します。イメージは任せてください。』
(ありがとう)
「これはな、俺のイメージを写す魔道具なんだ、勇者様の顔見せてやるよ」
と俺は魔道具を握り
「写せ水晶よ」
と詠唱した、すると青白い勇者の姿が空中に映し出された
それを見た時、周りの人達は驚いていたが
「っ……村雨……」
その勇者の映像を見ながら先程俺に勇者について聞いてきた男子生徒が呟いた
「3日前に通り魔に刺されて死んだ村雨が……どうして……まさか先に転生してたのか……」
そしてこう続けて呟いた……ん?
「……えっ?3日前?死んでる?何言ってんだ?勇者様11ヶ月くらい前に現れて今もピンピンしてるぞ?人違いなんじゃ……?」
俺はその言葉に思わず反応してしまった。
だって3日前って……勇者が転生したのは11ヶ月くらい前からだぞ……?どういう事だ……?
『……調べました、どうやら、この世界とあちらの世界の時間の流れが違いますね、地球での1日はこちらの世界では多少のずれが何度もありますが約100日から110日くらい進んでいるみたいです。』
そうなのか……じゃあ俺が死んでから地球はまだ数日しか経ってないのか……
「いやあの顔はどう見ても村雨だ……ピンピンしているって事は生きているって事だよな……?冗談じゃ無いよな?」
俺も3日前に死んだ人が異世界で数カ月も生きてたら疑うが……まぁ本当の事だからしっかり伝えるか……
「あぁ、生きているよ、と言うか世界で一人しか居ない勇者様が死んでたら大変だよ」
と俺はそう伝える。するとその男子生徒は黙ってしまった……その時
「ちょっと待ってくれ、勇者は一人なのか?」
と突然、他の男子生徒も話しかけてきた。
何故それを聞くのだろうか……?まさか……
(サクヤ、今話しかけてきた生徒を調べてくれ。)
『わかりました。……この人、勇者ですね……』
(そうか……ありがとう、サクヤ)
俺はサクヤに礼を言いながら考えた……やっぱりか……この勇者二号とかが街に来たら大変だな……少し脅しをかけるか……
「あぁ、この世界に勇者は一人、ムラサメ様だけだよ、他に勇者が居たら偽物だー!とか言われて捕まえられて処刑かもな!」
と俺は明るい雰囲気を出しながら物騒な言葉を混ぜ勇者二号に説明してあげた
「そ、そうか……ありがとう……」
と勇者二号は礼を言いながら顔を青ざめさせた……
「まぁ、勇者様の知り合いか何なのか知らないけど、とりあえず数人だけなら会ってみるか?王都までなら俺が案内するぜ?」
と俺はここでずれかけた話を戻した……すると
「……俺は村雨に会いに行く」
何かを決心したのかさっき黙った男子生徒がそう呟いた……これは話の流れを変えるのに成功したな……
これ以上居るとまた話が脱線しそうだ……少し場を離れるか……
「おう、いいぜ、俺もウサギを捕まえたら王都に帰る予定だからな!その時に来たい奴は全員とは言わないが案内してやるぜ!そろそろ俺は狩りに行くからな!それじゃまた来るぜ!」
と俺はその場を離れる為に嘘を付きそそくさとその場を離れた。
俺は獅子鳥高校の集団から離れて平原を考えながら一人歩いていた。
王都に来させずに足止め出来たのはいいが……しかし俺だけじゃどうにも出来ないとはいえ、咄嗟に勇者にどうにかして貰うって考えたが……具体的にどうしたらいいのか……
(なぁ、サクヤ、お前ならあの人数を勇者に任せる場合、どうする?)
とりあえず俺は平原を歩くのを止め、草むらの上に座りサクヤに相談して見る事にした
『そうですね……今すぐに何とかすると言うなら今の勇者の力だとあの数人なら可能かと思いますが……あの数は不可能ですね……』
とサクヤから返事か帰ってきた……そうか……やはり無理か……
『……ですが、時間がかかりますが、どうにかする事なら可能です。』
(本当か!?)
『はい、時間がかかりますが、勇者の力で村を作る権利を貰う程度なら村を作ってる間なら足止めは可能かと……その間に勇者や勇者二号にはそれとなく説明して偽装魔法を覚えて貰いますね、他にも何通りかありますが、これが最善策かと』
(なるほど……いいな、それ……流石サクヤだな、ありがとう)
『いえ、白夜様のお役に立てたのなら嬉しいです。』
本当にサクヤが居てくれて心強いな……
『白夜様、そろそろ戻った方がいいかと』
(そうか、ウサギとか狩れてないが……まぁいいか)