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そのへんのダンジョン  作者: どっすん権兵衛
第三章 広がるダンジョン
44/48

43 狂気


 

「し、篠山……?」



 笹島が呆然と呟いた。


 異常すぎる。

 校庭のあまりの惨状に全員、言葉もない。


 確かに校舎内でも処刑人にねじ切られたり両断されたりした死体をいくつか目にした。

 だが、ここにあるのはそれよりさらに酷い……チェーンソーでも使って念入りに解体したかのようだ。


 篠山が……気が触れたのだとしても、ここまでの惨状を引き起こせるとは到底思えない。

 こいつは本物だろうか……【解析】を発動する。



 ===================

 篠山拓海

 レベル ??? MP ???

 ???

 ===================


 何も見えない。

 これは……どういうことだ。



「篠山……これ、お前がやったのか?」


「先公どもがちょっとウザくってな。軽く思い知らせてやったら他にも突っかかってくる奴がいてなァ。ああ、それと、帰ろうとする連中も引き留めておいたよ。これから素敵なショウが始まるってな」


「……ショウ?」


「決まってんだろ。ダンジョンで手に入れた力を、オレとオマエで全員に見せてやるんダ。お披露目会ダよ」


 言うが早いか両手をこちらに向けると、それぞれの手の平から黒い円盤が放たれた。



「みんな、離れろ!」



 俺は即座にインベントリから右手に魔剣を取り出して2つの円盤を迎撃する。どちらも狙いは俺だ。


 強い反動を感じたが、二つともなんとか打ち落とした。円盤は校庭の土を抉り、深い溝を残す。



「やるな、笠木。そうダよなあ、ダンジョン独り占めしてレベル上げてやがっタもんなあ」


 篠山はゲラゲラと笑う。どんどん言葉のイントネーションがおかしくなってきている。


「ずルいじゃねーかよ、そのアプリも、武器も。オマエ一人ダけ、恵まれすぎテんじャねーか? みンなも、そウ思うだろォ?」


 ……廃ビルのことも、アプリのことも知っている?


「そウダ。知っているぞ。落とし穴に落ちテ、ブザマに逃げタオマエを。マガガミに追い詰めラレ、泣いテ這いずッていタオマエを」


 篠山じゃないな。何かが化けている? 乗っ取られている?


「疑っているな? ちゃんトおれダよ、カサギえいすけクン。カミと一つになっタんダ。あくまダっタか? マァどっちでもイイ。イーーーーーーーーィきぶんダぞぉ」


 篠山は……篠山の形をした何かは、突然両手を上げて叫んだ。



「飛び散れ……オレ!」



 篠山の体が爆ぜた。


 飛び散った肉片は空中で目が開いて腕と翼が生え、醜悪な怪物となって周囲の人間を襲い始めた。



「……えっ!? きゃあ!」


「うわっ、なんだこれキモい、こっち来んなよ!」



 背後から仲間たちの悲鳴が聞こえる。

 が……おれは目の前のものから目を離せない。


 篠山の首から上はそのままだがその下は……歪に捩じくれた真っ黒な身体だった。

 腕や脚はそれぞれ二股に分かれ、8本足の黒いタコのようだった。


 右手に握る魔剣が激しく振動し、グレーの刀身が赤く染まっていき、憎悪の呪詛が溢れ出す。

 復讐の対象を見つけたのだ。



 こいつはーー禍神だ。



「カサギぃぃぃ!! どうダ、オレの美しイイい瞬間脱衣!!」


 篠山がロケットのように上空に舞い上がった。

 触手の2本が槍のように尖り、俺目掛けて伸び走る。



「どっちかっつうと汚ねえ花火って感じだったな」


 俺は軽口を叩きながら両手で魔剣を構えて触手に斬りつける。硬い。

 弾かれた触手はうねり、元の場所へと引っ込んでいった。


「オマエのテアシを切り取っテ、シラカワトササジマォオォ、オマエの目の前デデデ、オカシテやるゥアア!!」


「変態め!」



 落下しながら叫ぶ篠山の口が有り得ないほど大きく開き、そこから黒い槍が連射される。

 さらに触手からはさきほどの黒い円盤が放たれた。円盤は弧を描いて俺の方に向かってくる。


 ひらけた校庭では【魔手】が使いづらいーー

 ジグザグに走って降り注ぐ槍を躱し、円盤を弾きながら篠山の落下地点に斬り込んだ。


 触手の2本が絡み合って剣を形成し、魔剣とぶつかり合う。

 魔剣の威力が篠山を数メートル吹き飛ばすが、さしたるダメージもなく地面に降り立った。


 俺の方は左肩に一発、槍を受けてしまった。

 舌打ちしながら、貫通した槍を引き抜いた。ごぽり、と血が溢れ出す。



「俺はな、笠木。モテたかったんだ」


「……は?」


 突然真面目な顔になり普通に喋り出した篠山に、間の抜けた返事をする俺。


「うおっ!」


 だが、その隙を狙って4本の触手が鞭のように振るわれた。

 不意を突かれた俺は【加速】を発動して回避する。



「中学までは確かにオタクだった。高校に入ってオタク趣味を封印し、テニス部に入り、髪も染め、ファッションにも気を遣った」



 篠山は真面目な顔と口調のまま、首から下の触手は平然と攻撃を続けている。



「だがモテなかった」



 至近距離で手の形になった触手から火の矢が放たれ、思わず魔剣で斬り払うと炎が飛び散って視界が覆われた。


 躱し損ねた触手が俺の脚を打ち、バランスを崩しそうになるが、危ういところで踏みとどまった。



「お前はゲームオタクのまま好き勝手しているのに、白河や笹島とも仲良くしている。文化祭の時……不良に臆せず向かっていった。俺とお前と何が違う?」



「知るかよ! 俺だって別にモテちゃいねーよ!」



「…………ズぅ・ルゥ・いィ・ぞオォォォォ!! カ・サ・ギ・イィィィィ!!」



 突然憤怒の形相になった篠山はさらに苛烈な攻撃を仕掛けてくる。


 ……これはもう話など通じんな。

 魔剣を握る手に力を込める。魔剣の憎悪はもう俺でも抑え切れないほどに高まっている。



 ……篠山、引導を渡してやる。


やりすぎた

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