鬼束匠家具
拙作「腐男子御曹司の彼」の番外編となります。
■登場人物
(おにつかあずさ)
鬼束梓 25歳(通称栗本)
鬼束スタッフ社員。BL創作女子。デザイン系の専門学校卒業。
将来の夢は好きなカップリングが愛し合っているところを覗くことというリアル腐女子。
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(おにつかゆきひろ)
鬼束幸広 35歳
鬼束スタッフ社長。主人公の夫。有名私立大学卒業。
自己資金で始めた派遣会社鬼束スタッフが急成長し、その腕を買われ父親の会社の
鬼束家具副社長に就任。業界トップの急成長を成し遂げる。
BLコン大賞受賞した人気漫画家キヒロとして有名になったが
列島書房の編集部に性的差別を受け断筆。
今は読者の夢を壊さないように同人作家を続ける隠れ腐男子。
「義母様って、何をやり始めたの?」
義父様は脳梗塞から見事全快して鬼束スタッフの仕入部門を担当して貰っている。
「鬼束匠家具を立ち上げてるよ。」
「ええっ。まだ懲りて無いの?」
MI6に拘束されたときは酷く落ち込んでいたけど会社が人手に渡ったと聞いたときから、晴れ晴れとした顔をしていたのに、まだ家具屋をやろうなんて、懲りてないとしか言いようがない。
「いや。俺が裏から手を回して焚き付けた。資本金は100%ペーパー子会社を作って其処から出ているよ。あの人は親父から出ていると思っているんじゃないかな。」
NIKEAに従業員ごと会社を引き取って貰うために自宅を売却して資本金に注入して借金返済したことを知らないらしい。
「何でまた。」
「結構侮れないんだよ。鬼束家具時代の売上の2割はあの人の伝手なんだ。」
「やっぱり銀行系は強いね。どんなコンセプトなの? キヒロのことだから、『ファニチャープラザ。ONITUKA』と競合しないようにしたと思うけど。」
「あの人、LBGT差別の急先鋒として顔が売れたから、それに共感できる世代ということで55歳以上の独身男性をターゲットとした。」
「男子中高生なんかもそうじゃないの? でもお金は持ってないか。」
「ああ。それにあの世代は身近な女子中高生に迎合してしまうから、内心嫌っているだけじゃダメなんだ。だから『熟年離婚の勝ち組になる』をコンセプトに男性に使いやすい高さのキッチンや家具を売ろうと思っているんだ。料理が出来る男性を販売担当にして、上手く仲良くなれれば料理を教える役目もお願いするつもりだ。」
料理が出来る男性って、凄く限られるんじゃないかな。
「それって、まさかゲイの男性にやらそうなんて・・・。」
1人暮らしゲイは料理が趣味という人間も多いらしい。いやこれはBL知識か。
「もちろん。客を落とせれば美味しい思いもできるし売上も上がる。実は最近、年齢を重ねてエッチの相手が居なくなった『受』からの相談が多くて困っていたんだ。」
一種の枕営業をさせようということらしい。
「へえ。どんな相談なの?」
「例えば一般男性狙いで性転換してみたんだけど、ニューハーフに一般男性受けする秘訣を聞いてみたいとか。」
「性転換って、やってみるものなの?」
「切羽詰っていたんだろうな。それに『受』は『攻』に養って貰ってて結構金を持っているらしい。」
「それならニューハーフのお店に行って聞いてくればいいじゃない。」
「そう思うだろ。だが性転換したようなニューハーフには会わせては貰えないらしい。大抵はオカマ丸出しのアリアリが相手するんだそうだ。」
「『受』とオカマやニューハーフは似て非なるものだよね。若い『受』のゲイは女装者を毛嫌いしていると聞くよ。そんな人間が近寄ってきても仲良くするわけないか。でも女装くらいなら、動画サイトに幾らでも転がっているよね。」
「ああ写真を見せて貰ったんだが完璧に女に化けられるんだが日常的に女装できないんだそうだ。面倒らしい。」
「何よそれ。女装者をバカにしてるとしか思えないよ。じゃあ何、お客様宅に上がりこんで料理を作って酔っ払わせたところで寝込みを襲うわけ?」
「多分そうなるな。『受』は事前準備に時間が掛かるから、隙を狙って一般男性を襲うのは難しいけど、性転換していればオイルだけだから無理矢理繋げられるんだそうだ。」
BLでは絶対に描写しないけど、男同士のエッチの場合、『受』側の事前準備が必要らしい。つまり、入れられる箇所のお掃除が必要なんだそうだ。
「つまり何・・・『攻』が一般男性を無理矢理エッチするのは無理だというの? だったらBLの大半が成立しなくない?」
「無理矢理、その場で掻き出すなりなんなりする必要があるな。」
「間抜けすぎる。そんな描写描けないわよ。」
「グロい系BLが流行っているからって無理だよな。」
「話を戻すとお客様がクレーマー化するぐらいならいいけど、訴えたりしないのかな?」
「無理だろ。『攻』が無理矢理入れたなら怪我するだろうから、傷害罪が成り立つだろうけど。普通のエッチで女役が襲っても誰も怪我しないもんな。」
お読み頂きましてありがとうございます。
こんな家具屋があったらホラーなのでホラージャンルにしました。
『受』の性転換者がニューハーフのお店で相手にされていないところを見たことがあります。
いろんな人が居るものですね。
本編も読んで頂けると嬉しいです。