表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マギカ・バトラーズ~1500年後から始めます~  作者: 雪沢 泉
Act.1 『第二マギカ学園での日々』
9/45

マギカ8 雪降る町の記憶、それと………






俺が生まれたのは、北の果てにある小さな島の小さな町。


名前もないその町に俺は生まれた。


一年を通して雪が降る白い町。


俺が生まれたその日も、雪が降っていた。


町と同じ真っ白な髪に、どこか知的な碧緑の瞳をした美少年。母さんはよくそう言って、おれの容姿を誉めてたな。まぁ、当の本人である俺は、今でも「そうかな?」と思うが。


父さんは、俺が生まれる前に亡くなっていて、生まれた時には母さんと二人きりだった。


母さんの話に出てくる父さんは凄い人で、どんなに強大な魔獣も軽く倒し、無双していたらしい。


そんな父さんが森で倒れているところを母さんが助けて、暫く一緒に過ごしていたんだけど、無愛想な父さんを町の人はよく思っていなかったそうだ。


しかし、マイペースで押しの強い母さんが父さんを振り回したり、なんなりしていたら、父さんのほうが惚れて告白して、結婚することになったらしい。


そして、俺が生まれる少し前、町の近くで“戦機神時代”の遺物が万の時を越えて動き出した。


ん? あぁ、“戦機神時代”は分からないか


一万年以上…………いや、今から数えるなら、一万千五百年前、と言ってもあの時代の事はよく分かっていない。しかし、あの時代の“兵器”は普通じゃなかったそうだ。あの時代の“兵器”によって、幾つもの国が滅んだ。父さんがガラクタにした後の残骸さえも、身体が震えるほど異質な空気を纏っていたらしい。


ん? 父さんが命をかけて戦った? あぁ、違う違う。父さんは無傷でガラクタにしたらしい。なんでも、もともとこの世界の人間じゃなくて、物凄く荒廃した世界で、無敗を誇ってたらしく、“兵器”と戦った後、「あんなガラクタ余裕だ。」って、言ってたらしい。


ん? じゃあ、父さんは何で亡くなったかって?


…………………。


次の日、廃墟を壊す仕事の最中に、壊した時の破片が運悪く頭に刺さって、即死。


そんな顔するなよ、俺も最初聞いた時、嘘だろ父さん……………って、思ったからな。


さて、そろそろ本題に入ろう。なんで、あの魔導機器マキナが俺の始まりなのか………











「今日も寒いな~。」



そう。あの日も何時ものように町に雪が降り、寒かった。まぁ、町の人達は慣れっこだから、特に気にもしないけど。



「おっちゃ~ん。」


「おう坊主、今日も来たか。」


「暇だからね。」



あの日も何時ものように、近所の技師のおっちゃんの仕事場にお邪魔していた。


うちの町はびっくりするほどの田舎で、同年代の友人は一人しかいなかったし、そいつは病気がちでよく寝込んでたから、たまにしか会えなかったので、普段からよくおっちゃんの仕事場にお邪魔して、使わない素材を使わせてもらって、魔導機器作りをしてた。



「え~と、ここがこうで、ああしてこうして…………………ん?」



その時、頭が急に冴え渡ったのを今でも覚えている。頭の中に浮かんだモノを……………言葉に出来ないなにかの通りに、手を………指を動かして、道具を持って素材と格闘した。


一時間ぐらい後だったかな? ソレは完成した。



「出来た!」


「ん? どうした?」


「見ろよ、おっちゃん!」


「お前、これは魔導機器か?」


「多分。」


「どれどれ。おぉ! 魔力を流すと熱を生み出す魔導機器か! この町じゃ、重宝しそうだな。にしても、五歳で魔導機器作れるなんざ、天才かもな。」


「そうかな? そうだといいな。」



初めて作った魔導機器は、小さくて、飾り気も無くて、見ただけでは、ガラクタと同じ……………、それでも、ソレは俺の始まり。初めて俺が作った、魔導機器。


俺はソレを持って、直ぐに家に帰った。一番に伝えたい人の元に…………



「母さん!」


「あら、お帰りシロ。早かったわね。」



家にいた母さんは、何時ものように冷たい水で皿を洗っていた。そんな母さんに、俺はソレを渡した。



「シロ、何コレ?」


「魔力を流してみてよ。」


「あ………温かい。」


「ソレ、俺が一人で作ったんだ!」


「シロが…………一人で?……………凄いじゃない!」


「まぁね。ソレ、母さんにあげるよ。」


「いいの? ありがとう!」



母さんの嬉しそうな笑顔を見て、俺も嬉しくなった。


次の日から、俺はまた母さんが見せた笑顔が見たくて、思い付く限り色々なモノを作った。


そう。


初め俺は、暇潰しのために魔導機器を作ろうとしていた。でも、あの日から笑顔を見たくて魔導機器を作るようになった。


だから“始まり”


俺が魔導機器を作った“始まり”


俺が魔導技師(研究者)を目指そうと思った“始まり”


俺が夢を見つけた“始まり”


いつか叶えたい夢…………



『世界中の人を、笑顔に出来る魔導機器マキナを作りたい。』











「ま、叶えられるかは分からないけどな。」


「素敵な夢だね。応援するよ! 私に出来る事があったら言ってね!」


「ありがとな。その時は、宜しく頼む。」



世界中の人を笑顔に出来る魔導機器……………頭の中にあるソレの設計図は、いまだ靄よようなものがかかっていて、見ることが出来ない。きっと、ナニ(・・)かが足りないのだろう。


見つけられるだろうか? まぁ、こういうものは、見つけようと思っても見つからない。焦ることはないし、叶わないなら、それでもいい。


けれど、死ぬまでは…………いや、この夢を忘れるまでは、諦めるきはない。


母さん。


あの時言ってたよな



『シロ、傷つくかもしれないわよ? それも何度も………それでもいいの?』



確かに何度も傷ついた。


前に進めなくなるぐらい傷ついた事もあった。それでも、また歩けるようになった。


時に厳しく叱咤する人


時に優しく諭す人


時に笑って無理矢理歩かせる人


たくさんの人達が、俺を支えてくれた。


その人達には、返しきれない恩がある。返しきれないけれど、毎日お礼を言って我慢してもらう事にしている。異論は認めない。


その中には、母さんもいる。父さんもいる。


1500年も経ってしまい、俺を覚えている奴なんておそらくいないだろう。


それでも、また出会いがある。



「今日のお昼はどうしよっか?」


「ここのメニューは豊富だからな、迷う。」


「そうだね。」



最近あったこの出会いだが、何時もと違う気がする。アイツ(・・・)と話していた時のように、他の人と話す時とは違うナニ(・・)か……………それが分かれば、夢に近づける気がする。



「どうかした?」


「いや、なんでもない。」



何時か、分かる日はくるだろうか






シロが気付き始めたナニ(・・)か、それをシロが分かるのはもう少し先です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ