マギカ2 王都
「助けていただき、感謝します。」
「いや、たまたま通りがかっただけなので、それより、そっちの人は大丈夫ですか?」
魔導斧を持っていた奴にやられたのだろう。騎士の一人が、腹を怪我していた。地味に痛そうだ。
「いえ、大丈「失礼。」ぐほっ!?」
「何をする!」
「がはっ! げほ! げほ! あれ? 痛みが引いた…………?」
「なに?」
少し荒治療だが、『回復』の属性凝縮液を装着して殴った。実はコレ、欠点がある。強く殴れば、殴るほど回復するという使いどころに困るモノなんだよな。
「荒治療ですいません。これしか回復方法なかったもんで。」
「い、いえ、感謝します。」
なんか引かれた。まぁ、それはいい。それよりさっきから、馬車の中から話し声が聞こえる。
『爺、わたくしもお礼を言いたいです。』
『ですが王女様、他国の暗殺者かもしれませぬぞ!』
『命をかけて、わたくし達を守ってくれたのですよ。そのような事を言うものではありません。』
『ですが………』
『とにかく、お礼はいいます。』
『王女様!?』
そんな会話の後に、馬車のドアが開いて、中からドレスを着た、青い髪をロングにして、空色の目をした少女が出てきた。それにしても、王女様って言ってたよな。どこのだろ? 普通に行けば、今いる国だろうけど。
「助けていただきありがとうございます。わたくしは、このラウナ王国の第一王女、メイリア・リエル・ラウナです。どうぞ、メリエとお呼びください。」
「シロ・アルブラスターだ。宜しくな、メリエ。」
「はい、シロ様。」
花が咲くように笑うメリエ。にしても王族か、1500年前に会った王族は面倒な奴ばっかだったが、この娘はいいこみたいだ。
「貴様ぁぁぁぁぁ! 王女様に対してなんたる素っ気なさ、挙げ句のはてに呼び捨てだとぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」
この爺さんはめんどくさい奴だ。どうやら、王族は至高だと思ってるタイプ━━━
「もう恋人気取りか? ああん? 爺は許しませんぞ! こんな何処の馬の骨とも知らぬやつなんかにぃぃぃぃぃぃ!」
━━━違った、王女至上主義だった。違う意味でめんどくさいな、まぁ、マシなほうだけど。助けを求めてメリエのほうを見るが………
「そんな、恋人なんて…………」
赤くした顔をおさえてクネクネしてる。駄目だ、使い物にならない。それから暫く、爺さんの怒りを聞き流した。そして、復活したメリエが近くにあるラウナの王都に向かうと言ったので、便乗する事にした。乗っている最中、好きな女性のタイプとか、色々聞かれたが割愛する。
「ついたようですね。」
「そうか、それじゃまたな。」
「はい。今度是非王宮に来てくださいね。」
「機会があればな。」
メリエに別れを告げて馬車から降りる。町は、とても活気がある。それにしても、魔導機器が殆ど無いな、魔導技巧科学の技術が劣化したっていうのは本当みたいだな、俺の持ってる物や、作った物を渡してもいいのだが………流石に目立つよな、それはめんどくさい。
適当にぶらぶら歩きながら、屋台で売っている焼き鳥を買ったり、露店を冷やかしたり、俺なりに楽しんで進む。にしても、やっぱり食べ物は、人の手で作られたのが一番美味いな、魔導機器で作っても気持ちは伝わらねぇんだよ。俺は、『魔導機器による全ての料理の全自動作成計画』に、永遠に反対してやる! あ、そもそもそんな計画無くなったのか。よし!
あんまり関係無いことを思いつつ、歩いて行ると前方に人だかりが出来ていた。また面倒事か。人垣の間から見ると、小さな女の子二人が抱き合って震えており、その二人に向かって剣を振り上げている奴が…………って、おい!
人垣を飛び越えて、女の子二人の前に立ち、剣を義手で受け止める。まったく、子供になんて事するんだ。
「なんだ貴様?」
「それはこっちのセリフだ。こんな小さな子供に何するんだ。」
俺が問いかけると、厭らしく笑って
「そいつらはなぁ、俺様の服を泥で汚しやがったんだ。万死に値するだろ?」
はぁ!? なんだそりゃ、んな下らん理由で子供を殺すのか? 久しぶりに見たよこんなクズ。
「邪魔するならてめぇも殺す。」
「…………。」
さて、周りに助けてくれそうな奴はいないし、どうしたもんか……………あ! そういえば、メリエから、この国で困ったら出せって言われたのがあったな。懐から、メリエから貰ったメダルのような物を取りだし、男に見せる。そして、それを見た周りの人垣がざわめく。
「あれは王家の紋章じゃないか!」
「ということは、王家の客人か?」
「なに?」
「客人というか、王女を助けはしたが。」
「おい! なんの騒ぎだ………む? シロ様! シロ様ではありませんか!」
「どうも、カインさん。」
人垣を押し退けやって来たのは、メリエの護衛をしていた騎士の一人で、怪我をしていた人だ。どうやら、なんとかなったようだ。その後、カインさんや、騎士団の人達のお陰で、女の子二人は罪に問われず。剣を持っていた男は、厳重注意になった。これで、一安心だな。
「お兄ちゃん、助けてくれて、ありがと。」
「あ、あの! ありがとうございます!」
「おう。無事で良かった。」
助けた女の子から礼を言われので、とりあえず、頭を撫でておく。二人は笑ってくれたが、次の瞬間恐怖の表情に変わる。
「シロ様!」
「調子にのってんじゃねぇ! 小僧ぉぉぉぉぉ!」
振り向くと、さっきの男が剣を降り下ろしてくるところだった。直線的に降り下ろしてくるって、コイツはバカなのか? 1500年前の知り合いは、降り下ろしただけでありとあらゆる方向から、剣がくるように見えたぞ。しかもアイツ、魔導武器使わずにやってのけたし。とりあえず、剣を義手で受け止める。
「なっ!?」
「大人しく引き下がっていれば、良かったのにバカだなお前。」
「クックック。バカめ! この魔導剣は受け止めても無駄なんだよくらえ、ぐぎゃぁぁぁぁぁぁ!?」
どうでもいいので、予めセットしておいた『雷』の属性凝縮液を使って、電撃をくらわせる。電撃をきると、プスプスと焦げた男が崩れ落ちた。
後の事を騎士団の人に任せ、女の子二人に別れを告げて歩き出す。
にしても、隠すきないのか? 尾行してるのバレバレだぞ。振り向くと、フードつきのマントで全身を包んだ、変な奴がいた。
「やぁ。」
「いや、やぁって。」
「第二マギカ学園に入学しないかい?」
「唐突だな、おい。」
しかし、第二マギカ学園か………………面白そうなので詳しく話を聞く事にした。
この世界の王族は、名前を2つもっています。一つ目の名前は、王族としての名前。2つ目の名前は、人としての名前です。メリエの場合は、メイリアが王族としての名前。リエルが人としての名前です。つまり、これから私は王族の名前を出すときは、名前を2つ考えなきゃいけないわけです。うっ! 頭が…………