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神様絵日記

作者: 至高の神

我の偉大なる一作、とくと見るが良いわ!

 ――――ふふふ、来たな小さき者。憐れなる人間よ。

 さあ、至高の一柱たる我に好きなだけ貢ぐが良い。貢げば貢いだだけ、そなたの一族に繁栄が訪れるであろう………。


 ――――なに? 貢ぎ物なんてない、だと? ただ迷い混んだだけ、と?

 ぐぬぬ………至高の一柱たるこの我をバカにしおって…………!

 そこにひれ伏せ! 神の領域に貢ぎ物もなしに踏み込んだ罰だ! 我の素晴らしさについて、小一時間ほど語ってやる!


 ――――なんだ、その、神を小馬鹿にするような顔は。……なぬ? しょぼい? ええい、うるさいわ! 大人しく人の………ああいや、神のありがたーい話を聞かんか!

 いいか? あれは今からとても昔の話でな……………



―――だいたい、三十年前―――



 至高なる我とて、最初から頂点だった訳ではない。何もできぬ矮小な霊体として、我はこの世に顕現したのだ。

 過酷な日々だった………狼が兎を狩ればその血肉を拐い、狼が息絶えればその屍を漁り………何分このやしろを離れられぬ故、自ら食事を用意することさえままならなかった。

 だがそんな苦痛を耐え続け、我はついに世に干渉する力――――そう、声を得たのだ!

 ………なんだその目は。もう少し驚け。どこぞの、一言主なる神はいちいち一言ずつしか話せぬと聞く。我は普通に話せるようになったのだぞ? その瞬間、我は奴より数段上の存在になったのだ!


 ………話を戻すぞ。声を得た我は何をしたと思う? ふっ、答えなくとも良い。貴様のような醜く憐れな人間なんぞには考えも及ばぬ偉業よ。

 ………やめろ、考えるな! 我がこれから言うのだ! だからそう考えるな! 我の立場を奪おうとするでない!

 全く………良いか? 我が声だけで果たした偉業………それは、人間に貢がせること!

 ………なんださっきからその目は! 何の奇跡も起こさず、何の力も出さず、声だけで間抜けな人間共に貢がせたのだぞ!?

 ………それくらい妖怪でもできる? くっ、貴様も我をそんなよこしまなる者と同列と見るのか………いや、今は許そう。続きを聞けば貴様も考えが変わり、我を崇めるようになるであろうからな。


 そうこうして我は食の安定した供給を得ることができ、暇………いや、瞑想するほどの時間ができた。

 そこで我は自らの力を試し続けた。声はどれだけ届くのか? 社からどれほど離れられるのか? 我にはどんな奇跡が起こせるのか?

 日が経つにつれ、我が力が強大になっていくのが分かった! 貢ぎ物の、シュウカンシなるもので知識も得た! あれは心地よい時期であった…………。

 ……………? 我にどんな奇跡が起こせたのか、だと?




 ―――――話を戻す………ええい、我が戻すと言ったら戻すのだ! 貴様の質問に答えてやる義理はない!

 ふぅ………まあ、なんだ。そんな日々を過ごしているうちに、人間共は我を恐れに恐れ、貢ぎ物は徐々に豪華な物へと変わっていったのだ。

 そう、桜餅………あれはいい。とても甘美だった。それにチョコレートという物も素晴らしい。あのように手の込んだものを、特殊な包装で包み持ってきたのだ。我の偉大さが少しは分かったであろう?

 …………ん? 値札? あぁ………それならここに。…………なに、見せてほしい? まあいいだろう。………どうだ? 高かろう? 0が三つも付いているのだ。あのシュウカンシよりも高いのだ。我に相応しい至高の品に決まっている!


 しかしな? 我はこの程度の品では満足できなくなったのだ。さらにより良い品を持ってくるよう人間共に言いつけた。すると人間共め、何を思ったか人の子を連れてきおった!

 ―――なぬ? それが普通? 馬鹿者! あそこまで甘美な物を口にした後で、今さら生き血死肉なんぞ食えるか! 我はもっと甘いものが食べたかったのだ………。

 だが、せっかく持ってきた生け贄を無下にするわけにもいかん。見れば、余程ひどい目にあったのだろうな。服こそ多少小綺麗にしておったが、髪は荒れ、肌は傷だらけ、目は虚ろであった。

 さすがに憐れに思ってな。貯蓄していた貢ぎ物を分けてやったわ。どうだ? 我の優しさが少しは理解できたであろう?

 ………む? その子はどうなったか、と? …………あぁ、食ったさ。食ったともさ。貢ぎ物だぞ? 食って何が悪い。栄養価で言えばチョコレートよりも上であるからな。暴れもせずただ無抵抗に我の糧となったわ。ははははは! ふははははははは!



 ………………ぬぬ? なんだ、急に立ち上がって…………なに? 我に外の世界を案内したい? しかしなぁ………我はこの社から離れられぬからなぁ…………え? 人に化ければ出られるはずだと? そ、それくらい知っておるわ! 少し待っておれ。変化の術で華麗に化けてくるとしよう。


 待たせたな。……………む? この姿か? あぁ………生け贄となった少女をベースとしている。この娘しか、人間をよく観察したことが無い故な。

 しかしそなた、妙にこの娘を気にするではないか。何かこの娘と関係でも持っておったのか? ん?

 …………イモウト? なんだその概念は? ……気にしなくていい? ええい、そんなことを言われては余計に気になるであろう! 言え! 急に無口になりおって、先程までのしつこい質問攻めはどこへ行った!?



 …………なんだここは。何やら札が貼られた縄が幾重にも…………ぬぅ!? 何をするか、貴様!

 …………イモウトを殺した罰だと? …………ふむ、よく分からぬが、そのイモウトという関係は余程重要らしいな。

 意外に冷静だと驚いたか? ふっ、我を舐めるでないわ。貴様がこの娘を真に思うのであれば、貴様が我を殺すことはできぬと読んだまで。

 やれやれ………なぜ我が説明しなくてはならんのだ。だがこのままでは命の危機だということも事実。仕方がない、答え合わせだ。



 その一、我は初めに言ったであろう? 矮小な霊体としてこの世に顕現し、獣の血肉を何年にも渡って啜り続け、ようやく声を得たのだと。そんな我が、あのような甘いだけの菓子で成長できるわけがあるまい? 我にあの娘を食らうほどの力はない。

 その二、我は娘に貯蓄していた貢ぎ物を与えたと言ったが、あの社にそんなものは無かったであろう? なぜ無くなったのか考えなかったか?

 その三、我は霊体である。それなのになぜ、変化の術を使ったときに物影から現れたと思う? それは、我が変化の術なんぞ習得しておらぬからだ。

 さて………術を解いたな。それが賢明だ。

 それでは聞こうか。ここにいる娘は、果たして我か? それとも………………



















 どうであった? 我はこれをシュウカンシに掲載するよう交渉するつもりだ!

 ………なに? 我の言葉しか書いてないから分かりづらい!? ええい、貴様なんぞに意見を求めた我が馬鹿であったわ!

………閲覧ありがとうございました()

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