「来客」※選択肢あり
舞台は日上山から玲の自宅へ━━━
「遅いなぁ、玲さん...」
望は玲の帰りが遅いことを心配し始めていた。
玲が家を出たのは、午後7時頃のことだった。
しかし、今はもう日をまたいだ午前0時になっている。
おそらく飲みに行っているのだろうが、ここまで帰りが遅いことは殆ど無かった。普段なら、遅くても2時間程で帰ってくる。
「何かあったのかな...」
そう思った時、車のエンジン音が微かに聞こえた。
「あ、帰ってきた!」
望は少し安心して玄関へと向かった。
しかし、期待に反して
ピンポーン━━━
呼び鈴が鳴る。
(あれ、玲さん鍵持っていなかったかな?)
疑問を抱きつつ、玄関の戸を開ける。
「はーい!」
玄関の戸を開けると、そこにはパッと見で180cm台位の男が立っていた。
その男は望の姿を確認すると同時に、
「あ、もしかして望さんですか?」
と急に質問を投げかけてきた。
「はい...」
望は少し戸惑いながらも答える。
それを聞いて、男は少し驚いたような表情をしたが、また顔を元に戻し、
「すみません、永島玲さんはご在宅でしょうか?」
次にそう尋ねてきた。
ただ、余りにもいきなりの会話だったため、
「あの、どちら様でしょうか?」
望が思わず聞き返す。
「あ、申し訳ございません...」
男が少し頭を下げる。そして懐から名刺入れを取り出し、中に入っていた名刺を望に差し出した。
「私は橋本真司と申します。」
その名前を聞いた直後、望はあることを思い出した。
「あ!玲さんの担当の方でしたっけ?」
それを聞いて男は少し嬉しそうに
「はい!そうです!元ですがね。」
「ここで立ち話も何ですので、中へどうぞ。」
「あ、申し訳ないです。」
そうして望は真司を家の中へ招き入れた。
橋本真司━━━彼はある出版社の編集部に勤めている。かつて玲の担当にもなっていた。たまに玲が電話している時にその名前を聞いたことがあって、それで覚えていたのだ。
「どうぞ。」
望はソファに座っている真司にお茶を出した。
「あ、わざわざどうも。」
真司は少し申し訳なさそうな顔で応えた。
「あ、そういえば明けましておめでとうございます。」
真司が膝に手をつけて頭を下げる。
「あ、明けましておめでとうございます!」
望もソファに座り、礼をする。
「いやー、あなたが望さんでしたか。」
真司が跳ねた口調で言う。
「玲さんから話だけは聞いていたのですが、この家を訪れる時もうまく時間が噛み合わなくて拝見できなかったんですよね。せめて挨拶だけはしておきたいと思っていたのですが。」
確かに、望も真司の姿を見るのは始めてだった。外見は、編集部に勤めているとは思えないような、スポーツマン的な風貌だと感じた。
「そういえば、こんな夜遅くに玲さんに何か用があったのですか?」
「ええ、結構重要なことだったので急いで飛び出して来たんですよね。」
「重要なこと?」
望が尋ねる。
「玲さんに、新たな小説のストーリーに関連のある資料を見つけて欲しいと頼まれていて、さっきそれが手に入ったので持ってきたんですが。」
実は、玲はシナリオライターの仕事の傍ら、小説家としても活動していた。その作品を真司が担当していたのだ。小説家の活動は暫く休止していたが、最近また活動を再開しようとしていた。そのことは望も聞いていた。
「なるほど...」
望は納得してうんうんと頷く。
「それで、玲さんがいつ帰宅するかは分かりますか?」
「それが...」
望は玲が飲みに行って中々帰ってこないことについて真司に話した。
「うーん、5時間ぐらいしても帰ってこないか...」
真司が顎に手を当てて少し俯く。どうやら何かを考えているようだ。
「確かに、私も玲さんがそんなに長く飲んでいたことがある記憶は無いですね...」
「そうですよね...」
「お正月だからはっちゃけてるのかな?」
真司が苦笑いする。
「というか、一つ今決定的なことを思い出したのですが。」
その真司が急に真顔になって顔を上げる。
「何ですか?」
望が真司をじっと見つめる。
「玲さんの車が無かったんですよね。」
「それがどうかしたのですか?」
「飲みに行くのに、車を使うのは危ないんじゃないかなと思って。」
「あ...」
望は当たり前のことを思い出し、ポカンと口を開けた。
確かに、普通に考えたら、お酒を飲んだ後で運転など、玲がするとは考えられない。
ということは、どうやら玲は飲みには行っていないのかもしれない。
真司はまた、考える時のポーズに戻っていた。
何だか、その推理している(?)様子は少し玲の面影を思い出させる。
「どこか玲が行きそうな場所って分からないですかね?」
「うーん...」
望は考え込む。玲が行きたそうな場所。
でも特に彼女はそういったことを言っていない。どこだろう。今までの記憶を掘り返していく。
しかし、その答えは案外記憶の浅い所にあった。
「あ、日上山...」
「日上山?」
真司は呆気に取られた顔になった。
「今日、じゃなくて昨日の初日の出の時に玲さんと丁度日上山に登っていたんですよね。」
呆気に取られていた真司が、持ち直して望の話を聞く。
「普通にそこで初日の出を見た後帰ろうとしたんですけど、私が山の奥の方に向かっていく人を見たんですよね。」
真司が頷く。
「それで私が思わず玲さんに話しかけたんですけど、どうやら玲さんには見えてなかったらしくて。」
「その時は私は何とも思っていなかったんですけど、もしかしたらそれが玲さんには凄く気になったのかもしれないと思って...」
「なるほど...確かにあの人、気になることは直ぐに調べたがる癖があるからなー。案外、有り得るかもしれないな。」
その時、真司が何か閃いたようだった。
「どうされました?」
「この家に懐中電灯はあったかな?」
「ええ、あったと思いますけど。」
「持ってきて頂けないかな?」
「はい、わかりました。」
望が席を立ち、懐中電灯を探す。
場所は知っている、この家の物は殆ど望が整理している。玲はあまりそういったことが得意ではなかったからだ。
(確か、2階の電話の下の棚の中だったはず...)
望は2階に上がり、その棚を調べる。
「あれ?」
しかし、その場所には懐中電灯は無かった。
(確かに、ここに置いたはずなんだけど…)
そんな時、下から真司の声が聞こえる。
「見つかったかな?」
「いえ、確かにここのはずなんですけど...」
「もしかして、無さそう?」
「はい...。ごめんなさい...。」
望が申し訳なさそうに言う。
しかし、真司はそんなことを全く気にしていないようで、少し誇ったような顔をしていた。
「予想通りだ...」
「え?」
「いや、懐中電灯が無いってことは玲が持っていったんだと思う。てことは、玲は何かを探しに行ったということで間違い無いはずだ。なら望さんが言った日上山が一番候補に近いはずだと思って。」
「なるほど!」
望は納得したように手を打った。
「よし、じゃあ私は日上山に向かってみることにするよ。」
「あ、私も連れていってくれませんか?」
「うーん...もう外はかなり暗いし危険だと思いますよ?」
真司は少し心配そうだった。
「いえ、私ももう子供では無いので大丈夫ですよ!」
望は自信満々に応える。
そうは言っているが、やはり夜遅くの山道はかなり危険を伴うだろう。
(どうしようかな...)
→a.望を連れていく
b.望は置いていく
最後までご覧頂きありがとうございますm(_ _)m
今回が3回目の選択肢になります。
自分だったらこうするなとか、こっちだと何か起こりそうだな、と言った感じで投票してくださると嬉しいです!
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http://twitter.com/kana_narou
今回も後書きまで読んでくださり、ありがとうございました!
※追記:選択肢はaに決まりました!投票してくださった方、ありがとうございました!