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  作者: カナリア
一ノ章
4/20

「捜索」

(今は人も少ないし、もう一度探索してみましょう。)

 玲は五合目広場をもう一度探索してみることにした。

 あの時が嘘のように、今は辺りが静まり返っている。そのお陰だろうか、周りの景色も先程より良く見える気がした。実際は月明かりと持ってきた懐中電灯の明かりしかないから視界は悪いはずだが。

 玲は、広場のベンチや、看板周りなどを探し始めた。そこまで広場は広くはないから、すぐさま何も無いと分かった。

 そうして、しばらく辺りを探していると、地面が仄かに青く光っているように見える場所があった。玲はすぐさまそこに駆け寄った。

 その地面を見てみると━━━

「これは...」


 挿絵(By みてみん)


 何かのアクセサリーだろうか。紐の輪に青い石が付いている。輪の大きさからして腕に取り付けるものらしい。

 それにしても、何とも綺麗な石だ。しかも、自ら青く発光しているようだ。こんな石は見たこともない。あの時の日の出の様にまた、玲はその石をしばらく見つめていた。

 しかし、一瞬、その石が強く光ったかと思うと、後ろから草が揺れた様な音が聞こえ、玲は我に返る。

「誰っ!?」

 玲は咄嗟に振り返る。すると、そこには和装をした二人の男女らしき姿があった。それはまさに夢で見た人物だ。その二人は玲の声には気付かなったのだろうか、そのまま林の中へ歩いていった。

「あ、待って!」

 二人との距離はそこまで遠くない。

 玲はその姿を夢中で追って、林の中へ入っていった。林の中は月明かりもほとんど届かなく、懐中電灯の光のみが玲の目となった。しかし、二人との距離はそこまで離れていなかったはずだが、二人の姿はどこにも見当たらない。しばらく林の中を歩き回ったが、どうやら完全に見失ってしまったらしい。

(残念ね...)

 もし会うことが出来たら聞こうとしてたこともあっただけに、非常に残念だった。

 しかし、今問題なのはそこではなかった。

(まずい...帰り道はどっちだったかしら…)

 夢中で走っていて、方向なんか気にしている余地もなかった。そのため、玲はどこから走ってきたか分からなくなっていた。目印や足跡もこんな暗闇じゃ、見つけるのはほぼ不可能だ。

(どうしましょう…)

 玲は急に不安に押しつぶされそうになる。元々臆病な性格だからだろう、泣きそうにもなったが、どうにか涙は押し込める。

「とにかく歩いてみるしかなさそうね…」

 玲はまた林の中を歩き始めた。動物の声がしなければ、虫の音も風の音すらもない。

 聞こえるのはただただ自分の焦りが混じった呼吸音だけだ。

 しかし、不意に一瞬だけ人が喋るような声がした。玲はそれを聞き逃さなかった。

「誰かそこにいるの!?」

 必死になって声のした方に向かう。もう体力の限界も近かった。とにかく、人がいてくれていることだけを信じてその方へ向かっていった。

 ・

 ・

 ・

 期待は裏切られた。

 そこにあったのはもう何年も使われていないのだろう、蔦が生い茂った木の掲示板らしいものだけだった。

 もうだめだ━━━玲の心は完全に折れた。

 何故、わざわざこんな夜中に山に来てしまったのだろう。何故、夢で見ただけの、誰かもわからないような人を必死で追いかけたりしたのだろう。

 後悔だけが頭を駆け巡る。もう歩く気力もない。ここで諦めて寝て、もし生きていたら、また少し歩いてみよう。もし、死んでいたら、その時はその時だ━━━

 臆病な筈の彼女からは想像もつかないような考えが浮かんでいた。

 そして玲は目をつぶった。誰か、私を見つけてくれないか、そんな叶わない願いを呟きながら。


 ***


(ガサッ)

 不意の物音に玲は目覚めた。

 広場で聞いたような草の揺れる音だった。

(まさか...)

 玲は音がした方を見る。思った通り、そこにはあの時と同じ、和装をした男女の姿があった。二人は山道の奥へと消えていく。

「待って!!」

 まだ足は錆びついた蝶番の様にぎこちなくしか動かせなかったが、何とか起き上がって、また二人の姿を追った。

 二人が消えた山道を歩いていると、今までとは違う少し舗装されている様な道になってきた。そして、視界の奥の方には、月明かりに照らされた樹があった。まるで玲にこの先に何かがあると言わんばかりに。

(もしかして、麓までの道が見えるかも...)

 玲はその木の下まで歩いていった。

 そして、そこから下の景色を覗き込んだ。

 すると、そこには集落の様な場所があった。ただ、光は無く、人の気配も感じられない、かなり寂れた集落の様だ。

「誰かいないのかしら...?」

 玲は取り敢えずそこへ向かうことにした。

 そして、集落の入り口に辿り着いた時のことだ。その入り口に看板が建てられていた。どうやら村の名前が書かれているらしい。

 玲はその看板を見た。


 ━━━《神門村》━━━


 それがここの村の名前だった。

最後までご覧頂きありがとうございますm(_ _)m

今回は、前回のアンケートから物語の続きを執筆しました。

最初、アンケートに投票が来るか正直心配の所がありましたが、投票をして下さった方がおり、こうして続きを執筆することが出来ました。投票して下さった方、本当にありがとうございました!

そして、今回で一ノ章が終了です!

ここを区切りに、また一つステップアップしていけたらいいなと思います!


後書きも最後までお読みいただきありがとうございました!是非次話もお願いします!


※2/11追記:最新話を投稿しました!

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