表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/17

‎【Event 1】 ─ はじまりの町 ─


 アシスタンス ──【assistance】。

 簡単に言えば、困っている人のお手伝い的なものである。





 ※





 さっきも説明したばかりで『しつこい!』と思われるかもしれないが。

 ……それでも黙って、こちらの話に耳を傾けてほしい。


 いや、聞いてくれ。

 言わせてくれ!

 ──言いたいんだ、俺は!

 俺はこのクレームを誰かに訴えたいッ!




 ◆




 気が付けば俺はゲームの世界にいた。

 それもさきほどまでプレイしていたはずのゲームに、だ。


 まるでこの世界が本当に実在するかのように。

 俺は中世ヨーロッパ風な街並みの真ん中で、呆然と立ち尽くしていた。

 最初はほんとにびっくりした。

 何が起こったのかも分からなかった。

 いったいなんなんだ、と思った。


 風景も急に変わったし、見る物全てがファンタジックで現実離れしている。

 夢だと思ったよ。

 最初は。

 でもすげーリアルだったんだ。

 

 現実を確かめるように、俺はまず最初に自分の両手や体をじっくりと観察した。


 ほんと、信じられない……。


 妙に現実味があって、ここが夢の世界だとか、ゲームの世界だとか言われても信じられない。

 試しに腕の肉を掴んでみる。

 普通に痛いし。


 ってかなんだよ、これ。

 ──いや、マジで?

 マジで俺……ゲームの世界に入ってしまったのか?



 ふと、俺がそんな余韻に浸っている時だった。

 街のどこかで助けを求める少女の声が聞こえてきたんだ。

 

 なんだかそれが、すごくリアルに聞こえてきたっていうか……。

 俺はその声の方へと視線を向けた。


 そして見つける。

 ここから程よく離れた道の真ん中で十四、五歳ほどの町娘風の格好をしたかわいい少女が、いかにもガラの悪い三人の男たちに絡まれていた。


「やっと捕まえたぜ、嬢ちゃん」

「もうどこにも逃がさないぜ」

「いや! 離してください!」


 細く白い華奢な腕を男に掴まれ、少女はすごく嫌がっていた。


 なぜだろう。


 俺はそこでようやく疑問に抱く。

 たしかにゲームの世界かもしれないけれど、なんか……

 周囲の反応がすごくリアルで、冷たい。

 なんだか生々しくて、まるで本当に生きている人の反応みたいで。

 「あぁまたか」と言わんばかりの目をして他人事のように通り過ぎていく。


 いや、待て。

 たしかこういうイベント、ゲームにはなかったはずだ……。


 力かなわぬその少女が、俺の目の前で男達に連れ去られていく。

 たしかにこのまま黙っていれば終わる出来事かもしれない。

 俺は周囲に目を向けた。

 まだ誰も、助けに行く気配はない。


 まぁそのせいだったからかもしれない。

 あの時俺が助けなければ、って咄嗟に思ったんだ。

 俺はぐっと拳を握り締めていった。


 ここで俺が助けるしかない。

 そうしなければ誰も助けてはくれない。

 俺が助けるしかないんだ。

 俺が──!


 だから俺は正義心を燃やして、すぐさま彼女のところへ駆け出した。


 俺は彼女のところへ駆け寄ると、男の手を掴んで少女を引き離した。

 黙ってその少女を背に庇う。

 そのことにより、男どもが俺にガンを飛ばしてくる。


「なんだ? てめぇ」

「俺たちがアナンド様の使いだってこと知っててやってんのか?」

「邪魔すれば処刑にすんぞ」


 俺はハッキリ言ってやった。


 知っててやっているんだ。


 男どもが指の関節を鳴らしながら迫ってくる。


「上等じゃねぇかコラ」


「どうやら痛い目みないと言葉が通じないらしいな」


「馬鹿か? お前馬鹿なのか? そうやってボコボコにされて逃げていった奴がどんだけいると思ってんだ? お前もその一人になりたいってか?」


 だったら俺と戦ってみればいい。

 言葉通り、俺をボコボコにできるならな。


 挑発じみた俺の言葉を受け、男どもの顔に怒気がはらむ。





【 Mission1 : 少女の救出 】




 ──え?


 突然虚空に流れてきた運営の指示。

 その指示が現れ、そして消えていく。


 なるほど……。

 そういうことだったのか!

 いいぜ!

 受けてやろうじゃねぇか、このミッション!


 俺の中に不思議な力がみなぎってくる。

 湧き上がるように強く、今にも体という殻をぶち抜いて暴れまわりそうなくらいの最強の力が。


 俺はニヤリと笑う。


 これが最強の力ってやつか。

 おもしれぇ! 存分に使わせてもらうぜ!


 俺は使い慣れたかのような感覚で片足を使って地面に魔法陣を描くと、そこに片足を置き【召喚の呪文】を唱える。




 ――数十秒後。

 街中に三人の男どもの悲鳴が響き渡った。


「ど、どど、ドラゴンだぁぁぁッ!」


 男どもが悲鳴を上げて腰を抜かし、恐怖に顔を引きつらせたまま街のどこかへ逃げていく。

 それと同時に、周りにいた街の人達までもが同じような面相で全員その場から逃げ出した。


 ふふん。

 俺は自慢げに鼻をならす。


 それもそうだろう。 

 俺がやったのは超難易度の召喚獣の発動。

 元々魔王戦で召喚に使われるものだ。

 このゲームで最も恐れられている最強の狼ドラゴン──【フェンリル】。

 別名、【誰も倒すことのできない聖獣】とも呼ばれている。

 こんな最強魔法も、今の俺のレベルじゃ使いたい放題だ。


 さすがに原型のままだと大きすぎるので、子犬サイズ程度に力を調整して召喚した。

 案の定、この世界の奴らは全員逃げ出してしまった。


 最強の力が使えるって、やっぱ最高だな!


 誰も居なくなった街で、俺は清々しく伸びをする。

 気持ちの良い晴天だった。

 ふと、俺の足元に居たフェンリルが『指示はまだか?』と前足で催促してくる。


 あ。悪い、もう終わったからいいや。


 俺は召喚したフェンリルに手を振って礼を言った。

 するとフェンリルは、つまんなそうに項垂れて姿を消していった。



「あ、あの!」



 背に庇っていた少女が、俺の服をちょっとだけ掴んで言ってくる。

 俺は気付いて少女へと振り向く。


 ん? なに?


「さきほどは助けてくださりありがとうございました。私、この街に来たのは初めてで、どうしていいかわからなくて……」


 どうやら彼女はおのぼりさんだったようだ。

 ほんと、助けてあげてよかった。

 俺は告げる。


 この街は治安が悪い。

 もしこの街のどこかに知り合いがいるのなら、早めに見つけた方が──


 言葉途中で、彼女が離れたくないとばかりに俺の背にすがりついてきた。

 今にも泣きそうな弱々しい声が背中から聞こえてくる。


「突然こんなことを言うと驚かれるかもしれませんが、私をあなたの旅先に同行させてください!」


 え?


「もちろんどんな場所にもついて行きます! 私、絶対あなたの邪魔にならないようにしますから!」


 え、いや、でも……


「お願いします! 私を連れて行ってください!」


 どうしよう。

 助けたはいいが、正直そういう答えが返ってくるとは思わなかった。

 俺は元々この世界の人間じゃないし、もし何かが起こって俺がログアウトしてしまったら彼女は一人になる。

 どこか近くで安全な街はなかっただろうか。


 ……。


 俺は無言で考え込んだ。

 頭の中にプレイしていた時に記憶していたこのゲームの世界地図と内容を思い浮かべる。


 あ。


 そういや、ここからしばらく西へ行くと【ポルナレタン】という大きな街があったな。

 そこならたしか安全だったし、ギルドもあった気がする。

 そこに連れて行くか。


「あの!」


 彼女が俺の服を掴んで不安そうな顔で言ってくる。


「もしかして私を置いてどこかへ行こうと考えていませんか?」


 俺は目を点にした。


 ……は?


「もしかして私よりも先に魔王を倒そうとか考えていませんか?」


 俺は首を横に振った。


 い、いえ。全くそんなこと考えていませんけど……。


「もし良かったら、私と一緒に魔王退治に行きませんか? こんなか弱い女ですが、私──

 私、実は勇者なんです!」



 それは俺にとって衝撃的な告白だった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ