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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編 日記

作者: NEI

短編小説:日記


母は憎かった。

父も憎もうとすれば意図も簡単に恨める存在だった。

何はともあれ、彼らは私には憎い存在でしかないのである。

前書きとしてはここまでにしておこう。

今日は私、篠乃 (しののあお)は日記を(つづ)ろう。

誕生日にしては憂鬱なことばかりな日記を。

サイゴの日記を。


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>


学校で私は無口な存在だった。

いや、気づけば私がなにも話さなくなっていたのだ。

話したくなかった。それもあるだろうか。

中学2年になったばかりのとき、

私は12才になったばかりでもあった。

それもあってか周りより幾分か劣る自分がいたのである。

いじめだ。

小学校の頃からいじめられっ子体質で

あまり苦手な子には積極性を持たなかった私は、

その積極性がなかったが故、余計いじめられた。

なにも言わなかったからいじめがレベルアップしたのだ。


「キモいね」「死ね」「デブ」「ブス」

こんなのは陰口で言われていたとよく耳にした。

言われてるのも嫌われてるのも気づけねぇのかバカ。

そんな感じに私に伝わってくるのだ。

ある人ある人にすれ違うだけで言われもしたし、

足を引っかけられたりもした。

本当に低脳なものばかりだとは思う。

だが、当時の私には辛くて

気にするなという言葉は無意味で無責任な慰めでもあった。


中学2年になって、ようやくのことだ。

逃げる道を見つけたんだ。

話しても誰も聞いてくれないし、

何か意見を聞く割にはそれを否定される。

ならば周りにすべてを合わせて、

なにも話さず最低限度の反応のみにしようと。

話せる相手はいたのだが、

きっと私はおかしなやつだ、

意味不明なやつだ、としかみられてないのだから。

そうして、私の無口な中学生ライフは高校生になるまで続いた。


しかし、嫌いな相手でも助けはした。

そういったことが嫌いな保護者はしないほうがいいと言われたが。

ものを貸してと言われた相手には貸したし、

できうる限り相手にすかれようと無意識にしてたのだろうか。

優しすぎた。


余計に余計を重ねて、

私は更にいじめられた。


ワタシは逃げる道に更なる細い裏道を見つけた。


暗くて、


冷たくて、


痛くて、


辛くて、


孤独さが見え透いた道だった。


必要な持ち物は刃物と、辛さだけだ。


ーーーーで き る よ な ?



私には唯一の楽しみがあった。

もちろんネットの世界だ。

私のようにいじめられてたり、もっとひどい仕打ちにあったひともいる。

そこならなんでも話せた。

だがリアルの自分を隠す能力は当時の私にはなかった。

それでもその世界は、私を受け入れてくれたのだ。

そう嬉しくてたまらなかった。

そして、私は好きな人ができた。

もちろんネットで知り合ったのだ。

だが、会えるわけでもない。

ネットで会ったときには互いに嬉しくてたまらなかった。


私には両親がいない。

それ故、愛情が足りないのでは?と私は保護者に言われた。


愛情に飢えた疑惑の闇が、私には潜んでいた。

「好き。あなたのことが好き。」

「俺も。」

この言葉で私には物足りなかった。

あるとき、

「ねぇねぇ?私のことどう思ってる?」

「可愛いよ?」

「そうじゃなくて……まぁいいや。でも可愛くないよ?」

と正直に照れるのだが、

相手にしたら訳がわからない。

そう。

私は彼に「好きだよ」と言って貰いたくて堪らなかったのだ。

言ってもらえない。

ただそれだけで、

私は彼に本当に愛されていないと思ってしまったのだ。


「ねぇ。好きだよ」

「俺も。」


足りない。


「好き。」

「俺も。好きだよ」


足りない。


「好きって言って」

「好き」


足りない。


なんでこんなにも足りないの?

なんで?

なんで???


ーーーーお前は愛されてない。


「……」

「どうした?」

「なんでもないよ」



ーーーーそもそも、居たって誰に相手にされる?

ーーーー偽りの好きがもらえるだけだ。嬉しいか?



「ねぇ、会おうよ」

「え?めっちゃ遠いやん?来れるの?」

「大丈夫。しばらく家族いないから」

「うーん。ならいいけど。」

「じゃあ2日くらいしたら行くね」



家のものを確認しつつ、

身支度をした。

そう言えば、

彼の家って鍛冶屋だっけ?

ちょうどうちの包丁がしばらくないから

お土産に包丁でももらって帰ろう。

きっとビックリするだろうなぁ。



ーーーー自分だけの愛がほしいなら、直接伝えるんだ。

ーーーーや れ る だ ろ ?



どこかでワタシが笑った気がした。



>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>


私にはもうワタシ自身しかないから、

なんの力も気力もありませんから、

これをここにおいていきます。


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>


目の前がぐわんぐわんと揺れている。

手で首を触れると、ざらつきのある太い縄がある。

口から何かを吐いた。

滲んでいく視界が360度変わると、

なにか深紅色のものが

ワイシャツの白い布地のようなものと塊となっていた。



愛情という錠剤について。

名前:愛情

成分:愛の取り方は本社特有のものであり、企業秘密とします。

憎悪(愛と同じく企業秘密とします。)

効能:心身を安らぎを与え、落ち着いた気持ちになれます。

どの生物においても必要な成分を取ることができます。

使用方法:乳幼児の頃から与え続けましょう。

成長途中から与えると副作用がある場合があります。

軽く解説です。


主人公の私は愛情が足りません。

しかし、ネットで出会った彼が「愛情」を与えてくれる。


そういう話で終わるつもりでしたが、

愛情の裏は憎悪。

その話を思いだし、話を変えていきました。


「彼」という愛情が副作用を起こし、

私は「ワタシ」という憎悪が生まれてしまい、

足りない愛情をくれない「彼」が憎くなってしまいます。

愛してはいるのです。

でも、

もっと愛情表現をしてよ!という気持ちも伝えるに伝えきれず。

そこに過去の積極性のなさも伺える。

過去の日常が、彼女が摂取した愛情に副作用を与えたという

ちょっともやもやした話、ということです。


説明は苦手なのでここまでにしますが、

読んでくださったお方へ

お礼を申し上げます。

よければコメントなどお待ちしております。

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