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前編

※諸事情で、一部名前の変更等修正があります。

 !


 “私はその光景を見た瞬間、頭のテッペンから、雷に打たれたかのような、衝撃を受けた。”


 そんなナレーションを頭の中で発動させた彼女は今、お城内の裏庭で、目の前の光景に立ち竦んでいる。

 では、目の前の光景とは?

 何の事はない。

 木の上から人が落ちてきて、それを同じような体型の少年がキャッチするのに失敗。

 二人の少年が、地面に横たわっている?状態であった。


「ってえ・・・」


 木から体勢を崩して落下してきた少年が、顔半分に手を当てて、ゆっくりと体を起こし始める。


「大丈夫ですか? どこかお怪我は?」


 下でクッションの役割を果たしている少年が、見上げる形で、上にいる少年を気遣う。

 言葉からしてかなり慌てているであろうに、表情に全く変化がないのは素晴らしい。

 そんなたわいない、怪我さえしてなきゃ、どうって事ない光景。

 しかし、彼女はその光景に釘付け状態であった。


 落ちてきたのは、サラサラキューティクル満載の日の光を浴びて更にキラキラと輝いている金髪に、大きくて澄んだ緑の眼、陶器のような白くて綺麗な肌が印象的の、いわゆる美少年。


 下敷きになった不幸な? 少年は、これまたしっとりと濡れたような某CMキャラに抜擢されそうな黒髪に、切れ長の大きめな潤んだ黒い瞳、こちらも少し浅黒いが先ほどの少年に負けていないようなツルツル卵肌の、これまた美少年。


 そんな二人が、顔を照らし合わせて、お互いの無事の有無をチェックしている。

 そして気がついた。

 少し離れた位置から、自分たちを凝視して固まっている少女に・・・。


 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 そんな衝撃的な? 出来事から、更に5年が経過した。

 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 この世界は5大陸からなる。

 東は龍人族の治める国“カライナ帝国”

 南は妖精族の治める国“ファーレン国”

 西は獣人族の治める国“ギミック共和国”

 北は魔人族の治める国“アローン大国”。

 この四つの大陸に見た目は四面楚歌? 状態で、中央にそびえ立つ一番大きな大陸が、人間の国“フェンデリック王国”である。

 普通のファンタジーと違い、お互いに大昔に結んだ協定がうまくいっていて、大陸同士での争いはない。

 国内のいざこざは、まあどの世界も一緒、つまり、少し平和ボケが始まっている世界である。


 ここまで聞いて理解できるだろう。

 ここは、剣と魔法が飛び交うファンタジーの異世界であるという事を。


「今日も散々だった・・・」


 陽の光がサンサンと当たる2階のテラスには、3名がお茶という名の座談会を催している。

 ここは人間の国“フェンデリック王国”の、中央に堂々と存在感を醸し出しているお城の南側。

 金髪緑目で端正な顔立ちの長身の男性は、テーブルの上で突っ伏してそうつぶやいた。

 見た感じ、魂が抜けそうな勢いだ。

 その証拠に、ここまでは引きずられる形で到着している。


「今日はまた、一段とイラついていた様子だったな、第一王子」


 引きずってきた=黒髪黒目のこれまた整った顔立ちをした、突っ伏している金髪よりは少しがっしりした体格の長身男性が、いつものことだと無表情にティーカップに手をつける。


「あの脳筋王子に、毎回負けたままでどうするの? このヘタレ! 根性無し! 女顔!」


 涼しい顔をして、優雅な所作で紅茶を飲んでいる、モデル体型の美人。

 ストレートで腰まである、陽の光で透けて見えそうな銀髪に、見た目は優しげな瞳を讃えた、大きな青い瞳をしている。

 美しい彫刻の像であるかのように整った顔立ちをしているので、言葉が余計に辛辣に聞こえた。


「暑苦しくて、脳筋バカで、血の気が多い脳筋ヤローにいつまでも勝てないようでは、いつまで経っても今のままよ? いいの? それともそのまま男の娘にでもなるおつもり?」


 言うなり、金髪の目の前に、ドン! と音を立てて回復薬の入った瓶を置く。

 

「一応、その“脳筋ヤロー”は、君の婚約者だが? そのような暴言、謹んでもらいたいな」


 黒髪のイケメンが、銀髪美人に顔を傾け、表情を崩す。

 苦笑した姿は、いつものポーカーフェイスに比べると、イケメン度3割増だ!

 笑顔なんてどれほどのものか、考えるだけでごちそうさまです。


「いつも済まないね、申し訳なく思っているよ」


 頭だけ起こし、金髪イケメンは目の前に置かれた回復薬を、渋い顔して必死に飲みながら答えた。


「あ~、そういえば私、脳筋の婚約者でしたわね。すっかり記憶の彼方でしたわ」


 大きなため息をつきながら、とてもつまらなさそうに膝をつき、明後日の彼方を見つめている。

 どんな仕草をとっても、真相の令嬢の如く、優雅でなんとも麗しいのだが・・・。

 そんな羊水から出たばかりから棺桶寸前までの国内男性人気NO.1美女は4年前、4年に一度の“世界一武道会”などという、テンプレ的なイベントの勝者に対する恩賞として、“フェンデリック王国”第一王子の、婚約者となった。

 つまり、我が国、“フェンデリック王国”第一王子様は、只今絶賛“世界一最強”な男なのである。


「全く、兄弟で軟弱者とあっては、この国の行く末が心配ですわ」


 不満度MAX顔で、忙しく手持ちの扇を動かす。

 下を見れば、貧乏揺すりまでする始末。


「父上から、また結婚の催促があったからだろう? にしても、なんで勝てないんだ? やっぱりアレか? 同じ兄弟なのにどうして俺には筋肉が・・・」


 と、自分の左上腕二頭筋の確認に入る。


「見た目が白馬の王子様full装備の貴方に、あのモッコリ満載筋肉はまずいでしょう! ビジュアル的に全国民女子に謝りなさい!」


 とうとう椅子から立ち上がり、激しく動かしていた扇を畳んで、左隣の白馬の王子様に突き出す始末。

 そう。

 我が国の第二王子様は、180cmの長身に容姿端麗・文武両道の文句つけ所なしの、それこそ正真正銘の“王子様”で、よちよち歩きから寝たきりの国民女性人気NO.1である。


「結構いい筋肉が付いていると思うけど? どっちかっていうと筋肉より、まだ技量が追いついていないと思うぞ?」


 黒髪男子が、そういって金髪男子確認中の左上腕二頭筋を手に取った時、


「お姉様、聞いて下さい!」


 怒り心頭な声で、鎧装備の赤髪ポニーテールの少女がズカズカと、音を立てながらテラスに入ってくる。

 が?


「・・・・・」


 何故か、彼女は固まっている。


「あらどうしたの?」


 そんなことは全く関係ないかのように、姉は妹を見る。

 そして、手の甲のかすり傷を見るなり、表情を変えた。


「もしかして・・・怪我? 痛むの? 他は大丈夫なの?」


 姉は顔色を変え、妹に近寄って傷の具合をチェックする。


「あ・・・ああ、お姉様。いえ、この位なんともありません」


 ハッと我に返り、赤髪の少女が慌てて返事をする。

 姉よりも小柄であり、大きくて青く澄んだ瞳に強い意志を宿したキリっとした猫目をしているが、全体的に言えば可愛らしい少女。

 白銀に輝くミスリル銀の鎧に身を包んで、左にはさっき落としそうになったセットの兜を脇に抱え直している。


「あら、ならどうしたのかしら?」


 姉は困ったように頬に手を当て、妹を見つめている。


「第一王子様が、全然本気になってくれないんです!」


 思い出したかのように、顔を真っ赤にして憤慨している。

 そのせいか、それとも訓練後でなのか、生まれたての赤子のように柔らかくてスベスベの白い肌がピンクに染められ、小さく可憐な淡い桜色の唇と相成って、可愛さ倍増である。

 見ると、全身汗びっしょりであった。


「えっと、その格好暑くない? というか疲れない? まずは落ち着く為にも、湯浴みでもしてきたらどうかしら?」


 そう言いながら、近くに控えていたメイドに、タオルを持参するよう急いで支持している。


「そういえば、余りにも頭にきすぎて、訓練後すぐにここへ向かったんでした」


 そう言うと、赤髪の少女は兜を置き、鎧を外す。


「え? ここで? 何で?」


 言うと同時に慌てて立ち上がる。

 と、同時にガタン! と椅子が倒れた。


「え? 暑いし重いからですよ? 第二王子」


 とても慌てふためいている金髪イケメンとは対照的に、それが何か? とでも言わんばかりの表情である。


「え、いや・・・・」


 彼の視線は、明後日の方向に向き始めた。

 鎧を脱ぐと、とてもスレンダーであることが確認できる。

 ある一点を除いては・・・。


「相変わらず、無駄にデカいわね」


 姉はそう言って、大きいが形の整った二つのとても柔らかくて触り心地がよさそうな膨らみに、手を当てている。

 プルンッと可愛い音のしそうな、弾力性も抜群であると思われるソレに。


「そうなんですよ姉上様。これ剣術の訓練時は邪魔で仕方ないんですよね? 鎧着けて押さえてないと、本当に不自由で困るんです!」


 姉の言葉に対し、納得している妹。

 妹の言葉に対し、複雑な笑みを浮かべる姉。


「何言っている! そこは、夢と希望と平和が沢山詰まっている大事な場所だろう!」


 こちらに向き直った金髪イケメンが、拳を作ってテーブルを叩き、力説している。


「何をおっしゃることやら・・・。そんなの只の脂肪の塊でしかないだろう?」


 対して、黒髪イケメン)は涼しい顔で、興味なさそうにおかわりした紅茶をすすっている。


「わかってないな、これは男のロマンなんだよ、同じ男として、なんで理解できないかが悲しいよ」


 さも当たり前のように、金髪の残念イケメンは、倒れた椅子を直しながら、クールな黒髪に心底呆れたような表情を向ける。


「なんですかソレ? じゃあ、胸のない女には絶望しかないと?」


 そんなやり取りの中、振り返った銀髪美人は、顔に般若の面を貼り付けている様子。

 扇で隠していない目から、何やら光線でも出しそうな勢いだ!

 ホホホ、と怪しい笑みを浮かべている。

 しかも青筋立ってます!

 それもその筈。

 姉の胸は、寄せて上げてを苦慮した結果の賜物なのだから。


「君はどこをとっても十二分に美しい。だから、そんな他愛ない事を気にする必要はないのではないか?」


 さも当たり前のように、黒髪イケメンは、彼女にそう意見した。


「え? そんな・・・」


 銀髪貧乳美人の機嫌が直りそうなその時、


「そうだ、何も気にすることはない! 君はとてもいい美乳(=微乳)だ!」


 と、歯にもの着せぬ物言いで、豪快にガタイの厳つい大柄な男性がやって来た。

 顔を見ると、とても満足気である。

 きっと、

 “俺ってナイスフォロー!”

 とか、いかにもな自己満に浸っているに違いない。


「チッ!」


 その姿を見て、銀髪美人は思いっきり扇で顔を隠し、なおかつ反対方向に逸らして、大きな舌打ちをする。


「それに、胸なら俺だって、リリーナ嬢ちゃんには負けないぜ?」


 気を良くしているのか、そのまま豪快に上着を脱ぎ捨て、


「フン!」


 と、前で腕を交差し、胸に力を入れる。

 全体的に筋肉で盛り上がっているが、力を集中した大胸筋がさらに盛り上がって、ピクピク動いている。

 そして誇らしげに、そこにいる連中に角度を変え、ポーズを変えて自慢しだした。


「御婦人方のいらっしゃる前で、このような振る舞いは問題かと思いますが・・・」


 呆気にとられている連中を他所に、冷静な声が聞こえる。

 そこには、これまた黒髪に銀縁眼鏡のいかにも利発そうな、痩身で黒い燕尾服に身を包んだ青年が、なに食わぬ顔で脱ぎ捨てた服をさっさと拾って綺麗にたたんでいる姿があった。


「そうよ! 相変わらず何を考えているのかしら? この唐変木!」


 というのが終わるか否か、


「「ギャ!」」


 2人の男性めがけて、空から稲妻が落ちてきた。

 体から、黒い煙が上がっている。


 イケメンの方は、椅子に体をあずけた状態で、だらんとした状態=気絶している様子である。

 マッチョの方は、一瞬白目をむいたが、すぐに回復した。


「何をする、我が婚約者よ。それに何故に、我が弟にまで・・・」


 精悍で勇ましい顔立ちをした、オールバック気味の金髪と緑目だけは弟とそっくりのマッチョは、意外だと言わんばかりの顔を婚約者に向けた。


「兄弟だから同罪よ! それにそんな汚らわしいモノ! 私の可愛い妹に見せないでもらえるかしら?」


 未だ青筋が立ったままで、しかもヒクヒクと顔の筋肉が痙攣状態の婚約者。

 対して、


「え? そうなのですか? お姉様? 訓練場では、脱ぐ人多いから別段気になりませんが・・・・」


 逆に何を怒っているのか、理解できていない様子の婚約者の妹。


「そんな・・・、なんて可哀想な・・・・」


 婚約者は、そう言うなり手に持っていた扇を殴り捨て、青い瞳に涙を溜め始めると、目の前にいる小柄な赤毛少女を抱きしめる。


「お姉様、汗が付きますよ? せっかくのお召し物が汚れてしまいますが・・・」


 困惑する婚約者の妹。


「やあねえ、貴女のなんて全く1ミクロン単位とも、汚れとは言わないわ!」


 愛おしそうに赤毛を撫でながら、銀髪美女が優しく答える。

 美しい姉妹愛? が展開されている中、


「さあ、早く着て下さい。そして、今すぐ私とご同行願えますか?」


 黒髪眼鏡が表情を変えることなく、持っている服を着るよう、主に促す。


「ああ、すまない」


 気を持ち直した筋肉マッチョはそれを受け取り、着始める。

 と当時に、黒髪眼鏡は、


「それでは失礼致します」


 と、テラスにいる全員に深々と規則正しく一礼して、クルッと踵を返したかと思うと、スタスタと元来た道を歩み始めた。


「お~い、待ってくれ~!」


 それを見たマッチョは、ぎょっとした表情を浮かべ、慌てて後を追う。


「フン! むしろまな板が好きなくせに!」


 その後ろ姿を思いっきり睨みつけながら、婚約者は聞こえないような声で言い捨てる。

 そんな何やら殺伐とした中、何か思いついたかのように、赤毛の少女は銀髪美人の包容を優しく解き、ぐったりしている残念イケメンのもとに歩みだした。


「まあ、そのまま放置していればいいのに・・・」


 対して、銀髪美人は全く興味なさそうであったが・・・。


「第二王子、大丈夫ですか?」


 かのもとに着くと、赤髪少女は、自分の持っていた回復薬を彼の口に含ませる。

 ゴックンと嚥下する音が鳴り、身震いしたかと思うと、第二王子は復活した。


「ありがとう、リリーナ。やっぱり君は、優しいなあ」


 お礼に頭をナデナデする、第二王子。

 赤毛の少女=リリーナは恥ずかしそうに顔赤らめながら首をすぼめている。


「そうだな、リリーナはとても良い子だ」


 反対側から、黒髪鉄面皮イケメンが優しく頭を撫でてきた。


「そりゃそうよ! 私の自慢の可愛い妹ですもの!」


 体をクネクネさせて、とても嬉しそうに銀髪美女はそう呟いた。

 周りには、ハートがこれでもかというくらいに飛んでいる。


「あ・・・」


 両サイドから、頭を撫でられていた少女は、何かを思い出したかのように、その場から急いで離れる。


「「?」」


「私・・・その、汗臭いから!」


 可愛い赤毛の少女はそう言うなり、全力ダッシュで去っていった。

 途中で、チューリップ柄についた紙袋を姉に押し付けて・・・。


「まあ!」


 袋を開けると、甘くいい匂いが漂う。

 中には、いろんな形のクッキーが入っていた。

 星型のを取り出し、サクッと軽やかな音を立てて、口に入れる。


「相変わらず美味しい!」


 美女から、幸せそうな笑みがこぼれる。 


「何! それは、リリーナの作った・・・・」


 復活した金髪は慌てて立ち上がり、急いで銀髪美人に近づいていく・・・。

 が!


 ドド~ン!


 雷鳴が鳴り響いたかと思うと、その場にヘナヘナと倒れ込んだ。

 やはり、体から煙が出ている。

 その状態を見て、満足気な笑みを浮かべた後、


「別室でお茶し直さない? 話もあるし・・・」


 まるで何事もなかったかのように、黒髪イケメンの左腕に自分の手を絡めると、この場を離れるよう促す。


「お前、本当に残念だよなあ・・・・・・」


 ピクピク痙攣している親友を、思いっきり憐れむ目で見ると、深いため息をついて、美女と一緒に去っていった。


 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


「と、いうことがあったのよ」


 赤毛の少女は、目の前でゴーグルをして火花を散らしながらハンダ付けしているお団子頭の茶髪少女に、先程の出来事を話していた。

 湯浴みを終われせてすぐに来たので、ポニーテールはしておらず、髪を只下ろした状態だ。

 しかし、まだ濡れているせいもあって、艶やかに輝く赤毛は、ゆっくりと沈んでいく美しい夕焼けを思わせる。

 騎士とは思えない、全く筋肉なんて見当たらない細い体をソファーに沈ませ、クッションを抱きしめている姿は、実年齢よりも幼く見えた。


 ここは、城内の北外れにある、大きな研究施設。

 魔導士と呼ばれる者達が、いろんな研究・開発をする為の場所である。

 2人がいる1室は、その中でも比較的大きくて、頑丈な作りになってた。

 なにせここは、お団子頭の個室なのだから、なんの気兼ねもなくいろいろな話のできる数少ない場所である。


「なんって、ごちそうさまな話・・・」


 カタン・・・と、ハンダが床に落ちる。

 明らかに興奮気味のお団子頭は、振り返れば鼻息荒く、肩で息をし目つきは怪しく、両手をワキワキさせていた。


「だ・・・大丈夫? テトラ・・・」


 若干引き気味の赤毛美少女。

 どこで興奮するんだ? と相変わらずイマイチポイントが掴めない。

 テトラと呼ばれたお団子頭は、興奮に震える全身を抱きしめ、変な声を上げながら机まで移動し、


「こ・・これに、事の詳細を書いておいてくれたまへ!」


 すぐ様、一冊のノートを渡される。


「ああ、こうやってまた、素敵な作品ができて行くのだな!」


 興奮冷めやらない様子。

 しまいには、協会のある方向に両手を握り締めて祈りを掲げ始めた。

 対して、赤毛美少女は、黙々とノートに字を書いている。


「こうしている場合ではない! 早速、相手方に連絡をつけねば!」


 ハッと我に帰ったかと思うと、通信用の水晶を取り出した。

 しばらくすると、そこには緩やかなウェーブの緑の長い髪をした妖艶な色白の女性が、映し出される。

 目は緑色だが、瞳孔は黒くて細い縦長になっているのが、特徴的であった。


『又、新作依頼かい?』


 相手は、目を輝かせている。


『そうなのだ! しかも! そちらでも大人気のあの二人の!』


『え、ええ~!』


 大・興・奮!

 緑の髪の美女は、歓喜に観悶えている。

 その証拠に、肌一面には硬そうな鱗が、びっしりと姿を現した。

 そう。

 瞳孔は黒くて細い縦長で、肌一面にウロコが出るのは、竜人族の特徴=東の国“カライナ帝国”の住人の特徴だ。

 もちろん、お団子頭も負けないくらいのテンションだ!


 このお団子頭。

 名を、テトラ=バレーノと言い、赤毛の美少女(リリーナ=コールドウェル)とは、共に5歳で学校に通った飛び級仲間である。

 お互いに魔力が高いのと、勉強熱心で知識が豊富なのとで、今年で15歳なのにも関わらず、二人は学校を卒業し、騎士と魔導師に分かれたのである。

 テトラの父親は、この国きっての天才魔道士であり魔導部隊の総指揮官兼責任者、リリーナの父は、賢者と謳われるこの国の宰相であり、政の補佐役を一切担う国王の信頼厚い最高責任者。

 この二人と、この国の大将軍兼騎士団責任者である黒髪イケメンの父に、豪快な剣捌きで他を圧倒する力を持つ国王と合わせて“フェンデリックカルテット”と謳われ、世界中に名を馳せている。

 因みに、魔導士であるテトラの直属の上司は、自分の父であり、騎士であるリリーナの直属の上司は、王家専属騎士隊長の黒髪イケメンであった。


 一通り事の詳細を書き終えて、リリーナは目の前の本棚に目を向ける。

 目を向けた区間だけは、鍵付きのガラス張りで、中の本も新・旧ジャンル別とにきれいに整理されていて、とても厳重に保管されていた。


「また増えてるなあ・・・」


 書き終えたノートを左横に置いて、リリーナは本棚から、1冊の薄い冊子を取り出す。

 そこに描かれているのは、男性ばかり。

 しかし、内容はどれも素敵な純愛もので、心のトキメキが止まらない!

 世の中にこんな素敵な恋愛がいろんなパターンで描かれるのかと、興味を持ったのは忘れもしない7歳の春。


『私たちだけの秘密だ!』


 そういって、テトラは、1冊の薄い冊子を手渡してくれた。

 内容が普通の恋愛ものと少しタイプが違うので、あまり他人に見せてはダメと言われた。

 たとえ家族にも・・・。

 うん、確かに・・・。

 その時は、内容的には理解できず、はっきり言って“絵が綺麗だな~”としか思っていなかったのだが・・・。

 めくるめく甘美な世界に、今現在のリリーナは、すっかり虜となってしまった。

 原因は、10歳の時に見た、衝撃のシーン=初恋は実らないと思い知ったあの時に・・・・・・。


「私も男に生まれれば、こんな素敵な恋愛ができたのかなあ・・・」


 もう諦めたはずなのに、ふとそんな言葉が口から漏れる。

 でも・・・。


「応援するって決めたじゃない!」


 フンッ!と、自分に喝を入れて意気込むリリーナ。

 そして、まだ読んでいない新刊に1冊、また1冊と手を差し伸べるのであった。


 対して、お団子頭は同じ趣味を持つ相手と話に花が咲いている。

 彼女がこのジャンルに目覚めたのは、5歳の春。

 魔導具開発の為の材料調達関連にて、東の国と友好な付き合いのある父に付いていき、その未知なる国に足を踏み入れたのが運命の第一歩であった。

 東の国では、とても良質の金属がたくさん採掘されるので、有名だからだ。

 ちなみに南はレベルの高い薬品類、西は栄養満点の豊富な作物、北は温泉と娯楽が有名である。

 そしてここ、中央は奇天烈で珍しい魔導具の、大量生産地である。

 そして各大陸には、まだまだ特徴的な文化が存在する。

 その中の一つである東の国では、古くから“衆道”なるものがあり、国民も気にしない。

 むしろ、そういったのを好んで書物にするのも全く躊躇がない、オープンな国であった。

 同性婚も国で、認められていて、普通に婚姻が可能である。

 それゆえ、ふと立ち止まった書店にて見つけたとある1冊の本に、瞬く間に心奪われたという。

 綺麗な挿絵のついた・・・そう! 美少年達の甘く切なくロマンチックなこの内容に・・・。

 そして知りたいと思った。

 もっともっと、体の芯が痺れるような素敵なロマンを!

 その欲望は、終わりを告げることなく、新しいネタを手に入れては、仲の良い同じ趣味仲間に売って書かせている。

 そして、人知れず独自ルートで入手するのだ。

 魔導具に使用する材料の中に、密かに忍ばせて・・・。


 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


「はあ~」


 執務室では、今日も盛大なため息が聞かれる。

 毎日のことだ、いまさら気にしないと思いつつも、こう何度もだとはっきり言って鬱陶しい。

 そして仕事がいつにも増して、一向に進まないでいた。


「どうされたのですか? 仕事が全くはかどっておりませんが」


 怒っては元の木阿弥だと、笑顔で優しく問いかける。


「・・・」


 本日99回目のため息に我慢できず、とうとう質問してしまった。

 内容は分かっているのに!

 なんで無視を通せなかったんだ俺!

 と、内心反省モードに入りつつ、表情はいつもと同じで崩さない。

 銀髪ストレートで青い目の聡明な趣の男性が、机の上に山積みになっている書類をポンポンと優しく叩く。


「ああ、お前代わりにやっとけよ~、だりいよ~。なんでだよ? ワシばっかり? 少しは遊びてえよ~」


 目の前の金髪緑目の野性味あふれる中年男性は、机に顔をうずめ、呪文を唱えるかの如く、“だりい~”・“ワシばっかり~”・“暴れたい”を呟き始めた。

 いつものことである。

 この、屈強な体つきをした巨人(見た目は大人、中身はガキ大将)のコレは、今日に限ってのことではない。


「畏まりました、国王」


 銀髪のジェントルメンという名の紳士は、静かに、そして恭しく答えると、ちらりと自分の懐中時計に視線を下ろし、


「では、休憩の時間に致しましょう」


 と言ったかと思うと、パンパンと手を叩く。

 同時に、目の前の扉が開いた。

 が!

 蓋を開ける音と共に、何とも言えない匂いが部屋の中に漂い始める。


「!」


 あまりの匂いに、脂汗を流し始めた国王が、顔を上げた。

 目の前には、銀のトレーに、白い大皿が二枚。

 その上には、右側=炭と化した異様な形の物体と、左側=何やら変な泡を出して、グツグツと音を立てている青紫の物体Xがあった。

 明らかにそこから、異様な鼻をつく匂いがしている。

 メイド達は早々に挨拶をすると、部屋から去っていった。


 「さあ、右の皿と左の皿、どちらからお召し上がりになりますか?」


 黒い笑顔を張り付かせ、鼻をハンカチで押さえた銀髪イケメンは、目の前の屈強男に決断を迫る。


 「2つあるなら、どちらかは貴様が食べるのではないのか?」


 顔を背けながら、国王はどちらか押し付ける気満々である。

 しかし。


「恐れながら・・・」


 答えは、国王の思惑通りにはいかなかった。

 

「私めは、本日は可愛い娘達がわざわざ朝早起きして、手作りしてくれた、コレを頂きます」


 と、可愛くラッピングした3個入りチョコチップマフィンを、自慢げに胸元から取り出す。

 そして、お茶の用意をするため、早々に部屋から出ていこうとする始末。


「は? ふざけるな! 何を・・・」


 国王は、急いで男性の服の端を掴む。

 と、その時!


「あら~、こんなところに私たちの新作が!」


 そして、空いたままのドアから、2人の美女がやってきた。

 1人は、たわわに実った胸元に大きな赤い宝石のネックレスが良く映えるような黒一色の、体のラインに沿った服を着た、輝くばかりの金髪を縦カールにした、緑の瞳のゴージャス美女。

 もう1人は、質素なメイド服を着た、赤毛でストレートボブに意志の強そうなきつい感じの青い目をした、飾り気のない凛とした空気を漂わせる清楚な美女である。


「きっと、国王様自ら私達の本日の傑作品を、軽食用に取っておいでだったのでしょう」


 恭しくお辞儀をし、隣の金髪美女に、メイドは答える。


「我が妻の言う通りにございます、王妃様」


 服の裾を掴まれたままの男も、ゴージャス美女に深々とお辞儀をし、挨拶をする。


「あら~ん、ア・ナ・タ! そんなに私の手料理が食べたかったなんて嬉しいわ~」


 そのまま王妃は、ハートを乱舞しながら、顔色の悪い国王にダイブした。


「ハ、ハハハ・・・・」


 国王の目には、涙が浮かんでいた。


「アナタ、その手に持っているのは、今朝方アニタとリリーナが作った合作ではありませんの?」


 赤髪の女性は、銀髪の青年というには実年齢はいささか過ぎている人物の手に持っているモノを凝視する。


「ああ、今朝“お父様、今日も頑張って!”って、渡してくれたんだよ。可愛いよね、うちの娘達~」


 嬉しそうに話す宰相は、普段からはとても想像できないような緩んだ顔で妻に惚気る。


「実は、私も出かける前に頂きましたのよ。“お母様、今日も頑張って!”って」


 メイド服エプロンのポケットから同じモノを取り出し、対抗せんとばかりにこちらもいつもからはありえないほどに、緩んだ顔をしている。


「しかし、君の作る料理はどうしていつも、黒一色なんだい? 私個人としては、娘達のように色が欲しいところなんだけれど・・・」


 ダークマダーという名の炭の塊に目をやりながら、ちょっと残念と言わんばかりに、宰相様は妻に問いた。


「やっぱり、黒が好きなのが原因かしら? なんでも黒になっちゃうのよねえ・・・」


 悪びれもなく、さもありなんと言わんばかりに、王妃の幼馴染兼、最強の側近メイドという肩書きを持つ赤毛の女性は、ため息混じりに応えた。

 全く、改善する気はないらしい・・・。

 いや、色以前の問題だから。

 娘達2人は、お后様や母親と同じでお菓子作りを趣味としている。

 が!

 なんで、母親と娘でこうも違うのか!

 娘達の作るお菓子は、どれをとっても宮廷料理人達のお墨付きと絶品だ!

 味も、見た目さえも・・・。

 只、姉のアニタは時々“ロシアンルーレット”的な作品を作り出してくるのだが、まあ、可愛いものだ!

 1/2は遺伝子受け継いでいるはずなのに、悪い遺伝子が行かなくてよかったと、内心胸をなでおろす宰相なのであった。



「アナタ! はいあーん♪」


 妖艶美女は国王に跨り、グツグツ音を立てているこちらもダークマダー最強を誇る物体をスプーンで色っぽく掬って、口元へと運び出した。


「あ、あれ? ワシ確か、ネコ舌なんだけど? 君、知っているよね?」


 青い顔をしながら、顔を引き気味に必死に訴える。


「そうだったわ、ごめんなさい。魔力込めすぎたわ! て・い・う・か、愛情かしら? まだこんなに熱々を維持しているなんて・・・」


 嬉しそうにはしゃいでいる、金髪美人!

 問題はそっちじゃねーだろ? てか、アレ何? 本当に食べ物なの?

 第一この匂い! なんで平気なの? 嗅覚オカシイの?

 それになんで、料理確認するのに、魔法陣が出てくるの?

 しかも、“愛情はあなたひとりじめよ!”と、いつもワシばっかりで、息子達に食べさせたことないじゃん!

 すっかりイジケモードの国王様。

 対して金髪美女は、何やらブツブツと言いながら、物体Xの前で魔法陣の内容を確認している様子である。


「兎に角、こんなに仕事が残っているから! 今日中に片付けないといけない案件が多いから大変なんだよ? だから2人共早く、外に出てくれなかな?」


 今にも失神寸前の青から白に変化しつつある顔色の国王は、震える声で美女2人に促す。


「そうですわね、私ったら! お后様、参りますわよ!」


「ああ~ン!」


 名残惜しそうな、色っぽい声が部屋の中でこだまする。

 国王にしがみついて離れない、妖艶美女をベリっと剥がして小脇に抱えると、一礼して美人メイドは去っていった。

 扉が閉まり、足音とお后様の色っぽい声が聞こえなくなったのを確認後。


「で、どのくらいされるのですか?」


 微笑む銀髪宰相の背後には、ただ何らぬ殺気が漂っている。


「も・・・、もちろん今日中にこれ全部です!」


 背筋を伸ばして、敬語で答える。


「畏まりました・・・」


 答えるなり、魔法陣から黒い象の様な生き物が現れる。

 その生き物は、長い鼻でダークマダー1と2を吸い取り、部屋の悪臭を吸い取ったかと思うと、


「ゲゲェ~」


 という、なんともいえないゲップらしきものをしてドスン!と倒れたかと思いきや、ポン!と白い煙を出して姿を消した。


「ああ、これで一体何百匹の使い魔が・・・」


 目に涙を浮かべ、両手拳を握り締め、悔しそうな表情の宰相。


「ああ、丁重に弔ってくれ」


 ハイパー回復薬を飲みながら、国王は窓から見える大きな石碑に目を向ける。


 “数々のご協力ありがとう! 君たちの勇姿は決して忘れないし、無駄にはしない!”


 と、刻まれているのに・・・。


「ひとまずお后様には、“色と匂い”を改善してもらえるよう、今回は提示して差し上げて下さい」


 今宵はきっと感想を聞かれるであろうから、先に返事だけ用意しておくのも、優秀な宰相の務めである。


「わかった・・・、頑張るよ。ワシ・・・」


 その声に、気力がない。

 だが顔色は、ハイパー回復薬のおかげで戻ってはいる。

 その後。

 しばらくは、唯々、筆の音だけがする静かな執務室だった。

 が!


「ちょっと相談あるんだけど・・・・」


 申し訳なさそうに手を上げる、国王。


「は? まだあれから30分しか経過していませんよ? 言っときますが、半分は片付けないと、この超美味しいマフィンは分けてあげませんからね!」


 懐から取り出し、これみよがしに見せつける宰相。


「え? 独り占めする気? それはないんじゃないの? じゃなかった! いやいや、結構深刻な話なんだけど・・・・」


 国王は、何故か声を小さくし、手招きをする。


「はあ?・・・・。畏まりました!」


 諦めた様子で、手招きに従う。


「うちの、暑苦しい長男とお宅の氷の美女の婚姻の件なんだけど・・・」


 耳元でおっさんに話しかけられるのは、正直言って苦痛この上ないが、これも仕事なので我慢している宰相様。


「はあ? うちの娘はそんな冷たい通り名じゃありませんが?」


 ムッとして、眉間にシワを寄せる。


「すまん、言葉のアヤだ。それよりも、今日も駄目だったんだよ」


 そう言って、残念そうに肩を落とす。

 話はこうだ。

 今日も朝食後に執務室に呼び出して、いつ結婚をするのか、もういい加減予定を決めたいと問い詰めたという。

 もう1年に及ぶ攻防戦なのだとか・・・。

 そんなに公務から逃げたいの? ていうか、あんたまだ45歳働き盛りだろうが!

 宰相の心に、何かが芽生えた。

 が、そんなことは無視して国王は語る。


『お前はまだ、25歳だからいいよ? でも彼女はもう23歳。微妙な年頃だよ? この国じゃ大体女性は15~20歳くらいが売れどきでしょ? 可愛そうだと思わない?』


 と、ハッパをかけたつもりの国王。

 しかし、


「うちの娘は、行き遅れでも、売れ残りでもありませんが?」


 “これって立派なセクハラじゃん!”


 宰相の頭の中の、何かが切れた。

 うん! 何が何でも、いかなる手段講じても、婚約破棄しよう!

 てか、いっそこの王室潰しちゃう?

 と・・・。

 が、またしても見事にスルーして、国王は更に話を続ける。


『私は未だ未熟者です。“世界一最強”の名に、ふさわしいと自分で認められなければ、結婚なんて遠い夢の話です。彼女にも“軟弱モノは灰にして漕い溜行き決定!”と言われていますし・・・』


 今までは、まだ決心がつかないの一点張りだったのに、今日に限っては意を決したかのように、やっとのことで青ざめて話す、世界一最強・・・。


「って、これ何? うちの息子、脅迫されてるじゃん? それに何のプレイ?」


「~」


 思わず頭を抱えて苦悩する2児の父!

 なんでだろう?気づいてはいるのだ!

 うちは全員美人ばかり、見た目は完璧、それに加え全員勤勉で得意分野が特化しているし、文句の付け所がない!

 だが・・・。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、まあ、遺伝だし・・・。

 そこで、宰相は思考を断ち切ることにした。


「婚前交渉はもうずっと昔から何度もあったのに? 最近の子はやること早いよねー! たまに声が部屋から漏れてるらしいよ? 結構激しい時あるってよ? なんか凄いってよ!」


 証拠を掴んだとばかりに、ドヤ顔で言ってきやがった!


「はあ?」


 なにいってんの国王様?

 何純情ぶってんの? 

 第一、あんたの性欲、ハンパなかったよね? 毎回もみ消し大変でしたよ!

 このおっぱい魔人が!

 淫魔も真っ青だったよね?

 ってところは、親子そっくりだな! オイ!

 あんたも婚前交渉しまくりだったでしょう? ていうか、あんたら“出来ちゃった婚”じゃん!

 “お腹出たらウエディングドレス着れない”って、お后様大泣きするから、政事ビシバシ前倒しのハイスピードで、結婚パレードに、お披露目と一連行事一気にしたじゃないですか?

 終わった後は、城内の人間皆屍状態で、使い物にならなくて、行政危機に陥っただろうが!

 もうお忘れですか? それとも、認知症が始まっているの? 都合のいい記憶喪失なの?


 呆れてものが言えなかった・・・。

 が、娘のあんな声?を、他の人間に聞かれるのは親として複雑だ!

 防音効果の魔法具を仕込んどくか! エロ王子の部屋に!

 それにしてもうちの娘が・・・。

 嫁に行くとはいえ、複雑だ。

 見た目だけは、今にもポッキリ行きそうなくらい儚い娘に、ハードプレイを強いているなんて・・・。

 ・・・、まあ、あの性格なら意外と好きなのかもなあ・・・。

 いろんな考えが浮かんでは消えと、繰り返す。


 ひとまず、今日は帰りに栄養ドリンクを箱買いして、娘をねぎらおうと心に決める花嫁(予)の父。


 それに対し、


「そんなにアンアンやってんなら、妊娠でもしてくれないかなあ・・・」


 と、花婿(予)の父がとんでもないことをぬかしやがるので、頭の中が真っ白になる花嫁(予)の父。

 無意識に、亜空間からダークマダーその2を取り出し、有無を言わさず花婿(予)の父の口に突っ込む。


「さて、今日はもう帰りますか」


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 その後。

 夕食の声掛けに部屋を訪れた美人妻は、夫の変わり果てた姿を発見。

 だが、国中の最高ランク魔導士総出のつきっきりで、朝までの1秒をも争う治療と、妻の熱~い看護? の結果、花婿(予)の父は奇跡的に助かったとか。

 

















































































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