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伝説の酒を手に入れろ!

「伝説の酒を探しに行かないか?」


完全武装して部屋に入ってきたシエラは開口一番オレに告げた。


「冒険とか無理」


酒を作ることしか出来ない俺にどうしろと?

だがシエラはめげることなく続ける。


「安心しろ、件の遺跡はすでに他の冒険者達の手によって攻略済みだ、

だがどうしても遺跡にあると言われる伝説の酒が見つからないんだ」


「素人の俺が行ってどうなるんだよ」


「大丈夫だ、遺跡は完全に荒らしつくされていて隠し部屋も探し尽くされたから安心だ」


「じゃあどうして見つからないんだよ」


「遺跡の中央に酒が納められているといわれる祭壇があるんだがそこに酒が隠されているらしい、

そこまでは分かったんだが結局見つからなくて皆さじを投げてしまって今では酒好きが時々やって来て素人知識で調べて結局見つからずに帰って行くのがお約束になっている」


それ遺跡として大丈夫なのか?危なくないのか?


「問題ない、罠も解除され魔物やガーディアンもいない、もし居たとしても私が守ってやる」


次期宮廷魔導士候補は頼もしいな。

こうしておれはシエラに連れて行かれて遺跡探検をする事になった。



「なんと言うか観光地だな」


「観光地だな」


ポータスの遺跡は俺達が想像したような重苦しいものではなく只の観光地と化していた。

伝説の酒ツアーとか酒饅頭とか酒ペナントとか売っている。

完全に観光地です。


「とりあえず宿を取ろう」


「あ、ああそうだな」


馬車に乗ってポータズの遺跡から少し歩いた所に有るトルソの町で宿を取ることにする。

シエラに連れて行かれそこそこ良い宿に入る。


「いらっしゃいませご一緒のお部屋でしょうか?」


「いや別べ・・・」


「ご一緒で」


「いや」


「ご一緒で!」


ご一緒の部屋にされてしまった。


「とりあえず着替えるか、こんな観光地で冒険者の格好は浮く」


「そうだね」


オレは普通の旅姿だから良いけどさ、さてそれじゃシエラが着替えている間は部屋を出て……


「よっ」


「な!!!」


俺が気を利かせて部屋を出ようと思ったらコイツイキナリ着替え始めやがった。

おおう、デカイ、服を脱いだときの反応で揺れている、ほぁぁぁぁぁ。

じゃなくて!


「お、俺は外で待ってるから」


「必要ない!上着を着替えるだけだから」


 そういってシエラはオレの前に回り込んでから服を脱ぎ下着姿になるといつもよりちょっと良い服を着始めた。

 しかも俺が視線をそらそうとしてくると回り込んで来やがる。

 シエラが着替え終わるまでたっぷりその肌色を強制的に堪能させられオレは無駄に疲れてしまった。

 こいつは俺に対してだけ無防備すぎる。


「……はぁ」


「着替え完了、さぁ行こう」


 迷宮の入り口と言う名の観光名所に入ろうとすると入り口のスタッフに呼び止められる。


「入場料は銀貨1枚です、ツアーなら行動を制限されますがガイド有りで銅貨9枚になります」


「どうする?」


「まずはツアーで良いんじゃないかな?」


「そうだな」


 オレ達はツアーに参加する事にした。


「ハーイ、ツアー参加の皆さん集まってくださーい」


ガイドの声に従い集まるツアー客達。


「ポータズの遺跡ツアーにご参加いただき有難うございます。

わたくしガイドのユーラと申します」


 ガイドのユーラの誘導で遺跡の中に入っていく、

 遺跡の中は光を取り込む穴があるらしくて意外と明るい、

 さらに暗い所には灯りの魔道具が設置してある。


「この遺跡は今から700年前、この地に居を構えた魔法使いコッショーが作り上げた魔術施設だったそうです。コッショーはこの施設で様々な魔法道具を作り上げその成果がこの遺跡を護衛するガーディアンを初めとする防衛装置となりました」


 ユーラの手が展示されたガーディアンや防衛装置を指し示す。


「あれは動き出したりしないのかね?」


「ご安心ください、あのガーディアン達は既に破壊されております。

そこにおいてあるのは中身を取り出したハリボテです」


「こんなゴツイのを破壊するなんて冒険者って言うのは凄いもんだなー」


 たしかに、ガーディアンは全長3m近い巨体で腕なんてオレの胴体ほどの太さがあるんじゃ無いだろうか?


「あのタイプのガーディアンは力は強いけど動きが遅い、それを補う為に防衛装置がサポートをしていたみたいだ」


「ねーちゃん詳しいな」


「プロですから」


 シエラの説明に近くに居た客が感心する。

 そういえば魔法修行の一環で冒険者をしていたらしいな。

 この後もユーラのガイドは続き10分も移動するとお目当ての祭壇にやってきた。


「こちらが伝説のお酒が納められたといわれる祭壇です。コッショーは無類のお酒好きで、一説によるとこの祭壇に隠されたお酒を守る為にこの施設を作り出したとも言われています」


 駄目人間じゃないか。


「それではここで30分の自由時間と致します」


「では探すか」


「そうだな・・・とはいえ今は無理かな」


 自由行動になった途端ツアー客達は祭壇に殺到した。


「まずはこの部屋を調べよう」


「わかった、ではカップルに偽装して腕を組もう」


 何故だ。

 真顔で腕を組んでくるシエラ、凄い当たる。


「この遺跡に隠された伝説の酒を狙っている酒好きの冒険者は多い。だからそいつ等に宝を横取りされないようにただのカップルの振りをするんだ」


「そういうものなのか?」


「元冒険者のカンを信じろ」


 すごく信じがたいがシエラに押し切られて俺達は腕組みをしたまま部屋の中を観察する。


 部屋の中は中央に祭壇があり両端に出入り口が有る、片方は俺達の入ってきた方だ。

 さらに部屋の床には浅い水路があり中央の祭壇の底の溝に入っていく。

 排水溝かな?

 水の出所を探すと水は壁を伝って天井から流れてきているようだ。


 この水はなんなんだろうな?

 わざわざ水路になって中央に流れているって事は理由がありそうだが。


「ガイドさん、この水路って何なんですか?」


「この水路ですか?過去に冒険者の方達が調べましたが只の水路らしいですよ、上から流れてきた水が祭壇に流れてくるので何か意味があると思ったらしいんですが、水路の水はただの井戸水で別の部屋からくみ上げた水をここに運んでいるだけだそうです。ただのインテリアじゃないかって言われてますね」


 ユーラは腕を組んだ俺達にカップル爆発しろといわんばかりの視線を向けたがそこはプロ、しっかりと説明してくれた。


「水路が気になるのか?」


「ここで水路だけ意味が無いというのもおかしい気がしてな」


「飲み水としてくみ上げたついでじゃないのか? 話を聞く限り趣味人の様だしな」


 その可能性も否定できない。

 水路の事は一端置いておいて他も見てみよう。

 と言ったものの他は特に特別なものも無く、何かが隠されていそうな気配も無い。

 まぁ何かあれば過去の冒険者達に発掘されているだろうからな。


 暫く散策をしているとユーラが集合の掛け声をあげる。


「みなさーん、まもなく自由行動は終了です、これ以上の残留をご希望いただく方は一度外に出て単独入場をお願い致します」


 ユーラの言葉に集まっていくツア客達。

 最後に祭壇を見るが中央にくぼみが見えるのを確認できた。

 かつてはここに酒が安置されていたのだろうか?

 なんとなく上を見る、わざわざ上まで水が運ばれたことが気になったからだ。


「ん?」


 天井に黒い点が見えた、あれは染みか?それとも・・・


「そこのお客さーん自由時間終わりでーす、こっちに集まってくださーい」


 ユーラに呼ばれてあわてて集まる、なんか気になるな。

 ツアーを終えて一旦トルソの町に帰ってきた俺達は宿で食事をとりながら雑談をしていた。


「祭壇見れなかったな」


「人が多かったからね、どうする? 明日単独入場して見る?」


「アークはどう思っている?」


「俺は既に酒は誰かの物になっている気がする」


「だったらその誰かが自分が持っていると宣伝しないのか?」


「もう飲み尽くしていたり、価値がでるのを待っているとか?」


「可能性はあるが価値を付けたいのならむしろ宣伝するだろうな」


 それもそうか。


「まぁ明日もう一回行ってそれでも見つからなかったら町を散策して帰ろう」


「そうだな」


 そうして夜は食事を楽しんでから明日に備えて早く眠るのだった。


 とはならず


「では湯で体を拭こう」


 どんとタライをにお湯を用意したシエラがタオルを俺に渡してきた。


「じゃあシエラが洗い終えるまで外に居るよ」


「そんな事はさせない、今日は侍女が居ないから背中を拭いてほしい」


 なんでだよ


「女の子なんだから気軽に肌を晒すなよ、おじさんが泣くぞ」


「大丈夫、父様なら喜ぶ」


 たしかにあの人なら喜びそうだ、シエラと幼馴染の俺はシエラの父親に気に入られている。

 それと言うのも独特の感性を持ったシエラはその才能とあいまって余り人と関係を深く出来ない。

 どちらかといえば周りが天才肌のシエラに距離を持ってしまうのだ。

 オレの場合は親が知り合い同士だし、そもそもオレとシエラの間の才能の差は遥か山脈のかなたなのでもう気にするほうが無駄だった、だって魔法を使えなかったわけだし。

 俺が魔法を覚えることが出来るように魔法使いを紹介してくれたことも一度や二度ではない。

 将来魔法を覚えたら結婚しろとか言ってたしなぁ。


「だから拭いて」


「いやいや」


「私が汗臭いままで外に出て笑われてもいいの?」


「うっ」


 それを言われると


「女に恥を欠かせちゃいけない、男の甲斐性」


 結局シエラに押し切られて背中を拭くことになったのだが


「何故全裸になる!!」


 シエラに準備が出来たといわれて顔を向けたら全裸だった。

 しかも立った状態でこちらを向いているので色々と・・・


「全身拭くし」


「俺が吹くのは背中だけだろ!!」


「後で他も拭くから、さっ、カモン」


 カモンじゃねぇ。

 仕方なしにシエラの背中を拭く。


「気持ち良い」


「そうですか」


「ねぇ」


「なんだ?」


「欲情した?」


「・・・ノーコメント」


「欲情しろ」


 命令された!?


「二人きりの旅行、解放的になる男女、夜のベッドで裸の二人、間違いが起きるのは仕方の無いこと」


「開放的なのはお前だけだし、裸もお前だけだ、間違いは起こさない」


 絶対に起こさない。


「アークは勘違いをしている」


「?」


「これからアークも体を拭く為に裸になる。そして拭くのは私、隅々まで綺麗に拭く。男女が裸で体を密着させればモンモンとするのは自然の摂理」


「自分で拭くので結構です」


「そうはさせない!」


 くるりと俺のほうを向いてシエラが宣言する、勢い良く振り向いたので横方向の揺れが凄い。


「ちょ、おま」


「アークは甘い、私は元冒険者、アークを組み伏せるくらい造作も無い。そしてアークの体を拭くのは私の使命、そのついでに間違いが起こっても寧ろウエルカム。なにより親公認、アークの親も公認」


 おぉーい! 俺の親ぁ!!!

 正気か?嫁入り前の娘になんて事をさせるんだ、幾らなんでも外部に漏れたらしゃれにならんぞ。


 貴族の娘は結婚するまで純潔であるのがルールだ、もしも結婚前に純潔を失ったことがばれたらそれこそ嫁の貰い手がなくなる、良くてスケベ貴族の側室が関の山だろう。


「アークは純真、いまどき結婚前に純潔を失うことなんてザラ」


 いやいやいや、そういう問題ではない。

 このままではオレはシエラに純潔を奪われてしまう。


「さぁ、ロマンティックにメイ・・・クラブ?だっけ?」


「分からんのなら無理に使うな!!」


 とっさにタオルを顔面に投げつけてベッドから飛び降り部屋を飛び出す。


「まって」


「そういうのは結婚してからだ!」


「そういうところも可愛い」


 裸のシエラは服を着るまで外に出れない、今のうちに身を隠そう。


 夜の町に出た俺は繁華街を練り歩く。

 食事はさっき済ませたからどうしようかな?

 いかがわしい店に入ると絶対ばれるというか殺される気がする、もしくは一生弱みを握られるかもしれない。

 通りすがりの出店で酒や饅頭が売っていたのでシエラへの土産として買っておく。

 これで許してくれると良いのだが。

 酒には銘酒遺跡殺しと書かれていた、遺跡を殺してどうするんだろう?


 ほとぼりを冷ます為にプラプラとしていると馬車が見えた。

 どうやらこんな時間でも遺跡のツアーはやっているようだ。


「まだ遺跡に行くんですか?」


「ええ、今日みたいな月の綺麗な日は遺跡の周りで酒盛りをする客が多いんですよ、お客さんも乗ります?酒用意してるって事はそう言うつもりなんでしょ?」


 そう言うわけではなかったんだがほとぼりを冷ますには丁度良いか。


「帰りの馬車は出るんですか?」


「町の門が閉まるちょっと前に到着する馬車が出ますよ」


「じゃあ乗ります」


「まいど」


 馬車に揺られて遺跡に到着すると結構な人が宴会をしていた。

 月に照らされた遺跡は美しく、なるほどこれなら酒盛りをしたくなる気持ちも分かるというものだ。

 その光景をひとしきり見た後入り口の係りに話しかける。


「この時間でも中には入れるんですか?」


「入れますけど何も無いですよ、明かりはありますが足元には気をつけて」


「じゃあためしに入ってみようかな」


「なんも無かったぞ兄ちゃーん」


「そうそう、入るなら昼間にしておけー」


 係の人に入場料を支払い、一人で遺跡の中に入る。夜の遺跡は昼間以上に暗く、魔法具の明かりはあるもののちょっと薄気味わるい。

 足元に気をつけながら祭壇のある部屋に向かう、昼間に見た黒い点が気になったのだ。


 祭壇の部屋に入ったオレはややガッカリしていた。

 遺跡特有の幻想的な光景というものは存在しておらず魔法具が事務的に光を発していただけだった。


 とりあえず祭壇を見てみるか。

 天井は暗くあの黒い点は見えない、魔法具の灯りでは光が弱くて見えないのだ。

 仕方が無いので祭壇を見ることに集中する。


 祭壇は石を組み合わせた物で物語のようにどこかがスライドして動くような事も無かった。

 一通り探しても見つからないので諦めて祭壇に背を預けて酒盛りを始める。

 魔法具の灯りで照らされた水路を流れる水が幻想的とも言えなくは無い。

 水の流れを酒の肴にして暫く飲んでいると背後からぴちょんと言う音が聞こえてきた。

 何事かと振向くと祭壇に水滴が落ちていた。

 水滴が落ちているのは祭壇中央のくぼみだ、何処からこぼれているのかと上を見ると底に白い点が見えた。

 あれは確か昼間の黒い点があった所じゃないか?

 じっと見つめていると再び水滴が零れ落ちてくる。

 もしかして遺跡が老朽化して水路から水漏れを起こしているのか?

 だとしたら係の人に伝えたほうが良いな。


 だがその心配は杞憂だった。

 ふと酒の匂いを感じた、それは今まで飲んでいた遺跡殺しの匂いではない、もっと透明で心に染み入るような匂いだ。

 匂いの元を探して鼻を鳴らす。

 匂いの元はすぐ傍にあった、祭壇の中央くぼみからだ。

 そこにあるのは水滴がたまった水だ、オレは水滴を指ですくう匂いを嗅ぐ。

 酒の匂いだ、指に付いた水滴を舌で舐める。


 透明感の高い味わいが舌に広がる。

 間違いないこれは酒だ!!

 オレは慌てて遺跡殺しの中身を捨てると水路の水でビンを洗い祭壇のくぼみに嵌める。

 祭壇のくぼみは酒瓶を置く為のものだったのか。


 少しずつ水滴の量が増えてくる、そして水滴はもはや水滴ではなく酒の流れになる。

 滴り落ちる酒が瓶を満たす頃には再び滴り落ちる酒は雫となりやがて止まった。


「これが伝説の酒なのか?」


 瓶にフタをして帰ろうと思った俺の横で再び水の音がした。

 慌ててみると天井から大量の水が流れて来る、また酒が流れてきたのかと思ったがそれは酒ではなく只の水だった。

なるほど、こうやって酒を洗い流していたのか」


 水が流れ終えると天井の白い点は消えていた。

 あれはなんだったんだろう?


「お客さーん、そろそろ閉めますよー、って何ですかこれ?水浸しじゃないですか!」


「ああ、いや伝説の酒を手に入れたらこうなったんです」


「は?」


「伝説の酒」


 そういって遺跡殺しの瓶を見せる。


「いやその酒は町で売ってる酒・・・」


「ええ、中身を抜いて伝説の酒に詰め替えたんです」


「酔ってませんか?」


「匂いを嗅いでみれば違う酒と分かると思いますよ」


「ちょっと失礼」


くんくんと匂いを嗅ぐ係の人。


「確かに違いますね。・・・・そのホントに伝説の酒なんですか?」


「遺跡にあった酒なんでそうだと思います」


「マジかよ」


 遺跡から出て来た俺が伝説の酒を持ち帰った事で遺跡の外で酒盛りをしていた客達が大騒ぎになった。


「ちょっ!マジかそれ」


「一口!一口頼む!!」


「飲んでみんことには信用できん!!」


 要するに皆飲みたいらしい。


「調査の為にも是非」


 係の人までグラスを用意して来た。

 折角なのでみんなのグラスに注いで伝説の酒の品評会をする事にした。

 全員に注いだので一人当たりの量はかなり少ないが伝説の酒としては正しい量なのかも知れない。


「じゃあ、伝説の酒!戴きましょうか」


「「「「おおー!!!!」」」」


 全員同時に酒を口に含む。


「ほぉ!」


「んん!」


「ふぉあ!」


「くっー!」


 それぞれが思わず声を漏らす。


「美味い!」


「さっぱりしているのに深い味が染みてくる」


「だがしつこく後に引かないのが良いな」


「はぁー、これは良いな、もっと飲みたくなる」


「どうやって手に入れたんだ?」


「えーっとですね」


 こうして酒を飲み干した俺達は持参した酒とツマミを戴きながら伝説の酒を手に入れた話を酒の肴にしながら徹夜の宴会を続けた。


 翌朝話を聞きつけた街の人間が調査班を組んで調べると天井にすり鉢上の小さな穴が開いており、魔法使い達の調査ですり鉢上の穴の側面に小さな魔術式が刻まれていることが明らかになった。

 月の光が魔術式を照らすと術式が発動し、水路の水が一部分岐して魔術式の刻まれた穴を流れる、

 水は月の魔力を取り込み酒に変換する仕組みになっていたらしい。

 変換された酒は穴を伝い祭壇に流れ込み月の光が無くなると術式は中断され水だけが残る。

 術式が切れた事を水路を稼動させる為の魔術式が感知し水路の分岐が戻る、その時の水路の動きで残った水が押し出されて祭壇を洗い流す仕組みだったそうだ。


 遺跡の酒を手に入れる方法が分かった事で街の人間には大層感謝され宿代は只になった。

 更に謝礼金と新たに汲んだ伝説の酒を貰って俺達は家路に着いた。


 着きたかった・・・


「・・・・・体の拭きあいっこするぞ」


「・・・・・・・・はい」


 あの後遺跡から帰ったら、宿の入り口で仁王立ちして待っていたシエラに無言で叱られシエラの望みどおりお互いの全身を拭きあって一日中宿の部屋で密着することを強要された。

 謝り倒してなんとか過ちを侵すことだけは勘弁して貰ったが、

 一ヶ月間毎日シエラに「好きだよ」といいながらキスすることを約束されられるのだった。


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