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従兄弟はギャルゲ主人公だねこれ。

息抜き第二弾。ずいぶんと間開いた所為で文体とか、性格だとかグラッグラにブレてますがスルーしてください。

俺には従兄弟がいる。まぁうん、結構な確率でいるよな。俺の従兄弟は父さんの妹の子供で、同い年。学校はこの辺じゃ有名な私立校の一つに行ってる。本人いわく、『平凡な家庭に生まれた平凡顔のその辺にいそうな高校生』だそうだ。


———お前はふざけてんのか、と。嘘つけゴラァ!と、叫びたくなる俺の気持ちもわかってほしい。

平凡な家庭はまあいい。おばさん専業主婦で、おじさんは有名企業で役もち。この辺で中流より上な感じだけどまあいい。


平凡顔?俺に謝れ。おばさん美人でおじさんナイスミドルだろうが。『おじさん』と『おばさん』て呼ぶの躊躇われるレベルだろうが。それを基準にしてたら、イケメンなんてそうそういねえよ。平凡顔つーのはなぁ、Tシャツとジーパン着たら、雑踏に埋もれる俺のようなのを言うんだよ!お前同じ格好でも、似合ってるだろうが。没個性何それ?って感じじゃねえか。………言ってて空しくなって来た。


そして、どこにでも居そう?居ねえよ、てめえみたいなチート。小学校高学年でチートって言葉を初めて知ったときに、あ、従兄弟の事か、って思うぐらいにはお前チートだから。普通の人は、やろうとしてもできない事の方が多いんだよ。勉強してないんだーってのは、一夜漬けですって事だろ。なんでホントにしてないのに、50番以内に居るんだよ。一緒に巻き込まれてできなかった俺は、下から数えた方が早かったからな?!運動だって、お前鍛えてる訳でもないのにいつも上位だろうが。つーか知ってんぞ。お前の通知表、4と5ばっかで、5のが多いってこと。3があったらやっちゃったとか言ってんのも。ふざけんな?3は普通です。悪くないから。



で、なんでこんな風に従兄弟の愚痴を言ってるかというと、従兄弟の所に行かなくてはいけなくなったからです。なんて、罰ゲーム?








事の発端というか、きっかけは一本の電話。朝というか、もうじきに昼という時間帯。


「はい?もしもし。」

『もしもし?タカくん?突然なんだけど、今日暇って言ってたわよね?』

「ん?その声、おばさん?暇だけど………どうしたの?」


内容がわかってたら、暇だなんて断言しなかった。どうして言い切っちゃったの朝の俺。


『よかったわー。実はね?うちの弘人ってば、お弁当忘れてっちゃったのよー。今日土曜日じゃない?私この後予定があって届けにいけないのよ。代わりにタカ君にお願いできないかと思ってー。タカくんが捕まってよかったわー。』

「え?あいつ今日授業なんです?」

『そうなの!今からいいかしら?後20分以内に家でないと、私、間に合わなくてね?』

「あ、はい。」

『ふふっ。じゃあ待ってるわね。』

———ブツッ。

ツーツーツー………


あれ?決定事項になってます?………20分以内って、今すぐ出ないと微妙に厳しいんですが?!えーと、財布と携帯と!でいいやもう。鍵締めて、あー、チャリ。チャリのが早い。おっふ、あと15分。


自転車にまたがりペダルを漕ぎ出し、従兄弟の家に向かう。家に着けば、玄関で待っていたおばさんに、『お願いねー』なんて弁当を渡され、彼女はさっさと車で出かけてしまった。











そして現在、従兄弟の学校の前、なう。

私立はやっぱ校舎もキレイだなー。何でオレここにいんだろ。

はあー、と深いため息を吐いて携帯を取り出す。あいつの事だから電源付けっぱでしょ。つい最近のやり取りからメールを送る。あー、クラス聞いて下駄箱に入れればいいかなぁ……どの道、中に入るなら事務室?守衛室?に顔だして名前書くかー。『お前って何組だっけ?』という簡素なメールを送って、返事を待つ間に校門を抜けて(おそらく)事務室に、忘れ物届けに来ましたーと報告する。


「あら、律儀にどうも。じゃここに名前書いてね。弟さんかしら?」

「はぁ……まぁ……」


誕生日的にはあいつが従兄だけど、なんだろう、この、屈辱感。俺ってそんなに童顔か?え?平均身長より少し低いけど、小さくはないよ?165あれば普通だよ、ね?………ちょっと自信ないぞ。

はいどうぞ、と入校証を渡される。これで万が一誰かに咎められても大丈夫。いやうん。自分のミスでいろいろ言われるのは、いやだからね。ホントの事が一番心に、ぐさっとくるんだよ。言いがかりならいっそ相手をバカにしてクールダウンできるから。……なんでこんな事に慣れてしまったのだろうか。周りの奴らの所為ですね、はい。知ってた。

そんな感じで考えを巡らせてると、携帯が着信を告げる。あ、返信?と思ったら、電話だった。今休み時間?


「もしもし?ヒロ?」

『うん。タカ、いきなりどうしたの?』

「いやむしろオレのセリフ……まぁいいや。で?何組?」

『だからどうしてそれを聞いてるの?って。』

「(話が進まねぇ……)いやうん。下駄箱位置がわかればいいから。」

『え?……もしかして来てるの?』

「うん、だからさっさと…」

『いまどこ?そっち行く。』

「いやいやいや!いいから!!(会いたくないから、クラス聞いてたんだって!)」

『いいからいいから!タカの事だから事務室辺り?』

「(なんでわかるんだよ……)はぁ。」

『すぐ行くからそこ居てね!』ブツッ。

ツーツーツー……


………この一方的な感じはまさしく親子ですね。






どうしようもないのはわかっているが、足掻きたい衝動と戦いつつ十分ほど経った所で、近くの階段から駆け下りてくる音が聞こえる。ホントにきたよ。


「あ!居た居た。タカおはよ。どうしたの?」


笑顔で駆け寄ってくるイケメンの言葉を無視して、手に持った荷物を押し付ける。


「?何?……あ!おべんと。え?わざわざ持って来てくれたの?ありがとう!」


ヒロは荷物を受け取ると、きょとんとした顔をした後、訝しげな顔で袋の中身を確認し、弁当が入ってるのをみて驚いた顔をし、笑顔になってお礼を言ってきた。

イケメンてなんでどんな顔しても様になんの?イケメンだからですね。くそが。何度見ても同じ疑問を抱き同じ結論に至る。コイツが表情豊かで感情表現が素直な所為もあるのだろうけど。

しかし、これでオレの用事は終了した訳で。面倒ごとに巻き込まれる前に撤退しよう、と声を上げる。


「じゃ、それだけだからオレ帰るわ。」

「え?!待って!せっかく久しぶりに顔合わせたんだし少し話しようよ!」


帰りたいのにヒロのバカが制止をかける。え?!って何。なんでオレが帰る事が想定外になってんだよ。オレ、部外者よ?それに別に話す事なんてねぇよ。適当な理由をでっち上げて帰ろう、と言葉を続ける。


「いやオレ昼まだだし。」

「購買で買えばいいよ!持って来てくれたお礼におごるし。」

「いやいやいや、なんで他校の購買で飯すませなきゃいけないんだよ。」

「うちのパンかなりおいしいよ?」

「そう言う問題でなく。」


どうしてこう、話が通じないかなあ?!オレの方が常識的な事言ってるよね?どうしたら引いてもらえるのだろうか、と頭を悩ましていると、


キーンコーンカーンコーン———


おなじみのチャイムが鳴り響き、校舎がにわかに騒がしくなり始める。どうやら授業が終わったらしい。

………授業?


「なぁ、ヒロ。お前サボったのか?」


いやだって、授業中だったらしい時間にオレのとこにきたって事はつまり、そういうことだろ?


「違うよ!!自習だったから抜けて来ただけ!課題も終わってたし。」

「いやだからって来るなよ。」

「課題が終わって携帯見たら、普段滅多に連絡くれないタカからメールきてたんだよ?!しょうがないじゃん!」


どう、しょうがないんだよ。

思わずじと目になって従兄を睨みつけていると、先ほどヒロが駆け下りて来た階段から急ぎ降りてくる音が響く。アレ、ここ邪魔かな?と思い階段の方を見ると、髪を二つに結んだかわいい子が顔を出し、ヒロを見ると満面の笑みになって駆け寄ってくる。あ、嫌な予感。


「弘人!ここに居たのね!いきなり飛び出しちゃうからびっくりしたんだよ?!」

「ごめんね?でもどうしたの?何か用でもあった?」

「え!あの!その………お昼を、その。」

「ん?なに?」

「あう……だ、だから、その、ね。」

「うん?」


なんで目の前でラブコメ見せられてるんでしょうか。つーか、てめえ鈍いっつっても限度あるからな?んな可愛い子が顔真っ赤になって必死に言おうとしてるんだから、それとなく察して誘導しろや!

……まあいい。この隙にとんずらするか。このままここに居たら、経験的に俺にとってよろしくない事になりかねない。そーっと足を引いて体を反転しようとしたが、遅かったらしい。


「お昼はタカと食べるつもりだったんだけど……タカ、ののと一緒でいい?」


空気読めよ……!どう考えてもその子は、お前と!二人で!ってお誘いじゃん!!なんで固辞してる俺と食べる事は決定してんだよ!!見ろよ、女の子がめっちゃ憎い敵を見つけた言わんばかり睨んでるぜ。女の子は笑ってた方が可愛いと思うな。今言ったら多分いろいろ殺されるから言わんけど。つーかここで従兄弟との食事を断ると、あのバカは女の子と一緒はいやって言うふざけた勘違いを発動させて、結果としてオレが女の子に恨まれるという、お決まりのパターンですよね。つまりは、オレのとれる選択肢はたった一つ。


「むしろオレがお邪魔じゃないか?そちらが気にしないなら問題ないが。」


という、結局コイツらの間に挟まれるという胃に優しくない選択肢オンリー。どうしてこうなった………!








はい。ってことでね。従兄弟の教室なう。………どうして(略)

あのさ?もうちょっと違うとこなかったのかな?空き教室的なほら。オレ私服なのよ。で、お二人さんはクラスを見る限りトップレベルの顔面偏差値でいらっしゃるでしょ?オレ、モブ顔なのさね。で、どうなるかっていうと、その、ね。………視線がいたいんだよバカやろう!!

さっさと食ってさっさと帰ろう。うん。それがいい。いただきますと小さくこぼしてから、従兄弟が買ってくれたパンに手を伸ばして袋をあける。それにつられるように二人も弁当箱をあけて食べ始める。

おお、おばさんの飯は相変わらず美味そうだなぁ。女の子のも全体的にかわいらしいし。あ、でもアレは冷凍のだな。んー、もしかして手づくりかな。いいなぁ。なんでオレ、パンをこんなとこで食ってるんだろ。今日の昼は姉ちゃんも妹も居ないから、好きなもの作って食おうと思ってたのになぁ。目の前では、お弁当おいしそうだね?とか、え、あでも卵焼き失敗しちゃって……とか、ホントに?わかんないよ?とか、リア充がイチャイチャしてるしさ。

帰りたいな。切実に。でも後一袋食いきればオレは帰れる!とか思って最後の一袋クリームパンに手を伸ばした途端に、ガラッ!と勢いよく教室の扉が開いた。あ、嫌な予感。


「ひっろとー!ご飯食べよ〜?アレ先に食べちゃったの〜?もう!でも弘人だから許したげる!」


扉が開いて入って来た巨乳ちゃんが、一直線に従兄弟の下にきて抱きついて一方的にまくしたてた。か、帰りたいなぁ………!


「くみ、危ないから抱きついたりとかダメだよ。ご飯食べるなら、ののの隣が開いてるからそこに座って?」

「北条さん?いたの?」

「弘人は、私と!食べてたんだから当然でしょ。西内さんも座ったら?」


よくわかりたくないけど火花が見える……!くそぅ。美味しいはずなのにパンの味がわかんねぇ。あ、あと半分食べきったら、俺、帰るんだ……!

———俺が立てたフラグは、きっちり回収される様です。再びドアが開き、スラッとした美人が入って来た。


「弘人君、ご飯食べ終わったらいいかしら?」


ほらやっぱ従兄弟関係だ……!中学からの知り合いは一人もいないって前言ってたよね、お前。なんでそれでこんなに美人侍らしてんだよ。

内心呆れつつ、美人さんに目を向けると目が合った。あ〜、凄く面倒な予感。


「あら?あなたは?失礼だけど部外者がこんな所になぜ居るのかしら?先生に連絡した方がいいかしらね。」


ほらきた、他校に顔だすともう既に恒例に近いイベント!

もういいよ。慣れたよ。むしろこれをきっかけにしてオレ帰るから。最後の一口を口に入れ、飲み込む。それをみた従兄弟が慌てたように口を開く。いや、普通に帰らせろよ。


「南野さん、違うんです!タカは、彼は俺がここに連れてきて……」

「部外者にかわりはないでしょ?」

「でも、入校証は持ってますし、俺が無理に引き止めたから……」


従兄弟はなぜか見るからにシュンっと落ち込んだ様子になる。いや、そのセンパイ(?)の言う事のが正論でしょ?なぜ周りがうろたえる。


「ひ、弘人?入校証があるなら、ほら、大丈夫じゃない?!ね!西内さん!!」

「そ、そうよ!!許可はあるってことだもんね!副会長の言う事なんて気にしちゃダメよ!ね?!」

「わ、私だって別に、その、本気で攻めてる訳じゃ……!副会長として弘人君達の心配をというか、その、ね?」


周りがスッゲー従兄弟に甘いんですが何なんですかね。帰っていい?帰っていいよね?!

従兄弟の周りでわたわたしているのを尻目に、そろーっとドアの方へ移動する。手をかけようとした瞬間にドアが勝手に開く。いや、向こう側から開けられた。………このパターンはつまり……


「あれ?ごめんなさいね。って、うちの生徒じゃないわね?どちら様?」


スーツ姿のおそらく教師が首を傾げながらオレに声をかける。教師という存在に思わずかしこまりつつ、帰るために必死に口を動かす。


「え、あ、すみません!忘れ物届けに来てて、今、帰るとこです。」

「そうなの?気をつけてかえってね?」

「はい!」


よっしゃ!帰れる!!!内心ガッツポーズをしつつ、横を通り抜けようとしたが、従兄弟がこちらに気づいて声を上げる。帰らせろっての……!


「タカ!!待ってせめて玄関まで送る!東雲先生すみません、僕の知り合いで……」

「弘人くんの?弘人くんは優しいのね。でも忘れ物するなんて気が緩んでるんじゃないの〜?この前のテストもそうだけど。」

「あはは。すみません気をつけます。」


オレは別に女の子な訳じゃないし、見送りとかいらねえよ?そして、会話を聞く限り先生も従兄弟のハーレム要員ですか?個人面談とかしちゃうんだぜ、きっと。

とりあえずは、と従兄弟の言葉が聞こえてないかのように気にせず階段に向かう。まぁ、無視した所で後ろから律儀に追いかけてくるんですけどね!




そのまま声をかけ続ける従兄弟を無視して事務室前の玄関まで行き着く。

長かった!帰れるんだ、オレ!道中で従兄弟の言葉を無視するオレに痛い位の視線が至る所から刺さったけど、当分来る事はないし、所詮は他人!気にしないもんね!………従兄弟ばかり人望がある事なんてわかってたし!あいつのハーレム属性は老若男女問わねぇ事なんて知り合った当初から知ってたし!オレなんも悪くなくても恨まれるなんてしょっちゅうだし!気にしてないし!………な、泣いてねぇし。


「———とね。今度何かあったらお礼になにかするから!……タカ聞いてる?」

「あぁうん聞いてる聞いてる。お礼とか要らんから。」


でも、とか、だって、とか、いいっつーの。おざなりにハイハイと流して、事務室の人に入校証を返して靴を履く。相変わらずうるさい従兄弟にくるりと振り返って、どうしようもないので解決策として口を開く。


「じゃ、今度飯たかりにいく。ってことでおばさんによろしく。」

「!うん!!楽しみにしてるね!!」


それこそ輝かんばかりというか、確実に後光だか背景効果だかが差している笑顔に少し遠い目になる。これ普通はニコポになるんですよね。オレは関係ないけど。見慣れるというか、周りがニコポにかかってるのを見てむしろ冷静に一回なった所為というか。

そんな笑顔のまま手を振る従兄弟に、適当に振り返してさっさと学校を後にする。

もういいよ。当初の予定じゃ、帰りにスーパーにでも寄ろうとか考えてたけどそんな気力残ってねぇよ。一時間足らずでこんだけ疲れるって何なの。


はぁー、と深いため息をついて帰路につく。ということで、オレの従兄弟はこんな奴です。誰でもいいので飼い主募集中です。つーか、あの女の子の中に誰かがあいつ落とせよ。主にオレのために。だけどもまぁ当分、このまんまなんだろうなぁとも思う。なんたって従兄弟って縁は切れない訳だから。


……あれ?オレ、詰んでね?




ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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