99.【侵入者:人喰い恐竜ブロック】
ある日の夢は……
悪夢だった。
大家族の人に飼っている犬の元気がないと相談されて見に行ったら、ライオンみたいなサイズの痩せ細った犬が横になっていた。
当時飼っていた父猫のチップにそっくりな牛柄の犬だった。
症状を聞いたら腎不全と似ていたので、あれをしたらいい、これをしたらいいと知っていることを話して実践してみたけど、犬の呼吸がどんどん荒くなっていく。
チップも腎不全を患っていたから、最期はこんな風になって死んじゃうんだろうか……と思ってしまった。
見ていられなくて目をそらすように振り返ると、いつの間にか暗い廃墟みたいな場所に立っていた。
水浸しになっている床には、透明のセロファンに貼られたシールのような物がたくさん落ちていた。
これを女の子に渡さなきゃ……。
そう思って拾っていたら、部屋の奥に光が見える。
明るい方へ出てみると、眩しい光と一緒にカラフルな色が目に入ってきた。
よく見ると、おもちゃのブロックのような色とりどりの巨大な何かが置かれていた。
細長い道に沿ってずっと奥まで続いている。
どれも一つ一つが車一台分……
それ以上はありそうな大きさだった。
ブロックは砕けた部分もあるのか、所々形を変えてビルのように積んである。
街が巨大な箱に入れられたみたいに、天上も地面もブロックの先も真っ白い何かに囲まれていた。
アッチノ世界には真っ白な場所やカラフルなブロックが積まれたような壁が立っている場所もある。
82.【実験と不気味なパレード】の夢に出てきた灰色の空間にも似ていると思ったけど、何か違う気がする。
トボトボと歩いていたら……
「お嬢さん、もうすぐ奴等が目覚める時間だよ。そんな所にいたら危ないよ」
背後から声がした。
振り返ると髪の毛の薄いおじさんが立っていた。
「私はね、このシェルターがあるから生き残れる。奴等が来ると聞いて大枚を叩いて買ったんだ。このシェルターが出来上がっていく様子を見ながら入れる日を待ちわびていた」
そう言いながらおじさんが見上げた先には、格子窓がついたブロックがあった。
「奴等に紛れてしまえば見つからない。選ばれた者だけが生きていける。まぁ、庶民そうなキミには入れないだろうがね……」
そう意地悪そうにおじさんが言った時だった。
近くにあった歪な形をしたブロックが突然動いて、積み上げられたブロックの奥へとおじさんを引きずり込んだ。
おじさんの姿が見えなくなったと思ったら、断末魔と一緒に聴こえてきたのは生々しい音。
状況がわからず辺りを見渡すと、あちらこちらのブロックが動き出していた。
ブロックをよく見てみると、砕けていると思っていた部分が恐竜のような生き物になっていた。
みんなスフィンクスみたいな体勢で目を閉じたまま、頭を横に大きく振り始めた。
まるで食べ物を求めているみたいに口をパクパクと動かしているようだった。
彫刻のように眠ったまま動かないブロックもあるけど、動いている恐竜は目覚めるように動きが早くなっているような気がする。
すぐに全部のブロックが動き出しそうだった。
このままここにいたら、さっきのおじさんみたいになる……。
怖くなったアタシは細い道を走った。
途中で横道があったけど、道の先には完全体になった恐竜達がゾンビゲームのワンシーンのように群がって生々しい音を響かせていた。
あれに見つかったら捕まっちゃう。
そう思って走ろうとした瞬間、目の前に口を開けた緑色の首の長い恐竜がいて食べられる寸前で目が覚めた。
凄く嫌な夢。
食べられてしまうかもしれないという恐怖。
それが怖くて仕方がなかった。
気持ちを落ち着かせたくて、なんとなく姉に「悪夢を見た」と姉にメールを打っていたら母が起きてきた。
母にも悪夢を見たと話し始めた時だった。
外から物凄い鳴き声が聴こえてきた。
慌てて窓の外を見ると、色とりどりの恐竜達があちらこちらの家を襲撃している。
えっ、これも夢?
だって、姉にもメールして母とも普通に話してたのに……。
また騙された?
本当に目が覚めて現実の世界だと思い込んでいたから、アタシはかなり動揺してしまった。
アッチノ世界で夢だと気がついた時、いつもは怖い夢でも回避しようと色々試す。
でも、今回は先に悪夢を見てしまっていたせいで恐怖心に囚われて、全く回避できない。
それに夢の中でも母を置いて行くことができなくて、適当に荷物を持たせて一緒に部屋を出た。
階段を下りようと思って扉を開けると、なぜか最初の夢に出てきたカラフルな場所に出た。
夢だと気がついているせいか、この夢の続きは絶対に最悪だと思った。
とにかく急いでブロックの間を走って行くと、大きな黒い物体が見えてきた。
よく見ると69.【パラレル・ワールド:気紛れターミナル】の夢に出てきた透明の膜に似ている。
中には81.【アパレルガール:双子と金髪の欠陥品】の夢で見た洋館みたいな部屋があって、黒い膜が触れた白い地面には投影されたみたいに絨毯が映しだされていた。
黒い膜の近くにあるブロックは、なぜか全く目覚めていないようだった。
でも、黒い膜の奥には完全体の恐竜達がこちらを見ている。
迷っている時間なんて無くて、アタシは走って黒い膜の中に入ってみた。
黒い膜を隔てた奥には、完全体の恐竜達がいる。
慌てて右へ曲がると大きな棚と窓があった。
振り返ると恐竜達が黒い膜を引っ掻いていた。
恐竜達が入ってくるのも時間の問題かもしれない。
そう思って部屋の中を見渡すと、後ろにいると思っていた母がいない……!
その代わりに女の子が立っていた。
「それ持ってきてくれたの? ありがとう」
ニコッと笑いながら、女の子はアタシの手を指差した。
自分の手を見てみると、最初の夢で拾ったシールをたくさん持っていた。
「大切なモノだから、あの箱に入れておきたいんだけど届かないの。お姉ちゃん入れてくれる?」
女の子は棚の方に指を向けた。
見上げると、一番上に蓋のない箱のような物が見える。
近くにあった何かによじ登って箱に入れようとした瞬間、水に濡れていたシールが滑ってバラバラと地面に落ちた。
急いで拾うと、また落ちてしまう。
これは夢に邪魔されている……。
そう思いながらどうにか箱に放り投げると、女の子が走って窓を開けた。
すると、また窓があった。
二人で何回も窓を開けると、ようやく外が見えた。
川になっているのか、すぐ目の前に水が流れている。
外に出ると、どこからか女の子が船を引きずってきた。
それに乗って逃げようとした瞬間、目が覚めた。
また夢を見るのが怖くて目を閉じられないぐらい、今回の夢は本当に怖かった。
そんな夢でした。




