95.【袴の大男】
ある日の夢は……
アッチノ世界にある我が家の前から始まった。
時間が止まったままの夕暮れが見える。
ボーッと眺めていたら、中学時代にお付き合いしていた元彼が突然現れた。
アタシの背後に立ったと思ったら、93.【狐のお面とヘイモーンな神社】の夢にいた狐のお面の男の人みたいに両手の先をアタシの背中に添えて、何も言わずにグイグイ押してくる。
押されるまま歩いて行くと、神社公園に辿り着いた。
現実の世界の神社公園には無い場所にベンチがあって、そこに袴を着た大柄な男の人が座っていた。
なんとも言えない雰囲気。
ビビりながら様子を見ていると、元彼も間をあけてベンチに座った。
そして挟むように真ん中にアタシを座らせた。
そんなに大きくはないベンチ。
三人、みっちり密着するように座っているから気まずい。
相変わらず元彼は無言のまま。
顔を見ると瞬きもせずどこかを見ている……。
まるでマネキン人形みたいで少し怖かった。
じーっと見ていたら
「いきなり呼んですまない」
突然、大柄な男の人が呟いた。
アタシが顔を向けると、男の人は唾が飛びそうなほど力強く話し始めた。
「ワシは自分の姿形を変えてずっと昔からお前さんを守ってきた。だけど、もうお前さんを守れる力が無くなってしまった。死んだも同じような存在なんだ。許してくれ……」
そんな感じのことを悔しそうな顔で言う男の人。
アッチノ世界のアタシと現実の世界のアタシの記憶が別々なのかわからない。
でも、男の人の言葉を聞いて夢の中のアタシは思い当たる記憶をたくさん思い出していって、「あなたが守ってくれていたのね」と泣き崩れた。
そんなアタシを見た男の人が何かを言いかけた時、携帯電話のアラームが鳴って起きてしまった。
『あなたが守ってくれた』ってことは、アッチノ世界で助けてくれた人達の一人なのか……。
それとも守り神か何か?
なんてぐるぐる考えてみたけどわからない。
そんな夢でした。