92.【小さな食堂】
ある日の夢は……
アッチノ世界にある迷路街に似た雰囲気の細い道を歩いていた。
しばらく歩いていると小さなお店を見つけた。
看板は見当たらない。
出入り口の横には窓があって、窓の下には小さなカウンターと二つの丸椅子が置いてある。
飲食店なのか、店内でも食事ができて外でも何かを買えるような雰囲気だった。
初めて見たはずなのに初めてな感じがしない。
店の前でぼーっと見ていたら、中にいたエプロン姿の女の人がアタシに気がついた。
「あら? Aちゃんじゃない! ここで良ければ座ってー」
女の人は外にある丸椅子にアタシを座らせた。
中には髪を後ろで結んだ背の高い男の人が料理の仕込みをしているのが見える。
夢の中のアタシは知り合いなのか、二人は夫婦だと思った。
女の人は凄く会話が好きで、男の人は無口だけど自分の好きな話題だとお喋りになる。
夢の中でアタシは亡くなった祖父が9人兄弟だった話をしていた。
女の人も色々話してくれたけど、起きたら思い出せなかった。
あのお店もこの近くにあるんだよなぁ。
女の人の話を聞きながら、そんなことを考えていた。
それがアッチノ世界にある屋根のない洋服屋のことなのか、ロールケーキ屋なのか……。
それとも夢の中だけで知っていて、別のお店のことなのかはわからなかった。
色々話していると開店時間なのか、お客さんが続々とお店の中へ入っていった。
接客している女の人の様子を見ていたら、男の人がアタシの前に小皿を二つ出してくれた。
「最近、仕入れてみたやつなんだけど、ちょっと食べてみて」
ニヤッとした顔でそう言うと、小皿の上に果物らしき物を二つ乗せた。
プラムに似ている赤い実だった。
夢の中だと食べ物があっても食べられないことが多い。
ドキドキしながら右側の実を食べてみると、甘い味がした。
やっぱり酸味のない薄いプラムのような味。
今度は左側の実を食べてみると、今度はもっと味がはっきりと感じた。
最初に食べた方よりも断然こっちの方が美味しいと思った。
「どっちが美味かった?」
男の人は何とも言えない顔つきでアタシを見つめる。
「右の方は水っぽくて味が薄く感じる。左の方が味が濃くて美味しかった」
思ったまま言ってみた。
それを聞いた男の人は満面の笑顔で頷く。
「やっぱりなー。 俺もそう思う。左のは○○産の珍しいのなんだよ」と色々説明してくれたけど、起きたら忘れてしまった。
「Aちゃんもお店の中に入って何か食べて行ったら?」
女の人も楽しそうに笑いながら声をかけてくれた。
お言葉に甘えてお店の中に入ると、四人席のテーブルにオバチャン達が座って盛り上がっていた。
その内の一人がアタシの顔を見るとぐいぐい話しかけてきた。
「あなたAちゃんでしょ? 今度私のお店にも来てよぉー」
パーマのかかった茶髪のオバチャン。
アッチノ世界だと知り合いなのに、目が覚めた現実の世界では知らない人。
変な感じがした。
「○○ラーメン頂戴!」
オバチャンが叫んだ。
「○○ラーメンは○時からだから、まだなのよー。ごめんねぇ」
女の人が説明している途中で目が覚めた。
また行ってみたい。
そう思えるような素敵なお店だった。
そんな夢でした。