85.【青空の聖堂:優しくない復活の儀式】
ある日の夢は……
見知らぬ場所から始まった。
そこにはカントリー風な格好をした人達が岩壁をくり抜いたような空間で暮らしていた。
炊事をする場所、道具を作る場所、商店、寝室……
色々な用途の穴が蜂の巣みたいにあった。
どの穴も見上げるほど高い位置に空いていて、女の人なら二人並べそうなぐらい大きな梯子がたくさん垂れ下がっている。
その人達と一緒に暮らしていたのか、アタシも梯子を登ったりしていた。
下はどうなっているのかよくわからなかったけど、とにかく周りは岩だらけで砂っぽい。
全体的に茶色い雰囲気の場所だった。
突然、どこからか鐘の音が鳴り響いた。
みんな一斉に商店のような穴の梯子を登っていく。
タイムセールか何か始まったのかわからないけど、アタシも順番を待ってみた。
アタシの前には親子っぽい女の人と小さな女の子が並んでいた。
楽しそうに話しているなぁ……。
微笑ましく見ていたら、後ろから大柄な男の人が強引に登ってきた。
アタシの横を通り過ぎてお母さんと小さな女の子の間に無理矢理割り込んだ瞬間、女の子が体勢を崩してしまった。
まるで映画のワンシーンみたいに、スローモーションで女の子が落ちてくる。
アタシは慌てて女の子を抱き寄せたけど、そのまま背中から地面へ落下。
痛みよりも先に、やっぱり砂っぽくて湿っぽいんだな……って思った。
その後、頭と背中が冷たい物に長時間触れていた時みたいにヒリヒリと熱くなっていく。
いつも夢の中で感じる独特な痛みがじんわりと伝わってきた。
「生きてるの? 死んでるのか?」
色んな人の声が上から聞こえてくる。
大丈夫だけど……
このまま死んだことにしたら、どうなるんだろ。
そう思ったら視界が真っ暗になった。
暗い中、どこかに運ばれて大理石みたいなツルツルした場所に寝かされた。
冷たい石の感触が心地良いな……なんて思っていたら、花のような良い香りがする。
目を開けると青い天井が見えた。
よく見るとドーム型の天井に青空が描かれていた。
寝かされている場所の両サイドに柱が立っていた。
片方の先端には濁った金色のギザギザの球体、もう片方の先端には透明の球体がくっついている。
天井と重ねてみると、太陽と昼間に見える月みたいだった。
それをボーっと見ていたら、祭司のような格好をした長髪のオジサンが顔を覗き込んできた。
驚いて起き上がろうとしたけど、体が動かせない。
「次のあなたへの準備を進めておりますので、もう少しお待ちを……」
そんなようなことを言って斜め後ろを振り向いた。
振り向いた先を見てみると、棺のような木の箱が少し立てかけるように置いてあった。
あれはアタシの棺なのかな……。
そう思いながら見ていたら、箱の中にはたくさんの花に埋もれるように誰か人が入っているようだった。
あぁー。順番待ちなのね。
他人事のように見ていたら、長髪のオジサンと同じような格好をした人達がぞろぞろと出てくる。
箱の周りに立って、歌うように何か言いながら謎の液体を箱の中に振り撒き出した。
教会とかでやっていそうな聖水をパッパって感じではなくて、打ち水のようにバシャバシャかけている。
もう何かお葬式というか拷問みたいに見えた。
次はアタシがあんな目にあうのだろうか……。
ドキドキしながら凝視していたら、母の歌声で目が覚めた。
あの儀式みたいなのを受けていたら、どう変化したんだろ。