82.【実験と不気味なパレード】
ある日の夢は……
遊園地のような場所から始まった。
アッチノ世界にある遊園地はアッチノ世界に出てくる場所をパロディーに模したアトラクションが設置されていたけれど、今回はアトラクションが違った。
ジェットコースター、観覧車、メリーゴーランド、ティーカップ、フライングカーペット……
普通の遊園地でよく見る物ばかり。
アタシは全部のアトラクションが眺められるような高い場所で見ていた。
乗り物に乗り込んだのは、小さな子供からお年寄りまで老若男女の人達。
みんな番号がプリントされた白い服を着ていた。
静かに乗り物が動き出す。
せっかくの遊園地なのに、みんな楽しそうな顔をしてないなぁ……。
そう思いながら見ていたら、乗り物が段々とスピードを上げていく。
ジェットコースターは一周を終えても停まらない。
他の乗り物も同じように猛スピードで停まらずに動き続けている。
何で停まらないの?
スタッフの人に叫ぼうとしたら、
操縦室にいたのは全身が覆われた防護服のような服を着た人達だった。
よく見るとアトラクションの周辺に同じ姿の人達がたくさん立っていた。
片手にはまた電子辞書のような物を持って見ている。
32.【遊園地&プール】と【研究所】の夢と繋がりがあるんだと思った。
カーブで頭を振られる人、観覧車の中で浮いて天井にぶつかっている人、メリーゴーランドの馬にしがみついて振り落とされている人……。
人間を使って何かの実験をしているのか、みんな耐久テストの人形みたいに悲鳴もあげられないぐらい悲惨な状態になっていた。
どうにかして停めなきゃ……。
操縦している場所に向かおうと、振り向いた瞬間――
動けなくなった。
目の前に黒色の人型ロボットが立っていた。
黒色の殺人ロボットの性能はまだよくわからない……。
どうにか逃げられないか辺りを見渡してみると、ロボットの背後に大きな看板があった。
よく見てみると看板は表ではなく裏側。
支えている鉄骨の中心に60.【侵入者:感染と抗争】の夢の中で通り抜けた小さい扉のような物が見える。
それがあの扉なのかもわからないし、扉であってもどこに繋がっているのかもわからない。
それでもアタシは、殺人ロボットに突っ込んでいく勢いで扉を目指して走った。
殺人ロボットの横を通り過ぎて、扉まで後数メートル……。
何かが落ちたような音がした。
そのまま走ればいいのに……
アタシは反射的に振り向いてしまった。
振り向いた先には、腹部から鎖でできた網のような物を出した殺人ロボットが立っていた。
どうにか扉まで辿り着いて、急いで扉を引いた。
けれど、何度引っ張っても扉は開かない。
早くしないと捕まっちゃう……!
身構えながら扉を押した瞬間――
あっさり開いてしまった。
看板に頭をぶつけながら、這いつくばって奥に進んでみると、扉の先は時代劇に出てきそうな大きな台所だった。
でも、なぜか壁や地面、引き戸だけじゃなくて、釜も食器も見える物全部が白色に近い灰色。
更に驚いたのが、67.【侵入者:肌色の進化】で出てきた猫みたいな謎の生き物が大勢で炊事をしているようだった。
その生き物達も今回は肌色ではなく灰色をしている。
謎の生き物達はアタシに気がつくと、また鶏のような鳴き声をあげながらゾロゾロと近づいてきた。
前の夢と違って、謎の生き物達の移動スピードが遅かった。
奥には外に出られそうな引き戸が見える。
台所も広いし逃げられると思ったアタシは、台所を一気に突っ切って引き戸を開けてみた。
すると、その引き戸の先にもまた同じような台所と謎の生き物達がいた。
でも、さっきは正面にあった引き戸が左側にある。
ループではないのね……。
そう思って、そのまま走って引き戸を開けてみた。
また台所だったらどうしよう。
なんて一瞬思ったけれど、今度はちゃんと外に出られた。
見えたのは江戸時代のような街並み。
……といっても屋内に作られた偽物なのか、台所と同じで空も道も建物も見える物全部が灰色一色。
辺りを見渡しながら歩いてみたけれど、どこもかしこも塗装前の模型みたいだった。
それに道が碁盤の目のように前後左右に終わりなく続いていて、歩けば歩くほど抜け出せないような気分になっていく。
どうしようか立ち止まって考えていたら、どこからか象のような鳴き声が聞こえてきた。
前を見ると、今いる道より広い道があった。
それぞれ違う区画なのか、分断するように等間隔に奥まで続いている。
一番手前の道に辿り着いた時だった。
右側から象を筆頭に様々な動物の大群が押し寄せてきた。
象やサイの上にサルが乗っていると思ったら、木の実や石のような物を一斉に投げつけてきた。
中には果物も混ざっていたけど、当たると絶対に痛い勢いで飛んでくる。
反対へ逃げようと振り向くと、左側からは馬に乗った鎧姿の軍隊が大きな岩や槍を投げてきた。
挟まれたアタシは目の前の道を真っ直ぐ走った。
次の広い道に出ると、右側からホウキに乗った魔女や狼男など童話の登場人物達が現れた。
まるでハロウィンの仮装行列に見える。
反対側を見ると、日本兵みたいな格好をした人達が刀を振り上げながら一斉に走ってきた。
捕まらないようにまた先の道へ走ると、今度はロボットに乗った宇宙人やエイリアンの大群。
その反対側には、迷彩服を着た軍人に黒い帽子と赤い服を着た兵隊……。
みんなアタシに向かって何かを投げつけてきたり、砲撃してくるけど、それと一緒に色鮮やかな紙吹雪やテープも舞っているのに気がついた。
耳を澄ましてみると華やかな音楽と笑い声まで聴こえてくる。
まるでパレードのように、みんな笑ったり踊ったり楽しそうに物を投げつけてくる。
その雰囲気が凄く不気味だった。
走っても走っても不気味なパレードは終わらない。
これも何かの実験なのだろうか……。
そんなことを考えている途中で目が覚めてしまった。
毎年ハロウィンの季節になると、あのパレードを思い出す。
そんな夢でした。