6.【鏡越しの双子】
その日の夢は一階へ続く階段前から始まった。
我が家の一階には玄関と階段下の収納スペース、洋室が一つある。
階段を下りていく途中で見える景色はセピア色に変わっていた。
でもね、いくつか違っていたことがある。
アタシは一人で下りてきたはずなのに、いつの間にか目の前にはもう一人。
階段を下りた正面にある大きな鏡には、そのもう一人と同じ容姿をしたアタシが並んで映っていた。
双子……。
どっちが姉なのか、妹なのかわからないけれど、隣にいた彼女は鏡の中で微笑みながら、アタシに何かを言っている。
真横にいるのに特有のノイズ音で聞こえない。
口元を見ても、ざらついた一階の世界では無意味だった。
何かを言い終わると満足したのか、嬉しそうに鏡の横にある洋室のドアを開けた。
開きかけた隙間からは、ざわざわとうごめく様な暗闇しか見えない。
彼女はアタシの手を取り、そのまま洋室へ入っていこうとする。
でも、何があるのかわからない。
そんな部屋に入るのが怖くなって、アタシは彼女の手を振り払い、急いで階段を駆け上がった。
怒ったり、悲しんだり。それとも無表情なのか。
置いていかれた彼女はきっと、アタシを見ていたと思う。
鏡越しでしか見ていない彼女を直接見ることが、なんだか怖くて振り返れなかった。
最初に立っていた二階の階段前まで辿り着くと、ドアが静かに閉まる音が聴こえた。
彼女はどうなったんだろう……。