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59.【空を飛ぶ船とアタシと地下の謎】


ある日の夢は……

アッチノ世界にあるお嬢様風の学校の中にいた。


挿絵(By みてみん)


絨毯が敷かれた大きな階段を下りていくと、踊り場の壁に巨大なスロットマシンのような物があった。

階段には続きがありそうなのに、木製の扉で封鎖されていた。

扉はパイ生地みたいにやたらとテカテカしている。


マシンには同じ素材の四角い大きなスイッチがあった。

押してみると、スロットっぽい部分がガラガラと音を響かせながらゆっくりと回り始める。

暫く見ているとマシンの回転が静かに止まった。

数字や絵がありそうな部分には何も書いていない。


じーっと見ていたら……

後ろから〝ガチャッ〟という物音が聴こえて、身構えながら振り向くと、さっきまで閉じていた扉が少しだけ開いていた。

隠れていた階段の続きが隙間から見える。


扉を押し開いて階段を下りていくと、大きなショッピングセンターのような場所があった。

一瞬、マネキンショッピングセンターに繋がっているのかと思ったけど、行き交っているのはマネキン人形ではなく人間だった。


階段の近くにはカフェのようなオシャレなフードコートがあって、洋服や雑貨を並べたお店のような場所も見える。

窓もないし、陽の光も感じない。

アッチノ世界の宿泊施設にある巨大なお土産屋さんにも雰囲気が似ている気がする。


大きな通りを一本挟んだ場所には、ガラス張りで中身が丸見えの部屋がいくつも並んでいた。

教室なのか塾にありそうな、白い机や椅子がたくさん見える。

行き交う人達をよく見みると、教科書やノートのような物を手に持って歩いていた。


こんな地下みたいなところに学校?


色々考えながら辺りを見回していると、さっき下りてきた階段と同じような階段が他にもあった。


挿絵(By みてみん)


ここもお嬢様風な学校の中なのかな。

でも、みんな白い制服を着てない……。


どんな場所なのか、もっと探索してみようと歩き出した時だった。


「ねぇ、キミ。ここの人じゃないでしょ?」


背後から声がした。

その言葉に緊張しながら振り返ってみると、短髪の男の人が数メートル後ろに立っていた。

教科書らしき本を脇に挟み、両手をポケットに入れて上目使いで見つめてきた。

凄い猫背。

何も答えずにいると……


「ボクにはわかるよ。キミは何も持っていない。ここの人なら手ぶらなんてありえないからね。それに知らない場所のように辺りを見渡して歩いていたし」


ブツブツ呟きながら、ゆっくりと近づいてきた。

何だか気持ち悪くて、アタシは近くにあった階段を駆け上がった。


「何で逃げるの? ねぇ、何で?」


男の人は叫びながら追いかけてくる。

アタシは振り返らずに、急いで階段を上った。

すると、最初にあったのと同じテカテカの扉がまたあった。

でも、スロットマシンは見当たらない。

後ろを振り返ると、さっきの男がニヤけた顔をしながら立っていた。

どうしたものかと見上げてみたら、扉の上の方によじ登れば通れそうな隙間が見える。


この扉を壁だと思って、前みたいにジャンプしちゃえば逃げられるかも……。


アタシは頭の中で殺人鬼が近づいてくるのを強くイメージした。

強くイメージして……イメージして……

男の人がアタシの肩に触れた瞬間――

あの時の感覚を思い出してジャンプ!


扉を引っ掻くように登れたと思ったら、

扉を通り越して天井の高さまで跳び上がり、どうやったのか建物の屋根までも通り抜けてしまった。


気が付くと建物の屋根の上に座り込んでいた。

状況を飲み込む間もなく、いきなり突風が吹いた。

どこかに掴まることも出来ず、アタシは風船のようにふわりふわりと空高く飛んでしまった。


アッチノ世界にある大草原の中を飛んでいる時みたいに、上空から下を見下ろした瞬間――

目に飛び込んできた景色に驚いてしまった。

まるで大きな十円玉のような、はたまた大きなチョコレートケーキのような、焦げ茶色の巨大な影が現れたのだ。


挿絵(By みてみん)


その巨大な影は、今飛び出してきた建物と、その周辺にある建物を繋ぐかのようにあった。

屋根に描かれていたのか、建物の造りが円形なのか、光の加減を上手く利用して出来た影なのかわからない。

でも、よく見ると、その影の中には遊園地&プールにある観覧車が見える。

他にもマネキンショッピングセンターと研究所、宿泊施設らしき建物も影の中にあった。



この四つの建物は繋がっている?

いや、他にも繋がっているのかもしれない……。


そう思いながら空を見ると、夜明け前のような色をしていた。

暗いけど、真っ暗ではない不思議な感覚。

辺りを見渡すと、真っ暗な場所と夕方の場所があって、不思議なグラデーションをしていた。


挿絵(By みてみん)


時間的に昼間の場所はなかったのか、青空の場所は見当たらなかった。

右側ばかり見ていたら、左側が何だか眩しい。

左側を見ると、また驚いてしまった。

空が明け方のように黄色っぽく光っていて、

その空の中心には見たことのない大きな豪華客船が空を飛んでいた。


挿絵(By みてみん)


まるで映画に出てきそうな大きな船。

船の下の部分は昔の船のように木造で、上の部分は近代的な造りをしていて異様な雰囲気だった。


あの船には誰が乗っているんだろう……。


そう思った瞬間、また突風が吹いて、船とは反対の方向へ一気に吹き飛ばされた。

五秒間ぐらいだっただろうか。

投げられたボールのように緩やかに下降していって、見たことのない空き地に転がり落ちた。


そこは芝生や雑草のような草が生い茂った、何だか中途半端な大きさの空き地だった。

草のおかげか夢だからか、どこも痛くはない。

ゆっくりと起き上がると、左側にさっきの明るい空が見える。

正面には青い廃墟ビルと白い布に包まれた家があった。


右側を見ると荒れ果てた雑木林があって、その先の空はセピア色をしていた。


挿絵(By みてみん)


廃墟村に繋がっているんだと思った。

後ろを振り返ると、段になった灰色の小さな坂があった。

緩やかな坂を登り切った辺りには、積み重ねられた家具や家電製品が見える。


あれはガラクタ山……?


夢で見た場所がどんどん浮かんでくる。

歩きながら坂の下を見ると、段になっている所に下水道のような謎の入り口が三つあった。

真っ暗で先がどうなっているのか全く見えない。


挿絵(By みてみん)


あの中に入ったら絶対、良くない場所に繋がっているだろな……。


そんなことを思いながら坂を上る。

ふと見上げると、遠くの方にオレンジ色の空が見えた。


挿絵(By みてみん)


あの下を目指せば、我が家に辿り着くはず。


そう思った瞬間に目が覚めてしまった。


やっぱりアタシの夢は繋がっていて、ちゃんと世界が存在するんだ。


そう確信するぐらい鮮明な夢だった。

アッチノ世界には、まだまだ新しい発見があると思った日でした。


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