52.【黒羽根さん: ピンクの猫撫で声】
気が付いたら小さなお店の中にいた。
ピンク色の壁紙、ピンク色や白の家具。
他にも女の子らしいフリフリの洋服や小物などが並んでいた。
お店の中は甘ったるい香りが強くしてクラクラする。
アタシの他に人はいないようだった。
大きなショーウィンドーの外には、緑色の扉のお店が見える。
昔の外国のような街並み。
ショーウィンドーの横には、見たことのある朱色の扉があった。
黒羽根さんがいたアンティークなお店に似ているな……
なんて思っていたら、突然扉が開いた。
アタシは洋服が掛かっている棚の後ろに慌てて隠れた。
扉から入ってきたのは、化粧も格好もやたらと派手な女の人だった。
女の人はアタシに気付かずに、出入り口の前で誰かと話しているようだった。
「ねぇ~。久々に会ったんだし、奥でお茶でも飲んでいってよー」
扉の外には男の人がいるのか掴んでいる腕が見える。
「いやいや。今日はキミの場所なんだから邪魔したくないよ。それに僕はちょっと行くところがあって」
ん? この声……。
棚の隙間からそっと覗いてみると、なんと男の人は黒羽根さんだった。
相変わらず全身黒ずくめな黒羽根さん。
「いつもそうやって言うじゃない。そんな寂しいこと言わないで〜」
クネクネ甘える女の人。
奥の扉を見ると薄いピンク色の扉があった。
前に黒羽根さんがいた時は真っ黒な扉だった。
ここを必要なモノが必要な時に使って、必要な物を持っていく場所。
使う人で奥の扉の色や形が変わる。
そう言っていたから、今は女の人が使っているんだと思った。
「ほら。お客さんもいるみたいだし。僕は失礼するよ。また今度」
黒羽根さんはアタシの気配に気づいたのか、お店を出ようとした。
女の人は振り向きもせず、お店の外で「今度は絶対よ~」とクネクネ。
笑顔で手を振りながら、ゆっくり歩いていく黒羽根さんの姿が窓から見える。
黒羽根さん気付いてくれないかな……。
なんて思って棚の横から顔を出して見ていたら、姿が見えなくなりそうな瞬間に目が合った。
「あれ?」って顔をして戻ってくる。
気づいて欲しいと思ったけど、本当に気づかれると何か恥ずかしくて、アタシはあたふたしてしまった。
すぐ横の壁にあった色んなカーテンを見て
49.【マネキンショッピングセンター : 金髪少女とオジサンの謎】の夢の中で、売られているカーテンの奥が違う場所に通じていたのを思い出した。
このカーテンの奥もそうなのでは?と思って捲ってみると壁……。
それでも壁にへばりつく様にカーテンの中に隠れて
「どこかに通じて!」とアタシは必死になって壁をさすっていた。
「やっぱりお茶する気になったの~?」
嬉しそうな女の人の声が聞こえる。
それをかわしながら
「ちょっと、ごめん。あの棚の後ろに僕の知り合いがいるんだよ」とお店に入ってくる黒羽根さんの声が聞こえた。
黒羽根さんのブーツの足音も近づいてくる。
ヤバい……ヤバい……。
焦っていたら目が覚めてしまった。
他の日にあの場所へ行ったら、違う人にも会えるのだろうか……。
凄く気になる。
そんな夢でした。