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48.【学校 : 被害妄想なオジサン】

バレンタインの時期に見たある日の夢は……


アッチノ世界の学校から始まった。

前にも見たことのある教室に一人でいた。


誰もいない……。


そう思っていたら――

突然扉が開く音がしてそちらを見ると、坊主とも角刈りとも言えない髪形をした黒縁メガネの太ったオジサンが入ってきた。

生理的に苦手な雰囲気の人だった。


え……何だろ?


警戒モードで身構える。


「まだ居残りしているのか? もう帰れよー」


アタシをじっと見つめながら、オジサンは偉そうな雰囲気で言ってきた。


なんだ、先生ね。


なんて安心して、とりあえず教室から一歩出ると……


「おい、ちょっと来い!」


またオジサンが声をかけてきた。

言われるがまま近くに行ったら、突然両肩を掴まれて、いきなりディープなキス……。


夢の中で吐き気を感じるぐらいショック。

あまりの拒否感に、アタシは仰け反るように勢い良く後ろにひっくり返ってしまった。

そんなアタシを見つめながら、オジサンがジリジリと近づいてくる。


「僕も前からキミと同じ気持ちだよ。さぁ、もっと愛し合おう!」


そんな風な言葉が聞こえてきたけど、頭が追いつかない。

本気で触れられたくなくて、アタシは近くにあった階段を駆け下りた。

前も同じ階段を駆け下りたことがある。

元彼に追いかけられる夢だった。

でも、その時の夢では下の階に柵みたいな物があって通れず、一階まで下りなきゃいけなかった。


今回、柵は無かったけど、オジサンが動けるデブと言われるタイプだったのか物凄く走るのが速い。

すぐ追いつかれそうだったから、とにかく下へ行くのに必死だった。



見覚えのある一階に到着。

前に無かった柵が階段横にある。

勢い良く閉じると鍵が掛かったような音がした。


挿絵(By みてみん)


オジサンが柵を開けている間にどこかへ逃げなきゃ……。


慌てて辺りを見渡す。

元彼に追いかけられた時は、階段を下りて真っ暗な右側に逃げた。


挿絵(By みてみん)


でも、そっちに逃げると、いつの間にかどこでもトンネルになっていて、殺人ロードに辿り着きかけたのを思い出す。


今回は左……!


そう思って廊下を走っていると、笑い声が聞こえてきた。

忍足で静かに進んでいくと、明るい場所に辿り着いた。


挿絵(By みてみん)


明るいと言っても夜の建物の中にいるみたいだった。

そこにはL字型のカウンターがあって、上下淡いピンク色の服を着た看護師風のお姉さん達が三人いた。

カウンターの外側に二人、内側に一人。

その三人しかいないのに、カウンターの外にも中にも丸椅子がたくさん並べられていた。

青い廃墟ビルのロッカーを思い出す。



ここは学校のはずだよね。

それとも停電病院に繋がっている?

それか 宿泊施設 か 研究所 か 未来ビル の地下?


なんて色々と考えていた。


この間、違う場所で似たような格好をした怖いおば様に追いかけられる悪夢を見たばかり。


あのお姉さん達も怖い人かもしれない……。


悪夢を思い出してドキドキしていたら――


「おーい。どこだぁ?」


あの太ったオジサンの声がした。

話していたお姉さん達も一斉にそっちを見た。


どうしよう……。


あたふたしていたら、カウンターの中にいたお姉さんがアタシに気付いた。


「どうしたの?」


他のお姉さん達もこちらを見る。


「いきなり気持ち悪いオジサンにキスされて……」


さっきあった事を半泣きで話すと、逃げていることを察知してくれたお姉さん。


「こっちに来て!」


カウンターの内側にある大量の椅子の奥にアタシを匿ってくれた。


「あの人がさぁ……」


お姉さん達は何事も無かったように会話を始める。

暫くすると、息を切らした呼吸音が近づいてきて、オジサンがここまで来たのがわかった。


「ねぇ。女の子見なかった?」


お姉さん達に聞くオジサン。


「いえ。見かけてないですけど」とお姉さん達は答えてくれた。


「嘘だ! 隠してるんだろ? どこだよ。僕達の邪魔をしないでくれ!」


まるで純愛ドラマのようにオジサンは暑苦しく叫んだ。


「そんなこと言われたって知らないです!」


負けずに大声を出すお姉さん。


「いいや。ここにいるんだろ?」


無理矢理カウンターの内側に入ろうとしたのか、お姉さん達が「やめてください」と慌てているのが椅子の隙間から少し見えた。

オジサンは大量にある椅子をグイグイ押してきて、隙間にアタシが隠れていないか念入りに確認している。

椅子を押された時は何とか大丈夫だったけど、椅子が動いたせいで角度によってはオジサンに見えるような形になってしまった。


こういう場合って、絶対見つかるんだよな……。


なんて思いながら、アタシは隙間から様子を見ていた。


「どこにいるんだ……寂しいじゃないか……」


ブツブツ何か言いながら、オジサンがカウンター横を通過しようとした瞬間――

やっぱり目が合ってしまった……。


「こんな所にいたじゃないかぁ!」


カウンターの中に入ろうとするオジサン。

お姉さん達が止めると、今度はぐるっと回ってカウンター越しからアタシの隠れている場所を覗き込もうとする。

近くにいたお姉さんが慌ててアタシを引っ張り出してくれた。


「この子、嫌がっているじゃない!」


アタシを抱きかかえながら、お姉さんが数歩下がって怒鳴った。


「嫌がっているはず無いじゃないか! 僕達は愛し合っているんだ。 この間だって、僕にこんな素敵な手作りチョコと愛のメッセージをくれたんだ」


手には小さなコンビニ袋を持っていた。

お姉さんと一緒に袋の中を覗くと、市販のチョコレートとシワシワの白い紙が入っているのが見える。


私は先生が大好きです。

ずっと一緒にいたいです。


そんなような文章が白い紙にずらっと書いてあった。

滲んだ汚い字。

文字を書くのは得意じゃないけど、アタシの字ではなかった。

アタシが首を振ると、お姉さん達は頷いてくれた。


「うん。見てわかるから大丈夫。手作りじゃないし、手紙も酷い。明らかにこの人がおかしいね」


「自分で自作自演? 妄想も大概にしたら?」


お姉さん達にズバズバ言われて

「うるさい!」とオジサンがプルプル震えながら怒っているところで目が覚めた。


お姉さん達が助けてくれたのは嬉しかったけど……

オジサンにディープなキスをされたのが何よりショックだった。


そんなしんどい夢でした。







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