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40.【黒羽根さん】

【黒羽根さん】と呼んでいる存在のお話。


最初のページに書いたようにアタシが見る夢にはいくつか種類がある。

日常で起きた出来事の延長みたいな普通の夢。

夢の世界が繋がっている【アッチノ世界】の夢。

それと幼い頃から時々見る黒い羽根を持った天使のような男の人の夢。

それが黒羽根さん。



幼い頃に見たある日の夢。

アタシは真っ暗な空間に閉じ込められていた。

手探りするのもためらってしまうぐらい深い暗闇の中、自分の呼吸する音や心臓の音が聴こえてくるのが怖くなった。

立って腕を広げていることさえ不安になったアタシは、その場に座って両膝に顔を埋めながら何かの歌を繰り返し歌う。


暫くすると、どこからか鼻歌が聴こえてきた。

アタシが歌っている歌。

顔をあげると、暗闇の先に三角のような形をした白い光が浮かんでいた。



引かれるまま近づいていくと、暗闇を切り裂いたような細長い隙間があって、光はそこから漏れていた。

鼻歌もその中から聴こえてくる。


恐る恐る中を覗いてみると、真っ白な部屋と大きな黒い羽根が見える。

部屋の左側にはガラスの無い小さな窓と、右側には三段ぐらいしかない横長の白い階段があった。


小刻みに動いていた羽根が突然、くるりと回ったと思ったら黒髪の男の人がだった。

黒いパンツとブーツのような靴を履いて、白いシャツを着た背の高い男の人。

腰の周りにはたくさんの鍵がついていた。

それをいじりながら鼻歌を口ずさんで、部屋を歩き回っている。

不思議だけど、なぜか怖さよりその姿が綺麗に思えてアタシは見入ってしまった。


ふと気がつくと、いつのまにかアタシも真っ白な部屋の中にいた。

男の人は階段に座ってアタシを見つめている。


どのぐらい見つめられていただろうか……。

突然、男の人は立ち上がって、ゆっくりとアタシに近づいてきた。

さすがに少し警戒していたら、ギューッと抱きしめてくれた。

ゴツゴツした体からは独特な香りがする。

昔、伯父に月下美人の花を見せてもらった時、花の香りが黒羽根さんの香りと似ていると思った。


見上げると長い指に黒い石のついた大きな指輪が見えて、視界を隠すように男の人がアタシの頭を撫でた。


「今までツライ思いをさせたね。もう大丈夫。僕がいるから。ちゃんと迎えに行くから良い子で待ってて。ね? 約束だよ」


そう言われて目が覚めた。


この夢を見た時はサンタさんみたいな人だと思っていた。

大きくなってから友達に話すと

「迎えにくるって……そんなの死神じゃないの? 怖っ」と言われて何も言葉が出なかった。



幼い頃は黒羽根さんの夢をよく見ていた。

慣れてくると真っ白な部屋に入れてもらって、階段に座りながら色々な話をした気がする。


幼い頃は同じ夢を何度も繰り返して見ていたけど、段々と黒羽根さんの夢を見られなくなった。

最近は真っ白な部屋の夢なんて全然見ていない。


いつも黒羽根さんとの夢から目が覚めると、内容は覚えているのに顔は何となくしかわからないし、何て呼び合っているのかも思い出せないぐらい曖昧。

だから、アッチノ世界とは別の夢だと思っていた。

でも最近になって、アッチノ世界の夢に似たような人が出てくるようになった。

真っ白な部屋ではないけど、黒羽根さんの夢を見ることも時々ある。

黒羽根さんがアッチノ世界の住人なのかわからないけど、アタシにとって凄く特別な存在。

きっと幼いアタシが大人になっても、ずっと恋とか憧れとか抱いちゃってる相手なんだと思う。

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