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38.【カラクリ屋敷 : トマトの唇】


大草原の奥の方に【カラクリ屋敷】と呼んでいる大きな家がある。

外観も内装も洋風で、いつも新築のように綺麗な建物。


名前のままだけど、この家の中には色んなカラクリ仕掛けがある。

でも、どんな仕掛けだったかは思い出せない。

薄っすら覚えているのは……

屋敷の謎を解きながら隠されたお宝を探したり。

かくれんぼみたいに家の中に隠れて、見つからないように逃げ回ったりした夢。

他にも何かに追いかけられている時に辿り着いたり。

カラクリ屋敷はアッチノ世界の夢に結構出てくる気がする。


誰もいないのかと思えば、女の人が暮らしていたこともあったし、オネエ風な男の人がいる時もある。

その時見た夢によって住んでいる人はバラバラらしい。


とても綺麗な家だけど、まだまだ謎が多い場所。



そんなカラクリ屋敷から始まったある日の夢は……

見知らぬ友達の家に招かれて何人かで向うと、そこは【カラクリ屋敷】だった。


挿絵(By みてみん)


「昔、父が買った家をそのまま譲り受けたの」


そう説明しながら、友達は家の中を案内してくれた。

確かに家具には布が被せられていて、誰も使っていない雰囲気……。

でも、荷物も整理されていないような状態で招待されたことに、アタシは違和感を持っていた。


モヤモヤしながら部屋を見渡していたら、見覚えのあるクローゼットを発見。

前に見た夢では開けなかったから、アタシは好奇心でちょっと開けてしまった。


クローゼットの扉が空いた途端、中から緑色の何かが勢いよく飛び出してきた。

よく見ると、緑色の頭と大きな唇を持った植物のような生き物だった。

有名なゲームの敵キャラにでもいそうな姿。


アタシも他の人達も驚いていたら、友達が叫んだ。


「それはトマトの苗なの! じっとしていれば勝手に外へ出て行くから……大丈夫」


えっ、トマト!?


混乱しているみんなを横目に、トマトの苗は〝キィーキィー〟鳴きながら階段を下りていった。

外に出て行ったような音が聞こえて窓から見てみると、花壇みたいな場所の前にトマトの苗がいた。

地面に頭を近づけたかと思ったら、凄い勢いで穴を掘って植わった花のように自ら土の中に入ってしまった。



「お騒がせしてごめんなさい。私達も下へ行きましょう」


みんなザワザワしている中、信じられないぐらい冷静な友達。

ちょっと怖いなと思いつつ一緒に階段を下りると、そのまま外に出た。

玄関の近くには半円形の大きなベンチがあって、友達はみんなをそこに座らせた。

恐る恐る振り返ると、さっきのトマトの苗が結構近くにいた。

でも夢だからか、みんな気にもせず楽しそうに談笑している。

どんどん話が盛り上がっていく最中、家主の友達が突然話を中断した。


何事かと思ったら、

「ここで話していても何だか味気ない気がするの。みんなで近くのお店に呑みに行きましょ!」と興奮気味でベンチから立ち上がった。


それを聞いたみんなも「行こう! 行こう!」と大騒ぎ。


こんなに招待されていたの? と驚くぐらいの大勢を引き連れて、友達はどこかへ行ってしまった。


その様子に呆然としていたら、静かそうな女の人が隣に座っているのに気がついた。

アタシの顔を覗くように見ている。


「私、あの子との飲み会は苦手なんだよね。だからさ、私の代わりにAちゃんが行ってきてくれない? Aちゃんの可愛いチビちゃんは私が子守してるから。たまには気にせず飲んできなよ!」


そんな風なことを言って、女の人はニンマリ笑った。


「え? 待って。アタシって子持ちなの?」


言われたことにビックリしていたら……


「そう言ってくれてるんだから、お言葉に甘えて俺らも飲みに行こうよ」


いきなり声がした。

慌てて振り向くと、逆隣にヒゲ面で目つきの悪そうな男の人が座っていた。


誰ー? あなたが旦那さんなの?


更にビックリ。

頭がついていかない。


見たことあるような無いような顔してるなぁ。


思い出そうと考えていたらーー


「じゃあそういうことで! いってらっしゃい」


女の人はニコニコ笑いながら、どこかへ去ってしまった。


まぁ、夢だから何でもいいか……。


そう思ったアタシ。


「じゃあ、アタシ達も行きますか!」


旦那さんらしき男の人に声をかけると、男の人は無言でアタシを見つめる。


「ん? どしたの?」


見つめ返すと、いきなりキスをされた。


びっくりして思わず周りを見渡すと――

人は見当たらないけど、トマトの苗がうっとりした雰囲気でこちらを見ている。

トマトの苗だけど、見られているのがなんか恥ずかしい。


「ちょっ……トマト見てるからやめてよ!」


男の人はアタシの言葉を無視して、またキスをしてきた。

何度かキスをしていたら

「トマト見てみろよ。 俺らを見て顔が赤くなってきた」と男の人はニヤニヤ笑った。

その顔は変態にしか見えなかった。


気になって振り向くと、さっきまで緑色だったトマトの頭っぽい部分が膨らんで、少しずつ赤くなっていく。


「もうすぐ完熟だな! 飲み屋に持って行ったら、みんなでトマトのフルコースが食えるぞ」と嬉しそうな男の人。


何言ってんの。この人……。


複雑な気分になって何も言えずにいたら、男の人が今度はちょっと深めなキスをしてきた。


驚いたけれど、されるがままキスをしていると……

ドサッと重たいものが落ちるような、不穏な音がした。

恐る恐る振り返ってみると、大きく真っ赤になったトマトの頭がもげて地面に転がっていた。

巨大な唇はリップグロスを塗ったようにテカテカしている。

転がった状態で、キスをするように口を動かすトマトを見てアタシは思わず絶句。



「よし! いい土産が出来たな」と笑う男の人。


こんなの食えるか!と思った瞬間、目が覚めた。





色々な意味で恥ずかしい夢でした。

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