22.【停電病院】
墨色ワールドにある【停電病院】は名前の通り、停電したかのように真っ暗な病院。
ある日の夢は……
ナースステーションから始まった。
深夜なのに看護師さんと二人で話をしていた。
「着替えてくるね」
看護師さんは友達なのだろうか。
そう言うと懐中電灯を持って更衣室に向おうとした。
夜の病院……。
「一緒に行く!」
アタシは一人になるのが怖くなって、慌ててついて行った。
振り返ると、出てきたナースステーションの電気が消えて真っ暗。
看護師さんに言おうとしたら、いつのまにか置いていかれそうなぐらい随分先にいた。
アタシは小走りで追いかけたけど、看護師さんは全く振り向いてくれない。
「ナースステーションの電気が消えちゃったよ?」
後ろから叫んでみたけれど
「……そうなんだ」
あっさりな返事だけ残して、止まりもせずにスタスタと先へ行ってしまう。
それでも話しかけると一応は答えてくれる。
けれども、こちらを振り向くことは無い。
更衣室に行けば嫌でも顔を見て話せるだろう……。
そう思って付いて行こうとした瞬間――
目の前の映像が真ん中からスパンと切れて、パラパラと視界の下へ落ちていく。
まるでピンと張った映画のフィルムをハサミで切ってしまったみたいだった。
切られてパラパラと落ちていく目前の先は真っ暗闇。
「このまま見ていたら、またいつものように可笑しな夢を見るところだったね。次はもっと良い夢を見られるようにしてあげる」
突然、凄いことを言い出す男の人の声が聞こえてきた。そのまま違う夢を見た気がするけれど……
起きたら全く思い出せなかった。
こんなことは初めてだったから、目が覚めた後も凄く不思議な感覚だった。
あの声はきっと黒羽根さんかな。
そう思った。
黒羽根さんのお話はまた後ほど……。