20.【学校】
アッチノ世界には学校もある。
色んな建物をくっ付けたような巨大な学校。
それぞれの建物は、今までアタシが通っていた学校の校舎に似ている。
小学校に似ている部分は、教室にも廊下にも誰もいない。
灰色のツルツルとした廊下を歩いて行くと、途中から茶色のフローリングに変わる。
フローリングは中学校の廊下で、変わり目には階段がある。
その階段は下の階へ行きたくても、なぜか元いた階に戻ってしまう。
何度挑戦してもダメで、半分ヤケになって階段を下りずに上ってみたら、違う場所に出たことがある。
気紛れな階段だと思った。
中学校に似ている部分の廊下を歩いていると、教室から声が聞こえてくる。
声は聞こえるけれど、教室の扉を開けると誰もいないことが多い。
でも、極まれに人が現れる時もある。
けれど、ここで会えてよかった!なんて思う相手との出会いは非常に少ない。
フローリングの廊下を真っ直ぐ進むと、突き当たりになっている。
突き当たった横には階段があって、下りていくと左右と正面、三つに分かれた廊下が続いている。
前にその階段を使った時、下りてすぐの場所に知らない男の人が立っていたことがある。
「危ないから、この階段は使ってはいけない」
そう言うとどこかにいなくなってしまった夢だった。
廊下を右に行くと、先が見えないほど真っ暗になっている。
その廊下を少しずつ進むと、徐々に床が砂利道に変わっていって、いつの間にか【どこでもトンネル】に繋がってしまう。
どこでもトンネルの先は殺人ロードだから、確かに危険な場所なのかもしれない。
反対の左側の廊下は、学校というより病院のような場所に繋がっていた。
まだよくわからない未知の場所。
残った正面は渡り廊下になっている。
その廊下はちょっと変わっていた。
普段はなんともない廊下なのに、たまに廊下の一部がエレベーターホールになっている時がある。
アッチノ世界にあるエレベーターにいい思い出はほとんど無いから、アタシの中では遭遇したくない物の一つ。
渡り廊下を進むと、また階段が現れる。
その階段を上ると、今度は高校に似た場所に出る。
見たことのない吹き抜けと、吹き抜けを囲むような形の廊下。
似ていても現実とは違う校舎の景色に、毎回違和感を覚えてしまう。
わかり難くいし、センスの欠片も無い図で申し訳ないですが……夢の中で見たのは図のような感じ。
高校の校舎部分には人がたくさんいる。
図にある吹き抜けの周りや、矢印の方向に続いている廊下にも生徒がたくさん立っている。
文化祭をやったり、みんなでスポーツをしたり、学校らしい行事の夢を見ることが多い。
敷地内には、この校舎の他にお嬢様学校みたいな校舎と寮がある。
校舎と寮の外観も、生徒が着ている制服も白色ばかり。
建物の中は対照的な焦げ茶色の木造作りで、アンティーク調の家具などが置かれている。
とてもお洒落な建物のイメージがある。
敷地内には他にも……
森林に繋がっていると思われる樹木の茂る広い校庭。
スポーツ大会などの行事に使われていた大きな競技場。
室内に大量の落ち葉が敷き詰められている真っ暗な謎の体育館。
その落ち葉で出来た緩やかな丘を下ると、いつの間にか外の広場に出てしまう。
何とも不思議な場所。
そんな学校には、いくつかの門がある。
正確な数と位置はまだよくわからない。
門を出て少し歩くと小さな駅があり、それに乗って移動する夢を見ることがある。
校舎の窓から見えるのは都会の街並み。
校舎の門から見えるのは田舎の田園風景。
同じ敷地内にいるはずなのに、全く違う場所に思える。
それぐらいアッチノ世界の学校は、見える景色もコロコロ変えてしまう不思議な場所。