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130.【電脳と実証実験】


ある日の夢は……


バスルームがある狭い部屋から始まった。


そこには少し見上げるぐらいの大きさの何かがあった。‬

その何かは砂時計みたいな形をしていて、カゴのようにツタとかワラみたいな素材で編まれているように見える。

暫くすると、内側からリーンリーンと鈴のような音が鳴り始めた。

その音を聞いていたら……


この部屋の外に怪物がいる。

これは怪物が近くにいると鳴るんだ。


なぜかそう思った。‬


一つだけある扉を見ると少し開いている。‬

慌てて閉めようとしたら、‬扉の前にピンク色の土偶のような何かがいた。‬


入られないようにドアノブを引っ張り合っていたら、ドアの一部に穴が空いていたのに気がついた。‬

その穴から我が家の猫達がメリメリと無理矢理入ってきた。‬


「魂の半分は取られちゃってるんだから、残りの半分はちゃんと自分達で持って逃げるんだよ!」


そう猫達に言ってアタシがパッとドアノブを離すと、ピンク色の怪物は後ろにひっくり返った。‬

その隙にアタシは走って部屋を出た。‬

部屋の先は夢でよく見る学校だった。‬


この階段をおりて、あの廊下をまっすぐ進んだら外に出られる? こっち?


悩みながら走っていたら、まっすぐな廊下に出た。

かぜか所々に卓球台みたいな台が置いてある。‬


その台を避けながら走っていると後ろから大きな音して後ろを見ると、極端に角が長いサイがこちらに向かって走ってきた。

よく見ると後ろにもう一頭いる。


二頭のサイはツノを突き上げるような仕草をしながら突進してくる。

夢だから‬か、ゲームのようにアタシは飛んだり跳ねたり華麗にサイを避けながら逃げていた。

でも、着地する場所をミスってしまった。

サイの角がお尻に刺さると思って、庇おうと反射的に手を後ろに向けた時だった。

サイの角が手に触れて、簡単にポロッと取れてしまった。

そして取れた角をアタシは手で掴んでいた。

グッと持った瞬間、サイがパッと消えた気がして思わず立ち止まって見てみると、やっぱり二頭のサイはどこにもいなかった。

あんなに走ったのに、見える廊下はさっきと同じに見える。


進めない……?


そんなことを思いながら手に持っていた角を見てみると、いつの間にかプラスチックの野球バットに変わっていた。


バットの先の方にトラのようなオレンジ色のドット絵があった。

それを見ていたら、爪で何かを引っ掻くような音がして前を見ると、サイが走ってきた方からまた何か走ってきた。

今度は大きなトラ。

逃げる間もなくトラが近くまで来て‬しまった。


ウワァーと飛びかかってきたので、アタシはバットを持ったまま顔とか頭を庇うような動作をした。

バットの先がトラの体に当たったのが一瞬見えた。

同時にトラが消えたような気がして前を見たら、サイの時と同じでやっぱりいない。‬


消えた……?


そう思いながらボーッとしていたら、また同じ場所からトラが猛スピードで走ってきた。

アタシはあたふたしながら、バットを前に突き出して身構えてみた。‬


さっきと同じようにトラが飛びかかってきて、首の下のモサモサの辺りにバットが触れた。

その瞬間、トラの体がパッとドット絵になって、ファサと落ちるように消えた。‬


呆気にとられていたら‬、ボールを投げ込まれるように次々とトラが走ってくる。‬

それをどうにかバットで触れてかわしながら、後ろを見てみると‬、数メートル先にオレンジ色の何かが見える。


半透明な四角い何か。さっきは無かった。‬

奥には部屋があるように思えて、アタシはそこを目指して走った。‬


目の前までたどり着いてよく見てみると‬、半透明の四角い物体はオレンジ色をした光の膜ような何かだった。‬

やはり奥には部屋が見える。‬

バットの先で光に触れようとした時‬、後ろからトラの足音が聴こえてくるのがわかって、アタシは慌てて光の先へ走った。‬

オレンジ色の光が安全かもわからないし、トラも怖い。‬


でも、トラにかじられるよりはマシ!


そう思って光の膜を駆け抜けると、アタシは躓いて床に手をついてしまった。‬

そのまますぐに後ろを振り向いてみると、トラはいなかった。‬

バットを握ったままフリーズしていたら上から声がした。‬


「実証実験お疲れ様でした」


見上げると、眼鏡をかけた白衣姿の男の人が立っていた。‬


その人の背後には、個別塾とか事務所に使われそうな部屋が見える。‬

男の人はバットを拾いながら、アタシを立ち上がらせた。‬


「実証実験?」


アタシがそう呟くと‬男の人はにんまりと笑った。‬


「はい。貴方様の場合は、対象者Aの貴方様が仮想空間において経験した事が、仮想空間外にいる対象者Bの方にどのような影響を及ぼすかという実験です」‬


「仮想空間?」‬


「はい。貴方様と対象者の方は電脳で繋がっています(又は共有)。お忘れですか?」‬


「電脳…?」‬


「えぇ。電脳です」‬


男の人は自分の頭を指先でトントンしながら、またにんまりと笑った。‬


左側を見ると、映像が流れているテレビモニターみたいなのが二台あった。‬

片方には結婚式の披露宴みたいな場所で、黄色いドレスと紺色のスーツを着た男女が楽しそうにピアニカを吹いている。

もう片方のモニターには、髪の長い女の人が山道みたいな場所をトボトボと歩いている姿が映し出されていた。


「あぁ。この二組も同じく実証実験の対象者の方達です。こちらのお二人はご夫婦で、男性の方は目が見えません。大事な日にお二人で楽器を演奏してみたい……というご相談をお受けしたので、電脳を介して奥様の視界を共有し、お二人で楽器の練習をして頂きました。これは披露された時の映像です」


そう言って男の人は、指先でクルッと丸を描くように片方のモニターを指差した。


「こちらの女性は……遠く離れた場所にいる対象者AとBのお二人が、お二人の情報だけで会えるまで、どのぐらいの情報と日数を要するのか……という実験です」


そう言い終わると男の人は満足気な顔でこちらを見た。


アタシが対象者Aなら、対象者B誰なのか……。

それを聞く前に目が覚めてしまった。


得体の知れない何かに見つかる、追いかけられるという事が何だか凄く怖い夢だった。


〝実験〟〝仮想空間〟という言葉を聞くと

125.【仮想現実:先生と少女達】の夢と何か繋がりがあるような気がしてしまう。





そんな夢でした。




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