13.【迷路街】と【商業ビル地帯】
アッチノ世界の夢は繋がっていて、
映画のセットのように、同じ場所で色んな夢を見る。
その中の一つに【迷路街】と呼んでいる場所がある。
迷路街には主に、不可思議な住宅と小さなお店が所々に存在している。
道は迷路みたいに入り組んでいて、迷ってしまう度に様々な建物やお店に辿り着く。
良い人に出会う時もあれば、悪い場所に引き寄せられることも。
その時の運で決まるクジ引きのような街。
【迷路街】の近くに、【商業ビル地帯】と呼んでいる場所がある。
ここは名前の通り、商業ビルのような建物が迷路のように幾つも隣接している。
アッチノ世界の人口はとても少ない。
その中でここは、人が一番多く歩いている場所だと思う。
日本の駅ビルのように、パチンコやゲームセンターみたいなお店も並んでいるけれど、それよりも出店が目立つ。
なんて言うか、外国映画に出てきそうな……。
ちょっと間違っちゃった日本。
そんな街並みに思える。
アッチノ世界地図では離れて見えるけれど、迷路街と商業ビル地帯は凄く近いはず。
言い切れないのは、商業ビル地帯という場所がとても奇妙だから。
迷路街を歩いていたのに、気が付いたら商業ビル地帯にいた――
なんてことはよくある。
ある日の違う夢では、端と端ほど遠い場所にいるはずなのに、扉を一つ開けると商業ビル地帯――
なんてことも。
夢なんだから、あちらこちらに移動できるなんて誰でもよくあることだと思う。
でも毎回、変な感覚に支配される。
まるでサメのように音も無く近づいてきて、
商業ビル地帯というテリトリーに誘い込まれているような気がしてならない。
ビルや路地の一つ一つにザワザワと、自我のようなモノを感じる。
生きている場所なのかもしれない。