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124.【トウモロコシの選別と不思議な大通り】


ある日の夢は……


見知らぬ部屋から始まった。

なぜか部屋中にポップコーンとポップコーンになる前のトウモロコシの粒が溢れていた。


挿絵(By みてみん)


それに埋もれるように人もたくさんいたけど、一人が何か声をかけるとみんな一斉に部屋を出ていった。

部屋に残ったのはアタシと三人の男性。

よく見ると、解散した男性アイドルグループにいた人達だった。

解散してからは、よくこの三人でCMとかに出ている気がする。


一人がアタシに気がついて近づいてきた。


「これって……」


アタシはポップコーンを見た。


「あぁ、これね」


男性はニカッと笑いながら、ポップコーンとトウモロコシの粒を見せるように両手の指先で持った。


「こういう蝕んだ傷もこんな風に弾けてしまうとわからなくなる。そうなる前に僕達は少しずつ選別しているんだよ」


そう言われてトウモロコシの粒をよく見てみると、虫歯のように黒くなっている部分があった。


「ね? キミも今日はもう帰っていいよ。また呼ぶから」


そう言うと男性は他の二人がいる方へ行ってしまった。


アタシは部屋を出て、通路を挟んだ先に見える狭い空間に入った。

中には縦長の小さなロッカーがズラッと並んでいて、全部の扉に水玉のような海の波のような水色の模様が描かれていた。


挿絵(By みてみん)


扉にはプッシュボタン式の鍵があって、慣れた感覚でボタンを押そうと思ったけど思い出せない。


「あれ、ど忘れした……」


夢なのに、ほんとにど忘れしたような不思議な感覚。

少し悩んで、ふっと番号を思い出せたのに、起きたら忘れてしまった。


夢の中のアタシは思い出した番号を素早く打ち込んで、扉を開けた。

ロッカーの中には、アクセサリーとかを入れそうな小さな巾着袋と天然石のような石が数粒入っていた。


全部取り出して、隣のロッカーも開けようとプッシュボタンを押した。


『06』


この数字だけは覚えている。

全部押す前に、この二つの番号だけでロッカーが開いてしまった。


「ん? 壊れてる?」


気になりつつもロッカーを開けようとした時だった。


「ちょっとお姉さん!」


そんな風な声が聞こえて振り返ると、背後に中年のおじさんがいた。


「さっきのあれ! あんなんじゃ俺困っちゃうよ」


そう言われて、なんのことか考えようとした瞬間……


「はいはい。そういう話は俺が聞くから」


突然、誰かがアタシとおじさんの間に無理矢理入ってきた。

さっきの三人とは違う男性。

顔を見ると知り合いに似ていた。


その男性は開けたロッカーの扉に寄りかかるように手を置くと、見えないように反対の手で「行って行って」と合図してくれた。

アタシはその人の背中に向かって軽く会釈をして、もう一つある出入り口から通路に出た。


通路に出ると、目の前に下の階へ行く階段があった。

その前になぜか虚無僧の格好をした人が立っている。


なんでこんな所に……?


そう思いながらアタシは足早に虚無僧の前を通り過ぎて、階段を下りた。

階段を下りると、すぐ先に外に通じていそうな両開きの大きな扉があった。


挿絵(By みてみん)


扉にはボコボコした曇りガラスがはめ込まれていて、扉の上にも同じ曇りガラスでできた小窓があった。

その二箇所から降り注ぐように外の光が中へ入っていた。

その光を浴びるように、扉の前には黒髪の女の子達が三、四人立っていた。


「もうあれから24時間経っちゃってるんだー。あっという間。お腹空いたなぁ」


「一日で◯◯箇所、連続で演奏してますもんね」


そんなような会話が聞こえてきた。

演奏者なのか、みんな楽器のケースのような物を手に持っている。

光に照らされた女の子達の白い肌や、透けて見える髪が凄く神秘的で綺麗だった。

日本人のように見えるけど、違うような……。


107.【見知らぬ手紙と女子高生】の夢や

121.【大きな本屋:小説家と女の子と視えるおじさん】の夢に出てきた女の子に少し雰囲気が似ていた気がする。


アタシは女の子達の横をゆっくりと通り過ぎて、扉から外に出た。

外に出るとすぐ目の前は大きな通りになっていた。

たくさんの人が歩いている。

夕方なのか陽の光は少しオレンジがかった色をしていた。

晴れていて、風が心地良い。


通りにいる人達はみんな不思議なぐらい楽しそうにしている。

その表情を見ていると、アタシも何だか楽しい気持ちになった。

それぐらいポジティブなオーラが通り全体に溢れ出ているようだった。


挿絵(By みてみん)


ふわふわした気持ちで歩いていると、たくさんの人が立ち止まって何かを見ている。

アタシも覗いてみると、着物を着た人が道路に向かってゆっくりと歩いてきた。

両手を前に重ねて、少し伏し目がちに歩いている。

その後ろから車のような乗り物が着物の人に合わせて、ゆっくりと走ってきた。

三輪自動車をオープンカーにしたようにも見えるし、バイクとオープンな座席を縦に連結させたような……

見慣れない形をしていた。

テッカテカの黒塗りの車体と革張りのシート。

いかにもな高級車に見える。

その乗り物に乗っていたサングラスの男性も、得意げな雰囲気で運転していた。


はぁー、高級なお店はお見送りも違うんだなぁ。

ちょっとした花魁道中みたい……。


そんな風なことを思いながら、アタシはまた歩き始めた。


確かここをずっと道沿いに歩いていけば、あの駅に繋がっているんだっけ。


そう思った瞬間、目が覚めた。

久しぶりに平和な夢を見た気がする。

いつものように起きてすぐに夢を繰り返し思い出していたら、111.【異世界:世界史の先生とフミカちゃん】で聞いた話が頭に浮かんだ。


「私達は人間と同じように生活しながら、必要な存在を選出している」


この言葉。

あの解散した男性アイドルグループの人達も選別しているのはトウモロコシの粒ではなくて、世界史の先生と同じことをしているんじゃないか?

そんな妄想をしてしまった。


繋がりがあるのかはわからないけど。

あの通りの楽しそうな雰囲気は凄く心地よくて、また行ってみたいと思った。


そんな夢でした。


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