109.【 象使いの預言者・◯◯と◯◯ 】
ある日の夢は……
見知らぬ場所から始まった。
目の前には大きなテント。
近付いてみるとサーカス団のテントに見える。
アタシはテントの中よりも裏側が気になった。
サーカスの関係者しか入れないような場所。
団員達が生活していそうな小さなテントや何かの道具が無造作に置いてある。
その間を縫うように進んでいくと、奥に巨大な白い象が立っていた。
綺麗に着飾っているせいか神秘的な雰囲気。
ずっと見ていると時間がゆっくり流れていくような不思議な感じがする。
ゆらゆらと目線を動かした先にテントではない小さな小屋があった。
吸い寄せられるように中へ入ってみると、象使いみたいな格好をしたお爺さんが背を向けて立っていた。
お爺さんは壁に『6.8……8.1……』とか、小数点つきの細かい数字をたくさん書いていた。
「彼は預言者(又は予言者?)なんですよ」
背後から声がして振り向くと、お爺さんと同じような格好をした若い男の人が立っていた。
「預言者?」
「はい。普段は象使いですが、凄腕の預言者なんですよ。でも、彼が決めた相手にしか話さない。だから、彼を知っている人は少ないんです」
そう男の人が言い終わると、同時にお爺さんが振り向いて異国の言葉で何かを話し始めた。
「私はあなたがここへ来ることを知っていた。と言っています」
若い男の人は慣れた感じでどんどん訳してくれた。
「壁に書かれた数字はあなたの◯◯と◯◯の数列を書きだしたものだそうです」
男の人が言うのに合わせてお爺さんは壁を指差した。
◯◯と◯◯を言われた瞬間、お爺さんが本当に預言者なんだと物凄く納得して興奮するような数字だった。
それなのに起きたら忘れてしまった。
「この数字は今後必ず必要になるものだから、全てメモをしておいた方がいいそうです」
そう言いながら男の人は紙とペンを渡してくれた。
アタシは黒板を急いで書き写すように紙に数字を書いていったけど、長すぎてなかなか書き終わらない。
そんなアタシのことは気にせず、お爺さんはまた壁に何かを書き始めた。
また数字だと思ったら、よく見ると『硯』と『松』という漢字。
「スズリとマツ?」
「はい。この字が名前に入っている人は、あなたにとって良くない人なので、縁を結ばない方がいいそうです」
「そうなんだ……」
また妙に納得していたら、数字を全部書き終える前に目が覚めてしまった。
お恥ずかしいけど、現実の世界のアタシは『硯=スズリ』という字に馴染みが無いので、何と読むのかわからなかったと思う。
でも、不思議な事にアッチノ世界のアタシは硯という字が読めた。
本当にあの字がスズリと読むのか気になって、起きてからすぐに検索してみたら合っていたので驚いた。
『松』は苗字にありそうだけど、『硯』という字はいないんじゃ?と思って調べたら、『硯吾 けんご』とか『硯司 けんじ』という名前の方もいるとか。
二つの漢字も気になるけど……
夢の中なのに鳥肌が立つぐらい、凄いと思わせてくれたあの数列。
その感覚だけは覚えているのに、何を表しているのか全く思い出せない。
◯◯と◯◯は一体何の数列だったのか。
気になる夢でした。