婚約破棄騒動の外側で
私アラミナ・ラットリアは不安だった。
貴族学院近くのカフェで婚約者であるイーサ・ランブスを待っていた。
彼から『大事な話がある』と言われこのカフェにいる。
(もしかして、私も婚約破棄されるのかしら……?)
最近、貴族学院では王太子様と平民出身の男爵令嬢の仲睦まじい姿が見かけられている。
王太子様には当然だが婚約者がいる、公爵令嬢のクローヌ様だ。
ただ、王太子様とクローヌ様の仲が良いか、と言えばそうではない。
私の目から見れば王太子様が一方的にクローヌ様を嫌っている様に見える。
クローヌ様は私みたいな貧乏男爵家にも優しく分け隔て無く接してくれる。
私とイーサは当然クローヌ様支持である。
ただ、その話が直接関係あるか、と言えば関係無い。
イーサも我が家同様貧乏男爵家なので件の男爵令嬢のターゲットにはなっていない。
ただ、この数ヶ月イーサは裏でコソコソと何かをしている。
私の知らない人と話し込んでいたり、会う時間が少なくなっている。
偶に会うと疲れたような顔をしている。
私が『どうしたの?』と聞いたら『ごめん、色々忙しくて……、必ず話すから』と曖昧に濁している。
色恋沙汰では無い、と思いたいけど不安な気持ちはある。
「ごめん、待たせたね」
イーサがやって来た、でも一人じゃなかった。
隣には見知らぬ男性がいた、……誰?
「いいえ、そんなに待ってませんから……、あの、そちらの方は?」
「あぁ、彼はシュラット帝国の留学生でエチートだ」
「はじめまして、エチート・クライバスと言います。 帝国の皇太子殿下の付き添いでこちらに来ています」
そういえば皇太子殿下も留学生として貴族学院に来ていたのよね。
あんまり話題になっていなかったから忘れていた。
「はじめまして、アラミナと申します。 それでイーサ、大事な話って?」
「うん、実はね……、エチートと一緒に帝国で商売をやる事にしたんだ」
……はい?
一瞬、何を言ってるのかわからなかった。
説明によると、エチートは大きな商会のご子息で留学から帰って来たら独立するそうだ。
今回、留学に来たのはそのパートナーを見つける為、そして御眼鏡にかなったのはなんとイーサだったのだ。
イーサはコミュニケーション能力が高いし農作物の知識がある、商売人としての素質があるらしい。
イーサは男爵家の次男坊で跡継ぎでもなく将来に不安を感じていたのでこの話に乗り気になったらしい。
忙しかったのはその商売の準備とご両親との話し合いとか移住の手続きの為だったらしい。
「それでアラミナ、良かったら一緒に来て欲しい」
「えっ!? 私も? エチートさん、よろしいんですか?」
「勿論です、イーサの話ではアラミナさんは経理に得意と聞きました。 こちらとしては即戦力ですよ」
確かに私は実家のやりくりはしていたけど……。
私も跡継ぎは兄がいるしこのままイーサと結婚しても領地の一部で静かに暮らしているかもしれない。
「わかりました、私もエチートさんの元で働かせていただきます」
「ありがとうございます。 ではアラミナさんの移住の手続きを進めさせてもらいます」
両親や兄は私の決断に賛成してくれた。
貴族学院は卒業単位は取っていた為、卒業の季節より1ヶ月早く卒業した。
私とイーサはすぐに結婚して帝国に引っ越した。
最初の頃は色々大変だったけど私達が立ち上げた商会は1年ぐらいで軌道に乗り故郷にいるよりも豊かな生活をしている。
実家にも仕送りをして喜ばれている。
そんなある日、クローヌ様から手紙が届いた。
「あら、卒業記念パーティーで王太子様から婚約破棄を言われたそうよ」
「うわぁ……、ついにやらかしたか」
「公爵様が怒って王族に抗議してずっと話し合いがあったんだけど平行線のままで遂に帝国に来る事を決断したらしいわ」
「まぁ、そうなるだろうなぁ……、もしかしたら俺達も巻き込まれていた可能性もあるかもな」
「そうね、まぁイーサは浮気なんてする勇気は無いと思うけど」
「無いね! どんなに地位が高くても美人でも俺にとってアラミナが一番だから!」
そう言い切られると恥ずかしいけど嬉しい。




