第7章 封印の真実
第一節 目覚め
白い天井。
ぼやける視界に光が差し込み、レイはゆっくりと目を覚ます。
「……ここは……?」
医療棟の静寂。
隣の椅子では、ナツキが腕を組んだまま眠っていた。
机の上には冷めたコーヒーと、彼女が書いたメモ。
“目を覚ましたら呼んでね。ずっとここにいるから。”
扉が開き、叔父・神崎レンが入ってきた。
「よう、やっと起きたか。二日も眠ってたんだぞ。」
レイは体を起こそうとするが、重くて動けない。
「……俺、倒れたんですよね。」
レンは黙って頷き、モニターを点けた。
そこには、レイの体内を映す特殊な映像――
心臓の中心に鬼気が渦を巻き、それを光の紋様が抑え込んでいる。
「お前の中に“封印の反動”が起きた。
鬼の血と人の血のバランスが崩れたんだ。」
「封印の……反動……?」
「そうだ。お前の母親、神崎ユキが遺した“封印印”が、
アヤとの接触で反応した。……お前の力は、両親の想いが作ったものだ。」
レイは拳を握り、静かに言った。
「母さん……俺を、守ってくれてたんだな。」
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第二節 ナツキの涙
その時、扉が開きナツキが駆け込んでくる。
「レイっ! 本当に……よかった……!」
その声は震えていた。
「ごめん、心配かけたな。」
「……怖かったんだよ。もう二度と、あなたが戻ってこない気がして……」
レイは微笑み、彼女の手を握る。
「俺は死なない。まだ、確かめたい真実がある。」
ナツキは涙を拭いながら頷く。
「どんなことがあっても、私はあなたの隣にいる。
あなたが人間でも、鬼でも、関係ない。」
その瞬間、レイの胸の奥で“封印”が微かに脈打った。
まるで彼女の言葉に呼応するように――。
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第三節 封印室
翌日。
総裁の命で、レイはホワイトホース本部地下にある「封印室」へと案内された。
そこには、鬼と人の歴史を刻んだ石碑、
そして光に包まれた二つの影――
封印されたレイの両親、神崎アスラとユキの姿があった。
「これが……父さんと母さん……」
光の中から、かすかに声が聞こえる。
「レイ……“境界”を越えるな……」
「鬼と人の均衡が崩れれば、世界が……闇に呑まれる……」
レイが一歩踏み出した瞬間、風が爆ぜ、光が弾けた。
「レイ、下がれ!」レンの声が響く。
レイは膝をつきながら、涙をこぼした。
「父さん……母さん……“境界”って何なんだ……?」
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第四節 黒い夢
その夜。
レイは夢の中で、黒い霧の中に立つ姉・アヤと再会する。
「……姉さん。」
「ようやく、封印の声を聞いたのね。」
「父さんたちは何を恐れてたんだ?」
アヤは振り返らずに答える。
「“鬼ノ境界”は、血の壁じゃない。
心の中にある“力の境界”なのよ。
それを超えれば、人でも鬼でもない存在になる。」
「……俺がその“境界”に立っているのか?」
「そう。だからこそ、ホワイトホースも、ブラックタイガーも――お前を恐れている。」
アヤが黒い風に包まれながら言う。
「もうすぐ、“第零隊”が動く。世界が震えるわ。」
その瞬間、レイは目を覚ました。
窓の外を、巨大な黒い艦影が横切っていった。
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第五節 硫黄島の反応
翌朝、司令室の警報が鳴り響いた。
『ロサンゼルス支部との通信、完全断絶!』
総裁がモニターを睨む。
「映像は? なぜ通信が途絶えた?」
「不明です。直前に“第零隊”の紋章を確認――」
その報告が終わる前に、別の通信士が叫んだ。
「硫黄島から鬼気反応あり! 波長パターンは……ブラックタイガーのものです!」
室内がざわめく。
硫黄島――そこは、かつて鬼と人が共存を試みた実験都市の跡地。
現在は米軍基地と、旧ホワイトホース研究所が存在している。
総裁が険しい表情で言った。
「ロサンゼルスとの交信途絶……そして硫黄島の反応。
ブラックタイガーは“世界連携”を断つつもりだ。」
ゲンが立ち上がる。
「つまり……次の戦場は、硫黄島ってわけか。」
レイは静かに呟く。
「――行かせてください。そこに、何かがある気がする。」
総裁はしばらく沈黙し、頷いた。
「神崎レイ、ナツキ、シュン。
“硫黄島調査任務”を命ずる。
その島で、鬼と人の“過去”を暴け。」




