第19章・第三部 黒の兆し
朱牙派との壮絶な戦いが終わった翌朝――
静まり返った海面に、異様な光が走った。
海底の一角から、ゆっくりと一つの小島が姿を現したのだ。
ホワイトホース本部は直ちに調査班を派遣。
レイたちゼロウィングも現地へと向かう。
「これ……昨日まで海の底だった場所だよな。」
「血気反応は完全に消えてる。でも、何か“呼んでる”感じがする……」
小島の中央には、崩れた研究施設のような遺構があった。
壁には「BLACK-T」――ブラックタイガーの紋章。
そして、散乱した書類と、封印されたデータ端末。
シュンがデータを解析すると、驚くべき記録が浮かび上がった。
「レイ、この研究記録……“神崎ユキ”って名前がある。」
「母さん……!」
記録によれば、レイの母ユキはこの島で“血気の安定化装置”を研究していた。
しかし、朱牙派が作り出した“核”は後に別の研究者が組み込んだもので、
ユキ自身はその暴走に反対していたことが判明した。
「つまり……核の暴走と母さんは無関係だったってことか。」
「そういうことになるな。」
ナツキがそっとレイの肩に手を置く。
「良かった……。あなたのお母さん、悪くなかったんだね。」
レイは静かに頷き、拳を握った。
⸻
しかし、もう一つ、資料の中に衝撃的な情報があった。
「ブラックタイガー本部――所在地:軌道上プラットフォーム“ナイトメア”。」
「……宇宙?」
「まさか、地球の外に……?」
シュンの声が震える。
ホワイトホース司令部はこの報告を受け、緊急会議を招集した。
総裁の声がモニター越しに響く。
「彼らはすでに地上を捨てた。宇宙に本拠を構え、地球全体を見下ろしている。
我々もそれに対抗する手段を整えなければならない。」
技術班には即座に“宇宙対応型戦闘機”の開発が指示された。
その名は――〈アストラル・ウイング〉。
同時に、最後に残る派閥の居場所も明らかになった。
「西東京――そこに、最終派閥“黒狼会”が拠点を置いている。」
総裁は厳しい目で告げた。
「最後の地上派閥を討て。
それが、宇宙への道を開く第一歩だ。」
⸻
夕暮れの東京湾上空――
レイたちは空上艦艇の甲板に立ち、沈む太陽を見つめていた。
「ここからが本当の戦いだな。」
「うん。もう後戻りはできない。」
「地上を守るために、空を越える時が来たってことだ。」
ナツキの髪が風に揺れ、レイの瞳に光が宿る。
遠く、黒い雲の下――西東京の方角で、微かな血気の反応が光った。




