第16章-3 影蛇(えいじゃ)の巣窟
第一節 帰還の報告
霧の戦いを終えたレイたちは、
疲労を引きずったままロンドン支部に戻ってきた。
金属製のドアが閉まり、霧の街の喧騒が遠ざかる。
ロビーの空気は冷たく、緊張感が漂っていた。
アーサー支部長が静かに言った。
「3人とも、ご苦労だった。だが、すぐに来てくれ。総裁が通信で繋がっている。」
3人は頷き、支部長室へと入る。
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第二節 総裁からの通信
部屋の中央に設置されたホログラム通信機に、
ホワイトホース総裁・風間ケンの姿が映し出された。
ケン「……よくやってくれたな、レイ、ナツキ、シュン。
ロンドンの件、報告は受けている。」
レイ「ありがとうございます。
ただ、“影蛇”にはまだ大きな動きがあるようです。」
蓮はうなずき、少し表情を曇らせた。
「それと、ナツキ――お前の母、ミズハについて話がある。」
ナツキ「……母のこと、ですか?」
ケン「彼女は五年前から消息を絶っている。
最後に確認されたのは――ロンドン郊外、テムズ川流域の廃港地区だ。
以来、記録も、目撃もない。」
ナツキの瞳が揺れる。
「……母さんが、ロンドンで……?」
ケン「彼女は本来、ホワイトホースの海外調査班としてこの地に派遣されていた。
だが任務中、影蛇に接触した可能性がある。
真相は――この地に眠っている。」
通信が一瞬、ノイズを走らせて途切れた。
ケン「アーサー支部長、後を頼む。」
通信が切れ、静寂が落ちた。
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第三節 母の真実
アーサーはしばらく沈黙したあと、
ゆっくりと机の引き出しから古いファイルを取り出した。
「これは、ミズハが残した最後の報告書だ。
五年前、彼女は“影蛇”の内部に潜入していた。」
ナツキ「……母さんが、スパイとして……?」
アーサー「そうだ。影蛇は当時、鬼と人間の融合実験を始めたばかりでな。
彼女はその核心に迫ろうとしていたが――突如、消息を絶った。」
アーサーは写真を机に並べた。
写っていたのは、笑顔のミズハと数名の仲間たち。
その中には、若き日のアーサーも写っていた。
レイ「支部長……あなたも一緒に?」
アーサー「ああ。彼女とは何度も任務を共にした。
だが、最後の任務の日――彼女は“霧蛇”という名を呟いて消えた。」
ナツキの手が震える。
「母さんは……今も、生きてる可能性が?」
アーサー「断言はできん。だが、フォッグの反応を見る限り、
彼女は“影蛇”に深く関わっていたことは間違いない。」
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第四節 作戦前夜
その日の夜、3人は宿舎の屋上に集まった。
霧が晴れ、満月がロンドンの街を照らしている。
シュン「……重い話だったな。」
ナツキ「うん。でも、もう逃げない。
母さんがなにを選んだのか、この目で確かめる。」
レイ「ナツキ、俺たちはお前のそばにいる。どんな真実でも受け止めよう。」
ナツキは小さく微笑んだ。
「ありがとう、レイ……。」
アーサーの通信が入る。
『明後日、キャムデン地区で作戦を実施する。
影蛇の拠点とみられる地下工場を急襲する。
君たちゼロウィングは先行部隊として突入しろ。』
シュン「よっしゃ、ついに“巣”を叩けるってわけか!」
レイ「気を抜くな。そこに、ナツキの“答え”があるかもしれない。」
ナツキは風に髪をなびかせながら、月を見上げた。
「母さん……もう一度、会えるのかな。」
その声は、夜の霧に溶けていった。




