第15章-2 総裁ノ跡
第一節 戦いの静寂
獄炎派との激闘から三日後。
薩摩半島の山中は、ようやく静けさを取り戻していた。
空上艦艇は修復と再補給を終え、
レイたちゼロウィングは地上調査の任務を任された。
ナツキ「やっと戦い以外の任務ね……でも、なんか落ち着かない。」
シュン「そりゃそうだ。ここ、一週間前まで地獄だった場所だぞ。」
レイは沈黙したまま、手元のデバイスを見つめていた。
その画面には、総裁・蓮のサインで発行された新たな指令が表示されている。
【指令】:薩摩南端・開聞岳周辺地下構造物の再調査
鬼気反応なし。だが旧総裁の記録反応を検出。
レイ「旧総裁……つまり、父さんの痕跡だ。」
⸻
第二節 隠された地下遺構
彼らがたどり着いたのは、火山の斜面にぽっかりと開いた洞窟。
内部には人工的に掘られた跡が続いており、岩肌には古い刻印が並んでいた。
ナツキ「これ……古代鬼文字?」
レイ「いや、見覚えがある。父さんの研究記録にも出てた。」
洞窟の最深部、金属製の扉が現れた。
扉の中央には、かすれた文字で刻まれている。
“ホワイトホース初代総裁 神崎リョウ 研究区画”
シュン「……父さん、ここを拠点にしてたのか?」
レイ「たぶん、“最初のホワイトホース”の時代だ。」
扉を開くと、中には古い装置と書類が残っていた。
埃をかぶった机の上に、一冊のノートが置かれている。
⸻
第三節 総裁の記録
レイがノートを手に取ると、
そこには丁寧な文字でこう記されていた。
『人と鬼の境界は、憎しみが生んだ幻。
だが、それを壊す力を人は恐れる。
我が子がいつか、この言葉の意味を理解する日が来ることを願う。』
ナツキが小さく呟く。
「これ……リョウさんの字だね。」
ページをめくると、次の記録が目に止まった。
『“境界核”は危険だ。
だが、それを悪用しようとする者が現れれば――
必ず“境界の子”がそれを止める。』
レイは拳を握った。
「父さん……最初から、全部見えてたのか……。」
ナツキ「でも、どうして今の彼はブラックタイガーを率いてるの?」
レイ「……それを知るために、俺たちはまだ戦わなきゃならない。」
⸻
第四節 残された映像
シュンが端末を操作し、古い装置の電源を入れる。
スクリーンがノイズ混じりに光り、映像が再生された。
そこには若き日の神崎リョウが映っていた。
白い研究服を着て、静かにカメラを見つめている。
『――もしこの映像を見ているのが、レイ。
お前がここに辿り着いたということは、
お前が“風の継承者”となったということだろう。』
レイが息を呑む。
『私は間違ったかもしれない。
だが、信じた道を進むしかなかった。
レイ、お前が見つけた答えが、私の罪を清めてくれることを願う。』
映像はノイズと共に途切れた。
ナツキは静かに言う。
「……父さん、最初から“今”のために動いてたんだね。」
シュンも真剣な表情で頷いた。
「悪に堕ちたんじゃねぇ。――背負ってんだ、全部。」
⸻
第五節 再び空へ
外に出ると、火山の風が3人を包み込んだ。
レイは空を見上げ、風を感じる。
「父さんの跡……確かに見た。
だけど、俺は俺の道を行く。」
ナツキ「そうだね。あたしたちは“過去を継ぐ”んじゃなく、“未来を作る”側だもん。」
シュン「だったら次も、派閥をぶっ潰して未来に進むだけだ。」
3人は空上艦艇に戻る。
機体が上昇するにつれ、薩摩の地が遠ざかっていく。
風の中、レイは小さく呟いた。
「父さん……見ててくれ。俺たちは、この“境界”を終わらせる。」




