第14章-2 決意ノ誓(けついのちかい)
第一節 一週間後の本部
箱根での激戦から、ちょうど一週間が経った。
ホワイトホース本部は静かな緊張に包まれていた。
本部中央ホールでは、全隊員を集めた“全体会議”が始まっていた。
総裁・風間ケンの声が重く響く。
「現時点で、ブラックタイガーの派閥は七つのうち二つを消滅。
残り五派閥が健在だ。」
場内がざわめく。
各支部の隊員たちは、手元の資料に目を落とした。
そこには未確認地域――東北、九州、韓国沿岸、ロンドン郊外、そして南アジアの拠点名が記されていた。
ケンは続ける。
「我々ホワイトホースの最優先目標は、残る五派閥の壊滅。
全派閥が消滅したとき、初めて本部――ブラックタイガーの心臓部に迫れる。」
スクリーンに映し出されたのは、世界地図。
赤い点がじわじわと世界各地で光を放つ。
「加えて報告だ。
米軍からの正式承認により、横田基地の一部区域を我々が使用可能になった。
これにより、空上艦艇の着陸および燃料の再補給が可能になる。」
どよめきが起こる。
これまで海上でしか運用できなかった艦艇が、地上基地を得たのだ。
本格的な世界規模作戦への布石だった。
ケンは最後に全員を見渡し、
「これは最終段階への準備だ。
各隊は即応態勢を維持せよ。――以上だ。」
と告げ、会議は終了した。
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第二節 総裁室での呼び出し
会議が終わったあと、レイ、ナツキ、シュンの3人は総裁室に呼び出された。
室内には総裁・ケンと、技術班主任の斎藤が待っていた。
「来たな、トリオ《ゼロウィング》。」
斎藤が満面の笑みで言う。
「お前らの専用機、ついに完成だ。
それぞれの戦闘機《アクアリウス》《ブレイズ》を――合体可能にした。」
レイが目を見開く。
「合体……!? 本当にそんなことが……」
「実現したんだよ。
三機が一つになるとき、エネルギー効率は単機の300%。
コードネームは《ユニオン・フォーム》。」
ナツキが興奮気味に笑う。
「やっと、あたしたち専用の“翼”って感じね!」
シュンも拳を握る。
「最高じゃねぇか! これで派閥どもを一気に叩き潰せる!」
そんな中、総裁・蓮が静かに口を開いた。
「レイ……お前に見せたいものがある。」
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第三節 母からのメール
ケンがタブレットを操作し、一通のメールを表示した。
送信者の欄には――神崎ユキ。
レイの母の名前だった。
「このメールは、昨夜、我々の旧データサーバーから復元されたものだ。」
画面には短い文と数字の列が表示されていた。
ロッカーNo.45-B
暗証番号:1127
開けた者が“本当の風”でありますように。
レイは一瞬言葉を失い、
「……母さん。」と小さく呟いた。
ケンがうなずく。
「お前の母が、隊員時代に使っていたロッカーだ。行ってみるといい。」
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第四節 ロッカーの記憶
ロッカールームの奥。
指定された番号の前で、レイは深呼吸をした。
ナツキとシュンが後ろから静かに見守っている。
暗証番号「1127」を入力。
錆びた音とともに、扉が開いた。
中には古びた封筒と、五枚の写真。
三枚は家族写真――父、母、姉、そしてまだ幼い自分。
残る二枚には、驚くべき光景が写っていた。
ひとつは、病院の出口で笑う二人の女性。
レイの母と――ナツキの母。
二人が腕に抱えているのは、生まれたばかりのレイとナツキだった。
ナツキが写真を見つめ、手を口に当てる。
「……まさか、うちの母さんとレイのお母さんが……?」
レイは静かにうなずいた。
「同じ病院で……俺たちは、同じ日に生まれたんだ。」
二人は無言のまま、写真を見つめ続けた。
その背後でシュンが笑いながら言う。
「運命ってやつだな。
だったら、最後まで一緒に戦うしかねぇじゃん。」
レイは写真を丁寧に封筒に戻し、拳を握った。
「母さんが残した想い、俺が受け継ぐ。
絶対に――悪を止めてみせる。」
ナツキもうなずく。
「そうね。あたしたちが、この境界を守る。」
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第五節 新たな作戦へ
その夜、本部の作戦会議室では再び灯りがついていた。
大型モニターに映し出されたのは、ブラックタイガー残党の派閥情報。
蓮が告げる。
「作戦名。
これより、残る五派閥を順に殲滅する。
最初の目標は“獄炎派”――南九州方面。」
レイたちゼロウィングは姿勢を正し、声を揃える。
「了解!」
戦闘機の格納庫では、三機の翼が光を放ち始めていた。
それはまるで、再び飛び立とうとする“希望の象徴”のように。




