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アビリティ×ウェポン  作者: まきしまむ・メロン
ガンマンの世界
2/20

黄色のシューター

荒れ狂う風の音が大地を叩く中、ひとりの少女が荒野を歩いていた。


また砂嵐か……まぁ、この時期じゃ当たり前か。


風に舞う砂を避けながら、乾いた地面を黙々と踏みしめる。やがて視界の先に、小さな町の影が見えてきた。


西部開拓時代を思わせるその町には、アーチ型の木製ゲートが鎖で閉ざされ、看板は今にも落ちそうに揺れている。


こんな時に町が見つかるとは、ツイてるな。


門をくぐると、建物が並び、そこそこ人の気配もある。通りを歩きながら、少女は辺りを見渡した。


やっぱ、どこ行っても変わらんな。釘は飛び出してるし、柱は腐りかけ、看板も今にも落ちそう……まぁ“普通”っちゃ普通か。今さらどうでもいいけど。


そんなことを考えながら歩いていると、ひとつの建物が目に入る。

――酒場だった。


腹も減ってたし、休憩にはちょうどいいな。


西部風の短い木扉を押して中へ入ると、カウンターとそれを囲むように大きな樽のテーブル、木製の椅子が並んでいた。

中には筋骨隆々の荒くれ者たちが座っていて、少女の姿を見た瞬間、ひときわ目立つ男が笑いながら言った。


「なんだよ、嬢ちゃん。迷子か?」


少女は無視してカウンターに向かおうとする――が、男が前に立ちはだかった。

見上げるような長身の男が、ニヤついた顔で睨みつけてくる。


「おい、無視すんじゃねぇよ。いい度胸してんな。……見た感じ、145cmくらいか? チビのくせに生意気なツラしてんな!」


めんどくせぇのに絡まれたな……


「おい、聞いてんのか!」


深くため息をついて、少女――ユーロック・バレットは口を開く。


「強そうなのは見た目だけか。でかい図体に似合わず、脳みそは弾丸サイズってか」


その瞬間、男は怒りに顔を歪め、ユーロックの胸ぐらを掴みかかる。


「調子に乗ってんじゃねぇぞ、このガキがッ!」


「ガキ言うな! 私はユーロック・バレットだ!」


男は胸ぐらを離すと、ユーロックを突き飛ばした。


「知るかそんな名前! 口の減らねぇガキには、これを食らわせるしかねぇな」


そう言って、腰のホルスターからリボルバーを抜くと、彼女に銃口を向ける。

慌てた酒場の店主が止めに入った。


「お、お客様! ここでの()()()()()()()()()の使用は禁止でして……!」


「うるせぇ! てめぇは黙ってろ!」


「は、はいっ!」


男がハンマーを下ろすと、酒場内は野次馬で盛り上がり始めた。


「くらいやがれ!」


引き金が引かれ、銃弾が床に命中した瞬間――ユーロックの足元から鎖が生え、瞬く間に身体を巻きついて動けなくなった。


……なに? 動けない……これが、こいつの能力か……


「これが俺の能力、《束縛の鎖》だ! 鎖を生み出して相手を拘束しようが攻撃しようが自由自在。これでお前もウェポンが出せねぇ!」


男が自慢げに語っていると、野次馬の一人がぽつりとつぶやいた。


「おい待て……あいつ、ウェポン持ってなくね?」


「はぁ?」


男がよく見ると、確かに武器の類いは見当たらない。

そして、ニヤリと嘲る。


「お前、丸腰かよ! まさかウェポン使いじゃねぇとはな……どんだけ貧乏人なんだよ!」


周囲の野次馬もつられて笑い出す。

しかし――ユーロックの唇が吊り上がった。


……面白ぇな。こんなんで勝った気になってんのか。

私が負ける? 冗談はその顔だけにしとけっての。


「な、なんだよその笑いは! 負け惜しみか!?」


そのとき、ユーロックの右腕に着けられた黄色のブレスレットが光を放ち、銃の形へと変化。

そして閃光とともに、それは重厚な対物ライフル型の武器へと姿を変えた。


次元界銃(じげんかいじゅう)ディメンションシューター!】


「なっ……なんだそれ……」


銃からわずかに連射音と、電子的な起動音が響く。


「……これが()()()()()()()()()だ。」


「ワ、ワールド・ウェポンだと!? ありえねぇ! あんなの都市伝説じゃねぇか!」


驚くのはまだ早いぜ。


ユーロックは地面に銃口を向け、引き金を引いた。

一瞬の閃光。


「い、いない!? どこ行った……!」


男が周囲を見渡すと、背後から声がした。


「こっちだよ……」


「てめぇ! どうやって後ろに……!? 俺の鎖は解けるはずが――なにをしたッ!」


「……言ってなかったな。私の能力は《次元操作》。

ポータルを開いて、今この瞬間の別の場所に繋げることができるんだよ。」


「お、お前……まさか……!」


「なんだ? お前こいつのこと知ってんのか?」


男の質問に、野次馬は言葉を詰まらせつつ語り始める。


「長いツインテ、黄色い髪に緑の瞳、黒Tに短い黄色ジャケット……黄色の対物ライフル……間違いねぇ! こいつ、“黄色のシューター”だ!」


「黄色のシューター……? 誰それ?」


「お前知らねぇのか!? 各地のガンマン大会を総ナメにして、何も言わず去っていく伝説のガンマンだ!」


……マジか。私、そんな呼ばれ方されてんのかよ……

クソだせぇ! ただの資金稼ぎで出ただけなのに、噂広まりすぎだろ……!


男は溜め息をついて、肩を落とす。


「……俺の負けだ。瞬間移動とかされたら、勝てるわけねぇわ」


「そりゃよかった……」


やっと終わったか。めんどくさかったな。


「そういや嬢ちゃん、いろんな町に行ってるみたいだけど、なんか旅でもしてんのか?」


「……私は、満月に現れる《レギオン》を討伐しながら、《石版》の在処を探してる。何か知らないか?」


「レギオンって、あの化け物か? 石版のことは……悪い、聞いたことねぇな」


「……」


すると、奥で黙っていた男がぽつりとつぶやいた。


「俺、石版の情報知ってるやつに心当たりあるぞ」


「……本当か?」


「ああ。ここから少し離れたところに《ハリケーン・タウン》って巨大な街があってな。そこに凄腕の情報屋がいる。こっからタクシーで2日くらいだ」


「……助かった。」


ユーロックは店主にウィスキーを一杯頼み、それを一気に飲み干すと――

静かに立ち上がり、次なる目的地へと向かった。


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