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赤き剣士

二人はレストランで食事をしていた。


「このブルストとか言うの美味いな……」


「このシュニッツェルって言うのも、肉厚が良くて美味しいわよ……」


舌鼓を打つ中、ユーロックはメニューを開くと、あるものが目に入った。


「なぁ……ビールって飲み物あるんだけど、飲むか?」


「そうだね……頼んでみようか……」


ユエンが手を挙げてウェイターを呼ぶ。


「すみません……ビールって言うの、二つお願いします……」


「かしこまりました……」


しばらくすると、ジョッキに注がれた黄金色の液体が届いた。

二人は恐る恐る一口飲む。


「これうめぇな……!」


「シュワシュワするね……!」


それから二人は何杯か煽り、完全に出来上がった状態で店を後にした。

夜風に当たりながら、変なテンションになって叫ぶユーロック。


「私は最強のガンマンだぜーうへへへい!」


「ちょっと飲みすぎよ……ウハハハハ……」


お互いに肩を組みながら、フラフラとした足取りで夜の街を歩く。すると突然、狭い路地裏から何かから逃げるように飛び出してきた男性とぶつかった。

二人は盛大に尻もちをつき、焦点の合わない目で男性を見上げる。


「なんだ……?」


「すみません……ウヒヒヒヒ……」


「なんだ君たちは……」


ユーロックは呂律の回らない声で呟く。


「なんだよ……ハゲてデブのおっさん……」


その時、何か閃いたような表情で男性が言った。


「そうだ……君たち、私の護衛をしてくれ……」


「護衛……?」


ユエンは笑いながら親指を立てて叫ぶ。


「任せといてイエーイ!」


二人は男性と共に街を歩き、しばらくすると豪華な屋敷に辿り着いた。


「うわぁ……でけぇ……」


「ここは私の豪邸だ!」


屋敷の威容を前にして、ようやく酔いが冷めてきた二人。

ユーロックは小声でユエンに耳打ちする。


「お前、なんで護衛になるなんてそんなめんどいこと了承したんだよ……」


「あの時は酔っ払って勢いで言っちゃって……。でも今更『やっぱり辞めます』なんて言いづらいし……」


ユーロックは深いため息をついて、頭を押さえながら呟く。


「はぁ……まぁいい。今更断るのもめんどいしな……」


屋敷に入り、ユーロック達は男の事情を聞いた。


男性の話によると、彼は武器商人らしく、暗殺者に追われて逃げていたのだという。


「だから私たちに護衛をお願いしたのね……」


「武器商人? なぁ……電車内で死んだ武器物流の社長となんか関係あるのか?」


「それを依頼したのは私だ……。前々から邪魔だったのだ! アイツのせいで私の客が全部流れて行ってしまった! 顔が整って女からモテまくり、結婚までしている! 気に食わないやつだ!」


あまりの言い草に、ユーロックは呆れた顔で呟く。


「ただの逆恨みかよ……」


すると、ユエンは男性に向かって怒鳴った。


「そんなことで人の命を奪うなんて……許せない!」


さらにユエンは男性にビシッと指を指し、言い放つ。


「そんな性格だから女性に相手にされないのよ……!」


「ぐはっ……!」


男はショックを受け、膝をつきその場で突っ伏した。


ユーロックはユエンの方を向き、ボソリと呟く。


「お前、今のは多分効いたぞ……」


すると男性はヤケになり、とんでもない発言をした。


「この際もうなんでもいい! 君たち、私の女になれ!」


二人は驚愕した。


「は、はーー!?」


ユーロックはゴミを見るような目で男性を見つめる。


何言ってんだ……こいつ……。


ユエンも烈火のごとく怒った。


「なるわけないでしょ! 何を考えてるのあなた!」


それからなし崩し的に護衛をすることになったのだが、扱いは酷いものだった。


「ユーロック君、ワインを持ってきなさい……」


ユーロックはワインボトルを机に勢いよく置き、凄むように呟く。


「お前、何度も言ってるだろ……私は護衛をしているだけで召使いじゃねぇ……」


男性はソファにふんぞり返りながら呟く。


「ユエン君……掃除、洗濯は終わったかね……」


ユエンがため息をつきながら呟く。


「なんで私がこんなことを……」


「ユーロック君……葉巻に火をつけてくれたまえ……」


「チッ……」


ユーロックはライターを手に取った。

だが、次の瞬間。


「んッ!? 火がついている……」


確か私は、これから火をつけようとした……。

だが気がついたら、すでにおっさんの葉巻に火をつけている……。


ユエンが急いでユーロックに駆け寄る。


「ユーロック! 今のって!」


「あぁ……おかしい……おそらく何者かが能力を発動した……」


でも一体なんの能力だ……。


その時、背後から男性の叫び声が聞こえた。


「うわぁー!」


ユーロックが振り返ると、そこに男性の姿はない。

ユエンは慌てて辺りを見渡す。


「あの人どこに行ったの……!」


ユーロックは眉間にシワを寄せる。


なんだ……前にもこんなことがあったような……。

確か機関車の中でも同じようなことが……。

ユーロックは何かに気づいた。


「まさか……!」


「どうしたの?」


「機関車で敵がいなくなる直前、時計塔に剣を持ったやつが見えたんだ……」


「もしかして、今の能力もその人物の仕業……?」


「多分な……とりあえずおっさんを探すぞ……」


「そうだね……」


二人は屋敷内を走り回る。


「やけに広いな……ダル……」


「部屋が多すぎる……これじゃどこにいるのか分からないわね……」


それから探し回っていると、とある部屋で二人は男性を見つけた。


「あっ、いた!」


尻もちをつき怯える男性の前には、剣を振り下ろそうとする人影があった。


「まずいな……」


ユーロックは即座に武器を召喚する。


次元界銃(じげんかいじゅう)ディメンションシューター!】


ユーロックはポータルを開く。

怯えて叫ぶ男性。


「うわぁ……やめてくれぇ……」


男性が絶望し、目をつぶった。

剣が振り下ろされるその時、ガン! と金属がぶつかる音が響く。

男性がゆっくりと目を開くと、目の前には剣をライフルで防ぐユーロックがいた。


「お前がおっさんが言ってた暗殺者だな……」


暗殺者の姿を見たユエンが呟く。


「少女……?」


少女は剣先を地面に突き立てる。

すると次の瞬間、目にも止まらぬ速さで男性を抱え、外へと逃走した。

あまりの速さに目を見開くユエン。


「え、はっや……」


「あいつの能力は超スピードか?」


「なら、能力者が別にいるのかも……」


「一人で行動してないというわけか……」


「とりあえず早く追いかけよう……」


「あ、あぁ……」


外に出てワープしながら二人は追跡した。


その頃、路地裏まで辿り着いた少女は男性を肩から下ろす。


「ちょっと待ってくれ、なぜ私を始末しようとする……」


少女は覇気のない冷たい目で彼を見つめる。


「そ、そうだ……いくら欲しい……好きなだけあげよう……」


しかし男性の問いかけに、少女は何も反応を示さない。

男は冷や汗を流しながら、震えた声で嘲笑する。


「何スカしてんだよ! どうせお前らなんか金をチラつかせれば誰でも殺す野蛮人だろ……!」


男は懐から袋を取り出す。中を開くと大量の金貨が入っている。少女に見せつけながら呟く。


「ほら、金だぞ……? どうだ……!」


すると少女は無言で剣を振り上げた。


「待ってくれ、うわぁ……」


しばらくして、ユーロック達は路地裏に辿り着いた。


「やっと追い詰めた……もう逃がさねぇぞ……」


少女はゆっくり振り返る。街灯に照らされ、その全体の姿が浮かび上がった。

赤い髪に紫色の瞳、赤いコートとワイシャツ、紫色のネクタイ。


ん……? どこか見覚えがあるような……。


動きが止まるユーロックに、ユエンが声をかける。


「どうしたの……?」


「いや、なんでもない……」


ユーロックは少女に問いかけた。


「おっさんはどうした……」


しかし少女は返答をしない。


なんだアイツ……全く何も喋らねぇ……。不気味な奴だ……。


すると少女は、無言で足元の男性の死体を転がした。

ユエンが驚愕する。


「え、死んでる……」


ゴーン……ゴーン……

三日月の夜空の中、時計塔の鐘が街に鳴り響く……。


少女は剣を構えた。

ユーロックは眉間にしわを寄せる。


「何かくる……気をつけろユエン!」


ユエンは武器を召喚して構える。

すると少女は円を描くように剣を回し、天に掲げた。

その直後、ユエンは息を呑む。


「え、いない……!?」


するとユーロックが叫ぶ。


「ユエン後ろだ……!」


ユエンは咄嗟にダイヤルを回し、槍を地面に突き刺した。


【フローズンバインド!】


ユエンは後ろを振り向きながら槍を振る。

少女は高く飛び上がり、後ろへと回避した。


「瞬間移動の能力? でも……さっき高速で動いてたし……」


「なんだアイツ……挙動が不自然だぞ……」


すると、ユエンは何かに気がつく。


「ユーロック! 彼女の手を見て!」


「なんだ……?」


ユーロックが目を凝らし、少女の手元をよく見る。


「あれはワールドウェポンの召喚具!?」


少女の指には、ひし形の赤い宝石が埋め込まれた指輪がつけられていた。


「そう……やっと理解したわ。アビリティウェポンは能力が限定的だから挙動は一つに絞れるけど、ワールドウェポンは能力が抽象的……」


「だから、色々な動きが出来るわけか……。だとすると、能力は概念系……やつの能力はなんだ……?」


すると少女は剣を構えて勢いよく迫ってくる。

ユーロックは反応し、発砲する。

弾丸は少女の眉間に当たり、彼女はその場で倒れた。


「当たった……!」


「意外とあっけなかった……」


二人は少女に近づこうとした、その瞬間。

ピクリ、と少女の指が動く。二人の足は止まる。


「なにっ……!?」


「今動いた……?」


少女の眉間に垂れた血は傷口に吸い込まれるように流れていき、穴が綺麗に塞がり完治した。

すると少女は、何事もなかったかのようにゆっくり立ち上がる。


「お前なんで生きてるんだ……。確かに私は眉間に風穴を開けた……」


ユエンが追撃しようと走る。少女が剣を地面に突き刺した。


「あれ、何か動きが鈍い……」


ユーロックは再び引き金を引く。

すると、ユーロックは困惑する。


なんだ……? 弾と薬莢がゆっくり動いてる……。

体の動きも鈍い……。


ユエンは考え込む。


動きがゆっくり、高速移動、瞬間移動、回復……。


ユエンは、あることに気づく。


まさか……。


ユエンはユーロックに叫ぶように呟く。


「わかったわ……彼女の能力が!」


「なんだって……」


「彼女の能力は『時間』よ!」


「『時間』!? そんなまさか……!」


確かに、ユエンが言う能力なら全てに説明がつく……。

屋敷内で時間が飛んだような感覚があった……。

瞬間移動は『時間停止』? 高速移動は『時間を早めた』……今、体が鈍いのは『時間を遅くした』……。

復活したのはなんでだ……?

復活……戻る……もしかして、時間を巻き戻したのか……!


「でも……ここからが問題よ……」


「あぁ……どうやってやつの時間操作を攻略するかだな……」


暗殺者の少女の能力は、『時間操作』だった。


時を遅くされ、絶体絶命のユーロック達は一体どうなるのか。

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