24 森へ行ってみた
森に入ると他の冒険者達がいたので、私達はもっと奥に入って行った。
今の所、魔物を一度も見ていない。
ドキドキする。つい、ユリウスさんのローブを掴んでしまう。
見たいような、見たくないような…。
ユリウスさんに抱っこされたまま、森の中を進んで行く。
そして、大量の草が生えている所で、私は降ろされた。
「コレが薬草だぞ。根の上を切って持ち帰るんだ。間違っても根ごと持って帰るなよ。次のが生えなくなるからな」ユリウスさんが一つ一つ説明してくれる。
なるほど。根を残せばまた生えるんだね。
私はこの辺りに鑑定を掛けてみる。
どれが薬草で、毒草で、毒消し草で、マヒ草で、眠り草で…?何かヤバそう。
ユリウスさんが色々教えてくれるけど「かんてーちゅかえましゅ」と伝えておく。
私を使えば仕事が早く終わるでしょ?
期待を込めてユリウスさんを見上げると「人に使う時は気を付けろよ。バレると面倒な事になる時があるぞ」と、真面目な顔をして言われたので私も頷いておいた。
そっか… 人に使うとバレる時があるんだね… 覚えておこう
「昼飯にしようか」と、ユリウスさんが私を抱き上げ移動した。
◆◇◆◇◆◇
少し開けた場所があって、私に薪を集めるようユリウスさんが言ってきた。
ユリウスさんは、石を集めてカマドを作るようだ。
野営慣れしている。騎士団長だもんね。
私は小枝ぐらいしか持てないからせっせと集めていた。
視界の隅に、森の奥の方で何かがピョコンと動いたのが見えたような…。
私は引き寄せられるように、ポテポテと歩いて近寄った。
そこにいたのは、水色のポヨンポヨンと揺れるゼリーの塊。
イヤ違った。スライムがいた。
異世界に来て初魔物がスライム。
ちょっと感動。顔がニヤけた。
私は持ってた小枝でツンツン突っつく。
ヤツはポヨンポヨンと揺れるだけで何もして来ない。
こう言うものなのかな?攻撃して来ないのかな?なんかカワイイね。
そんな事を考えながら突っついていたら、突然ユリウスさんの声が後ろから聞こえた。
「エレナっ!何してる?そばから離れるなよっ!」
私が驚いて振り返ったら、ユリウスさんが物凄く焦った顔をしていた。
「ごめんにゃしゃい…」怒鳴られる覚悟をして、俯いてローブをギュッと掴んだ。
「黙って離れるな。ここはまだ浅い所だから強い魔物はいないが、お前を簡単に拐える人間が沢山いるんだぞ!分かったかっ!」
やっぱりユリウスさんに怒られた。
シュンとして「はい…、気をちゅけましゅ…」と、私は素直に謝った。
今回は私が悪い。
ユリウスさんは腰に手を当て、私を覗き込むように見て来た。
「ハァ〜、それでどうしたんだ?」と聞かれたので「初めてスライムを見たので…」と答えた。
「本当に異世界に来たんだなぁと思ったら、感慨深くなりまして…」だって一度死んでるし。目が覚めたら神界にいるし。
現実味を帯びていなかったけど、スライムを見たらテンション上がっちゃって、我を忘れたの。ごめんなさい。
ユリウスさんが私を抱き上げ、スライムから離れて行く。
「スライムは何でも溶かしてしまうから、あんまり側に近づくな。向こうからは攻撃して来ないが、こっちから仕掛けると酸が飛んで来るぞ」
私はあ然とした。酸が飛んで来る?スバラシイ…。
「いいか。俺の言う事を聞くように。森の中では黙って離れない。やりたい事がある時は口に出して、言葉で言うこと。今の俺では、離れたお前を守れる程の力は無いからな。分かったか?」
私の目を見ながら、ユリウスさんに説教されてしまった。
「ごめんにゃしゃい」私は小さな声になってしまったが、本当に反省した。
早くこの世界の常識を覚えなければ。
ユリウスさんに頭をグシャグシャ撫でられた。
チラッと上目遣いでユリウスさんを見ると、何だか満足そうだった。
◆◇◆◇◆◇
元の場所に戻り、二人で薪を拾いカマドに火を点けよう。
すると、ユリウスさんの人差し指に火が灯っている。ライターみたいだ。
コレが魔法…。おぉ~〜。私の目が全開に開く。多分、口も開いてたと思う。
他人が魔法を使う所を初めて見たので、これまた感動した。
「指先に少しだけ魔力を集めて、火を思い浮かべるんだ。やってみな?」ユリウスさんはサラッと言うのよね。
フンフン。私は威力が無いから、魔力をたくさん込めないと火が出ない気がする。
ヨシッ!やってみましょう。
私は小さな右手人差し指を立てた。
指先に集中…、指先に集中…、えいっ!
シュボーーッと音がして、私の小さな指先から2mぐらいの火柱が轟々と立っている。
「あっ」やり過ぎ?熱くないね?何で?コレ火じゃないとか?まさかね?
私が現実逃避していたら、ユリウスさんが「もう成功したか?」と振り返った。 「おいっ!消せ消せっ!」
ナニイッテルノカワカンナ〜イ。
「魔力を止めろ」私と目線を合わせて、落ち着いた声でユリウスさんに言われたので、私は我に返る事ができた。
パシュッと音がして、火が消えた。はぁ〜、と二人して溜息をついた。
私はまた怒られると思っていた。
「ちょっと大きかったけど、ちゃんと火が出たな。偉いぞ」そう言って、ユリウスさんが頭を撫でてくれた。
怒られなかった事が嬉しい。ホッとした。
「魔力を出す量を調節しないとな。これから練習して覚えればいいさ。さぁ、飯にしよう」優しい声で私に言ってくれる。
やっぱりユリウスさんてスゴい。
ユリウスさんが用意してくれたスープは熱々で、いつも固い肉が柔らかくなっていた。パンも千切って入れてくれる。
いつもより美味しくて、たくさん食べた。
ユリウスさんが私を気遣って作ってくれたと思うと、胸が熱くなる。
どこかのクソ女神とは大違いだね。
昼食後、私は眠くなってしまい、お昼寝に突入してしまう。
ユリウスさんが何か準備をしていたが、その様子を見ながら眠ってしまった。
眠りながらも、早く魔力制御を覚えなきゃと思っていた。
◆◇◆◇◆◇
〈エレナさん、エレナさん、ワシですじゃ〉
(あれ?じーさん?元気だった?)
〈はい、創造神様の元で元気にしておりますよ。エレナさん、体の調子はいかがですかな?〉
(今日は少し歩いてみた。それから、初めてスライムを見て嬉しかった。異世界にいるんだなって実感したよ)
〈そうですか。楽しんでおられるようで、ワシも嬉しいですぞ。少々魔力制御に苦労しておられるようですな?〉
(苦労どころじゃないよ〜。教えてもらって無い事がいっぱいで、ユリウスさんから改めて一から教わらなきゃ駄目みたい。あのクソ女神、何なのよホントに!)
〈本当に申し訳ないですじゃ。今も牢獄でギャーギャー騒いでおりますぞ〉
(ハハ…。全然反省して無いんだね)
〈はい。アレの事はこちらにお任せを。エレナさん、体調に気を付けて下され。また交信させてもらいますので〉
(うん、分かった。じーさんまたね)
〈はい、それでは〉
プツンッと音がして「エレナ、そろそろ帰るぞ」の声で目が覚めた。




