23 ギルドに着いた
ユリウスさんがゆっくり歩いてくれたので、ギルドに着いた時は人が少なかった。
私は抱っこしてもらって、中に入った。
汗臭い男達の匂いが充満している…。
私は抱っこされたまま、グルリと室内を見渡した。
ギルドの中は正面に受付カウンター。左手奥は買取のカウンター。二階もあるんだね。右手側は依頼の掲示板がある。左手は酒場だ。
ユリウスさんが、依頼の書かれた掲示板に向かって行く。
二人で一緒に覗いて見た。
何々…、薬草採取、ドブ掃除、荷物運び、配達、失くした物を探して…なるほど。
あまり街の外に出ないような依頼ばかりだ。依頼料も銀貨数枚か。あっ、銀貨があるのね。
ユリウスさん、どうするのかな?森に行くって言ってたけど。
その時、ブツブツ何か言っているのが聞こえた。
「ギルドの宿舎もあるんだけど、あまり使いたくないんだよなぁ〜。警備が甘いんだよなぁ〜。エレナもいるし、安いけど他を探そうか…」ユリウスさんが私のせいで、悩んでおられるようだ。
私はユリウスさんの服を引っ張り、意識をこちらへ向けた。
「結界が張りぇりゅので、ちんぱいいりゃにゃいでしゅ」と、小さな声で囁いた。
まだ一度も張った事無いケド。
「ギルドの宿舎で良いのか?風呂付いてないし、トイレも共同だぞ?壁も薄いし部屋は狭いし、冒険者ってのは荒っぽい奴ばっかりだから、お前が心配なんだよ?」さすがイケメン(以下略)。
私は自信満々に、右手の親指をビシッと立てた。
ユリウスさんは「何だソレ?」と、同じように親指を立てたので「だーじょぶって意味でしゅ」と教えて上げた。
◆◇◆◇◆◇
「じゃあ、受付して来るから待っててな」と、苦笑いしながら私を椅子に座らせて、行ってしまった。
5mぐらいしか離れていないけど、ちょっと心細い。
足をプラプラさせながら終わるのを待っていたら、いつの間にか数人の男達に囲まれていた。
その中でも、特に大きな熊が目の前に立っていた。
私は見上げて「ヒッ」と息を飲み、固まってしまった。
そして熊がしゃべったのだ。「お嬢ちゃん一人?迷子か?親はどうした?」そう言って私を抱き上げようと、両手を伸ばして来る。
私、どこかに連れ去られちゃうのかしら?迷子センターでもあるの?助けてユリウスさん!と言いたいのに、恐怖で声が出ない。
もう終わりだと思ったその時!
「すまん、ウチの娘だ」と、ユリウスさんが現れた。
遅いよっ!と私は心の中で叫び、ユリウスさんを見た。
熊は「おう、そうか。こんなちっせーのが一人でいるからどうしたのかと思ってな。気を付けねーと、こんな可愛い子拐われちまうぞ?」と、私を見ながら言う。
そんな簡単に子供が拐われる世界なの!?
「申し訳ない。これからは気を付けるよ」そう言って私を抱き上げてくれた。
やっと私はユリウスさんの腕の中に戻る事が出来た。この安心感。さすがイケ(自主規制)。
「俺はギルド長をしているマックスだ。よろしくな」ニカッと笑って、ユリウスさんに右手を出した。
「どうも、ガスと言います。それと娘のエレナです」ユリウスさんもそれに応える。
二人は微妙な雰囲気で握手している。
◆◇◆◇◆◇
二人が話をしている間に、私はこの大男を観察していた。
髪は赤茶色。ゆるふわウェーブで肩までの長さ。瞳は茶色。顔も腕も毛むくじゃら。眉毛ゲジゲジ。鼻もデカい。唇ぶっとい。背丈は2m超え。ユリウスさんより大きい。手も足もデカいな。熊だな。筋肉なのか?その肩はっ!?目だけ二重でキリッとしてる。
ボーッとしながら眺めていると、大男がいきなりユリウスさんにウィンクをした。
驚いてユリウスさんの顔を見ると青褪めている。
「ハハハ…、ありがとうございます…」と言ってユリウスさんは、慌ててギルドから出た。
私は話を全く聞いていなかったから、何があったのか分からない。
あの大男は要注意人物かも知れない。
警戒せねば。
◆◇◆◇◆◇
ユリウスさんは武器屋で剣を買った。長いのと短いの。
あまり、納得のいかない物を買ったみたいだ。
それに、瞳に後悔が現れている。
剣に思い入れがあるのかも。私には分からない。
触れられたくない傷なのかも知れない。
ふと目が合い、ユリウスさんが「ギルドの宿舎に十日程泊まれる。もし嫌になったらすぐ引き払うから言ってくれ。食事はギルドの中の酒場でも良いし、外に行っても良いぞ。好きな方を選べ」と言う。
いつでも私を優先してくれる。
その気持ちがくすぐったい。
多分、肉の固さを解決しない限り、外で食べるのは無理だと思う。
「にゃるべく部屋でちゃべちゃいでしゅ」今の私に肉の説明は大変だ。
「分かった。外で買って部屋で食べような」ユリウスさんは、なぜか私の背中をポンポン叩いた。
「調理器具とかも買ったから、共同キッチンで料理作ってもいいぞ。俺、簡単な物しか作れないけどな」
なぬっ?共同キッチンがあるですと!?
「わたち、りょうりしゅき」ずっと一人暮らしだったから、料理はよくしていた。
自分好みの味にするなら、作った方が早い。ただ、この体の大きさで包丁握れるかなぁ〜。
顔を上げないように、私は一人でニヤニヤしていた。
「へぇ~そうなのか?調味料も揃えるか?他に必要な物はあるか?」
必要な物!!もちろんありますとも!
「何だ?何か欲しいのか?」私はユリウスさんの問いかけが、全く耳に入っていなかった。
思わず、周りの店にあるかとキョロキョロしながら「お米ちゃべちゃい…」と言っていた。
私の願いよ届け!
「オコメ?なんだオコメって」あれ?ご存じないとな?おかしいな?ユリウスさんの顔を凝視する。
あのクソ女神、嘘ついた?
「白いツブツブの穀物です。湿地帯に生育する物で、私の世界での主食でした。この世界にもあるってあの女神が言っていたのですが…」ユリウスさんが目を見開いて私を見る。
「急にどうした?言葉が滑らかだぞ?」歩いていたのに、ユリウスさんが止まってしまう。
「ありぇ?なじぇでしょう…」私も気付いていなかった。
早く滑らかに話せるようになりたい…。
ユリウスさんが知らないなら、本当はお米無いのかも…。
う〜ん…我慢すればいいんだけど、考えれば考える程食べたくなる…。
私がウンウン考えている間に、ユリウスさんは街の門を出て、すぐ近くの森に入った。
歩いて移動って、思っているより大変かも…




