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偽りの父娘ですが、勇者討伐の旅に出ます!  作者: てちてち


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21 初めての父




 ユリウスさんに抱っこをされて一階に降りたら、受付カウンターに女将がいた。



 「昨日は変な態度を取って悪かったね」と、私達に謝って来た。何でも、旦那さんに怒られたそうだ。



 ユリウスさんも「良い旦那さんじゃないか。大事にして下さい」と微笑んでいる。



 うっ…間近で見るイケメンスマイルが眩しい。



 昨日の夕飯に、私達が降りて来なかったのを女将が心配してくれていたらしく、残してあるから食べて行けと言う。



 ユリウスさんが頂いて行こうと言うので、食堂に移動した。



 メニューはスープとパン。この世界はこう言う食事が多いのかな?



 スープの肉は、固くて食べられなかった。また空間収納に隠しておこう…。パンは千切ってスープに浸して食べた。



 私がハグハグと食べている間に、ユリウスさんが女将に話し掛けた。



「俺達、住んでた村から追い出されてしまって、やっとここまで来たんです。村の作物が育たなくなって、食糧も無くなって…。こんなに食べたのは久しぶりです。本当にありがとう」と頭を下げていた。



 私はユリウスさんの嘘に、びっくりしてしまった。いつ考えたの?その設定。



 女将が「あんた達もなんだね…。ガリウレス王国が亡くなって、ますます帝国はおかしくなってるよ。他の客も似たようなもんさ。住処を追われて他国に逃げて行ってるよ」



 何ですと?アイツ、帝国から住民を追い出しているのかしら?そこまで頭が回る男じゃないから、きっと殺すつもりで追いかけているんだわ。だから拘束されたのかも…



 ユリウスさんと私は目を合わせて、小さく何度も頷く。



 “勇者討伐”は本来女神の責任だけど、私が殺るしかないのよ。ユリウスさんの力を借りなきゃいけないけど。




◆◇◆◇◆◇



「ごちそうさま。そろそろ出掛けるよ」と、私を抱き上げて宿の玄関に向かった。



 私は抱き上げられた途端、体がダルくて眠くてどうしようもなくなってしまった。



 創造神様、昼間は起きていられるって言ってたのにっ!



 女将が何処かへ行き戻って来た時に、手に布の塊を持っていた。



「コレ、娘のお古なんだけどお嬢ちゃんにやるよ。まだ着れるからさ」と、ニッコリ笑う。



 ユリウスさんが一枚広げて見せてくれて、とても可愛らしい青色のワンピースだった。兎のエンブレムが付いている。愛情が籠もってる。



 ユリウスさんが、目に涙を溜めてお礼を言っている。



「ウチの娘に気を掛けてくれるなんて……」と、何か感動しているようだ。



 私にも「ホラ、お礼を言いなさい」と言われたのだが、その頃には半分眠っていて口がよく回らなかった。多分「ありがちょ」と言った気がする。



 ユリウスさんは、私が人見知りだと思ったらしい。女将に謝っていた。



「それじゃあ」と軽く会釈をして、私達は宿を出た。



 宿を出てすぐに「エレナ?具合が悪いのか?顔色が悪いぞ?」とユリウスさんに聞かれた。



 私は「大丈夫でしゅ。ただ、やちゃらと眠くって…」と答えるのが精一杯だ。



 ユリウスさんに「部屋に戻るか?」と聞かれ、ウンと頭を動かした辺りでもう記憶が無かった。



「寝てろ。俺は用事を済ませてくるから。何か欲しい物はあるか?」と聞かれた時も、私の頭の中には、甘い物が浮かんでいただけだった。



 返事も何と言ったか覚えていない。



 その後は、妙にムワッとする男達の汗の匂いと、ザワザワとした音。ブツブツ言うユリウスさんの声。



 ただ、「絶対に仇は取る」と言って、私を抱きしめる腕に力が籠もったのは覚えている。



 このお昼寝には誰も現れなかった。



 ゆっくり眠れたのは良かったな。




◆◇◆◇◆◇



 そして、食事に行こうとユリウスさんに起こされた。



 もう夕飯?とムニュムニュ言って私の口が回らない。



 ユリウスさんに抱き上げられ食堂へ行き、女将が食事を持って来てくれた。



 スープにパンに、私には果物を付けてくれた。女将にニコッと笑い頭を下げた。



 私はスープに入っている肉を、ユリウスさんのスープにせっせと移した。



 残すのも嫌だったし、空間収納に放り投げるのはもうしたくなかった。



「後で話があるんだが構わないか?」と言われ、何で後なんだろう?と私は不思議に思いながらも、肉を移す。



 ユリウスさんが「肉嫌いなのか?」と聞いてきた。



「かちゃくて噛み切りぇにゃい」と私は女将に聞こえないよう、小さな声で伝えた。



 ユリウスさんは、あ〜、と納得してくれた。そのまま、私のスープにパンを千切って入れてくれる。



 ただ、肉を一片解して食べさせられた。



 何とか飲み込んだけど。



 そして、私が昨日食べられなかった物を、空間収納に投げ入れた事がバレた。



 なぜだ。解せぬ。



「栄養が足りない。女将にミルク粥作ってもらおうか?」とユリウスさんに聞かれた。



 私は食べるのに疲れていたので「いいえ、コレちゃべましゅ」と丁重にお断りした。




◆◇◆◇◆◇



 部屋に戻り、シャワーを浴びて寝衣に着替えた。足首まであるワンピース?ネグリジェ?色気はまったく無いケド。



 ユリウスさんが新たに買って来てくれたのだ。素直に嬉しい。



「あのな、まず俺達は親子として行動しようと思う。どうだ?」



 えっ?私を娘にしてくれると?でも…



「ユリウスしゃん、おいくちゅでしゅか?」



「俺?26歳だけど?もっと老けて見える?」



 なんだってーー!私より年下だった…。体は3歳だけど……年下………。



「しょんなにお若いにょにいいのでしゅか?コブ付きになっちゃらモテまちぇんよ?」



 恋人なり嫁さんなり欲しいでしょ?討伐が何時になるか分からない今、私を連れ歩いたら女が寄って来なくなってしまう。



 ユリウスさんは、色恋は邪魔なだけだと言う。それに「帝国に見つかるとマズいんだ。お前を娘として連れ歩くのは、都合が良いんだよ」



 フンフン。ユリウスさんはガリウレス王国の騎士団長だった。



 一人で生き延びた事で、追われる可能性があるんだね。私がいれば、少しは奴らの目を欺けるかな?



「だから、これからは父上とかお父様とか、人前ではそう呼ぶように」と人差し指を突き出し、ビシッと言われてしまった。



 私の人生に父と言う存在はいない。母に聞いても教えてもらえなかった。



 だから「ちちうえ?おとーしゃま?うえっきもちわりゅい……」と呟いてしまった。



 言い慣れないし、恥ずかしい。この体の子の記憶が無いから、本当の両親も分からない。俯いて考えてしまう。



 だからと言ってどう呼ぶか、と立ち止まる理由にはいかないのだ。



 私は顔を上げ「おとーしゃんでいいでしゅか?」と尋ねた



 ユリウスさんは、何かを考えながら少し笑って「お父さんでいいぞ」と私の頭をポンポン撫でる。



 私はまた恥ずかしくなり、手を払い除けてしまった。顔が赤くなる。



 この日、私の人生で初めて“父”と呼ぶ人ができた。







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