20 創造神様初登場
〈ゴホンッ、あー、エレナちゃん?起きてくれるかな?〉
眠っている私の頭の中で、声が響く。
〈エレナちゃん、僕創造神だよ。起きて?〉
(えっ?!創造神様?)
〈そうだよ。女神が迷惑かけてごめんね。体はどう?〉
(あ〜、体辛いです。どうにかして欲しい…)
〈そうだよね。体がこっちにあれば何とか出来たんだけど、下界にあるから手が出せないんだよ。少しだけ僕の力を流しておくね〉
(ありがとうございます)ホワ~ンと体が温かくなる。なんかスゴい。
〈ううん。昼間は起きていられるぐらいにしか出来ないから、夜はちゃんと眠ってね?〉
(はい、分かりました)
〈それと、エレナちゃんのマジックバッグに懐中時計入れといたの。ミスリル製だよ。ソレにあの黒木が何処にいるとか、何をしているかとかの情報を流すから、上手く使ってね。僕が作ったから、中々の仕上がりになったよ。拘りの一品だ。大事にしてね。それから、マジックバッグは魔力を注ぐと、好きな型に変えられるんだ。凄いでしょ?〉
(え〜と、はい。ありがとうございます)
〈あのアホ女神は、捕らえて牢獄にぶち込んだから安心して?〉
(おおー!捕まえて頂けたのですね!ざまぁーみろー!)眠ってなきゃ踊りたいぐらいだわっ!
〈ふふふ、喜んで貰えて嬉しいな〉
(どうやって捕まえたのですか?)
〈ん?僕の名前でデートしようか?って手紙を送っただけ。ちなみに宛名は書いていない〉
(えっ?それって、勝手に勘違いしてノコノコ創造神様の前に来たって事ですか?ププッ)
〈そうだよ。ほんとバカだよね。僕があんな奴とデートする理由なんて無いのにね〉
(ブホォッ、ん゙ん゙失礼しました。もう一人の若い男はどうなりましたか?)
〈アレも捕らえたよ。女神に付いて来たから一緒にね〉
(デートに連れて来たんですか!?)
〈アレは女神に妄信的だったから、何も考えてないんだよ。女神の行く先が、自分の行く道だと思ってる〉
(うわぁ~、気持ち悪っ)
〈ただ、いくら僕でも女神を処分するには、時間がかかるんだ。罪状を揃えないとね。罰を与えるのは少し待っててね?〉
(捕まえて頂けたので私は…。でも無いか。散々罵倒されて蹴られて殴られましたし、餓死寸前だったし、水すら貰えなかった。あの見習いじーさんも、酷い目に合ってたし)
〈うん、全部聞いてる。辛い目に合わせてごめんね?この埋め合わせは必ずするからね?〉
(はい、分かりました。楽しみにしています。じーさんは元気にしていますか?)
〈うん。今回良く働いてくれたから、昇格させるよ。今ここにいないんだ。伝言ある?〉
(いつかまた、話がしたいです)
〈分かった。いつか話が出来るようにするよ〉
(ありがとうございます!)
〈じゃあ、そろそろ切るね。また声掛けるから〉
プツンッと音がして、私が返事をする前に交信が切れた。
創造神様ってせっかち?
不思議な声をしていたなぁ〜。じーさんとも話がしたかったなぁ〜。
◆◇◆◇◆◇
そしていつの間にか朝になっていた。
ずい分深く眠ったようで、昨日より私の体は軽く感じた。創造神様のおかげかな?
「んにゅ。おはようごじゃいましゅ、ユリュウシュしゃん…」アレ?口が回らない…
うっそ〜ん。何てこった。
「おはようエレナ。良く眠れたか?」ユリウスさんは起きていて、もう着替え終わっていた。
「はい、ありがとうごじゃいましゅ。お腹がしゅきまちた…」ユリウスさんの眼差しがイタイデス…。
モソモソと着替えながら、昨日の話を覚えているか聞かれた。
もちろん、覚えていますとも。話し方だけ変わったのよ。
ユリウスさんが爆笑している。私の頭を撫でながら「可愛いなぁ〜」と言う。
ぐへっ。イケメンにそんな事されたら恥ずかしいじゃん!
私の顔が真っ赤になったのが分かり、思わずユリウスさんの手を払い除けてしまった。
「顔を洗って出掛けるぞ。悪いがまた金出して貰えるか?色々買う物があるんだよ」
あっ!そうだ渡す物があるんだ。
私は空間収納に手を突っ込み、まず金貨の入った麻袋を取り出した。
ユリウスさんに渡す。いちいちやり取りするのは面倒だ。
麻袋から金貨を出し、返そうとするユリウスさんを手で止めて、そのまま持っててもらう。
次に取り出したのは、マジックバッグだ。ユリウスさん専用肩掛けカバン。喜んで頂けたら嬉しいな。
「コレちゃち上げましゅ。ちょーじょーちんからのぷれじぇんとでしゅ。アホ女神からの迷惑料だしょうでつ」
ユリウスさんが笑ってる。
「創造神からのプレゼント?迷惑料?また話がデカくなってるな」
「しょれマジックバッグでしゅ。魔力をちょちょぐと自分のしゅきな型に変えりゃれるしょーでつ」
「ええっ!そりゃありがたいな。滅多に手に入らないんだぞ!」ユリウスさんがメチャクチャ喜んでいる。
私も嬉しい。ありがとう、創造神様。
ユリウスさんは、金貨の袋を何度も出し入れして確かめていた。
私も、自分用のマジックバッグを取り出した。白い肩掛けポーチだ。桜の絵が付いている。
可愛いけど、可愛い過ぎる…。
つい、眉間にシワを寄せてしまった。
次は懐中時計を確認。ふんふん。さすが創造神様が拘った一品。
コレは…マズいぞ…。蓋の真ん中に魔石が付いてて、それを囲うように蔦に掴まるキジが二羽。凝りすぎですよ!それに、魔石も付いてるっ!
「綺麗な時計だな。それも貰ったのか?」
「コレ、ミチュリルでつ。こんにゃ高価にゃ物にちて…。もうっ!いい加減にちてっ!」
一目見ただけで高級品だと分かる…。持ってるだけで色んな奴に狙われる気がするんだけど、気のせいかな?
どうしてくれるのよっ!
「良い物貰って良かったじゃないか。大事にしろよ」ユリウスさんから、また頭を撫でられた。
的外れな事を言われて、キッと睨んでしまった。
「ちがいましゅ。コレは黒木の情報をちゅたえてくれる魔道具でしゅ」私は試しに魔力を流してみた。
蓋の裏の鏡の部分に文字が出た。
『現在、クロキは帝国城内にて拘束されている。理由不明』
拘束?何したんだろうアイツ。でも、帝国にいる事は分かった。今はそれで良いよね。
「ほら、もう出掛けるぞ。今日はたくさん歩くからな」そう言ってユリウスさんは、私にローブを着せて革靴を履かせてくれた。
何てお優しいのでしょう。ムフフ。
新たな革靴の感触を確かめる。爪先をトントン鳴らして、少し大きめな革靴は思いの他履きやすかった。
ユリウスさんはなぜか、拳を握りしめ私を見ながら微笑んでいた。




