16 神界のクソ女神
「アタシはこの世界の管理者の女神よ。頭が高いわよ?」
イヤ、私寝っ転がっているだけで起き上がれないんだけど?
「アンタには勇者を討伐してもらいたの。分かった?」
「分かりません」私は即答する。
「ハァッ?アンタ頭悪いんじゃないの?アンタの恋人が勇者召喚でこの世界に来ちゃったのよ!アンタは死んで魂だけになっていたから、一緒にこっちの世界に来た所をアタシが拾ってやったの!何度も言わせないでよ!」そう言いながら、また扇で殴って来る。
「誰が信じるもんか、そんなウソ!アンタの方が頭がイカれてんじゃないの!?。カワイソ〜」
私は何度も殴られ罵倒された事もあり、嫌味たっぷりに言い返してやった。
自分でも分かっていた。確かに死んだハズなのだ。ドクドクと血が流れて行く様も見ていたし、黒木の体が光ったことも覚えている。
「何ですって!?この小娘がっ!」蔑んだ目で私を見たクソ女神が、また私を殴ろうとした所でじーさんが怒鳴った。
「これ以上無体な真似をするならば、創造神様に申し上げますぞ!」
ビクッと肩を揺らし、クソ女神が動きを止めた。 「フンッ分かったわよ。説明すればいいんでしょ」
最初からそうしてよ。
「えーっと、エルダーナ帝国が勇者召喚をして黒木が応えた。ここまでは良いかしら?」
急にお淑やかに話しているね。聞いた事も無い国の名前を言っていたけど、後でいいか。
「あなたは魂になっていたから巻き込まれたのよ。体が無いままこっちに来ちゃえば、そのまま消滅しちゃう所だったわけ」
私は死んで魂だけになっていて、消滅する所だったと。
「それをアタシが拾って、新しい体に魂を入れてやったのよ。良かったわね」
良かった?何がよ。
「それで、創造神様に勇者召喚が行われたのがバレると、色々マズいのよぉ〜。アタシが怒られちゃうのっ!だからバレる前にあの黒木って子を殺して欲しいのよ。分かった?」扇で私を指しながら、品を作る。
「イヤ、分かりません。なぜ私が?」
「だって、アイツに殺されたんだから恨んでいるでしょ?自分の手で仕返ししたいんじゃないの?」
「それは、そうですが…」
「アタシが仕返しを手伝ってあげるわ。しっかり学びなさいね!」
ん〜〜?色々誤魔化された気がする…。
この頃の私は目を開けて話を聞くだけでも体が辛く、すぐ眠ったり起きたりを繰り返していた。
「あ〜あ、また眠っちゃったわ。使えないヤツねー」
「それは、あなたがキチンと魂の定着を行わないからですぞ?今一度、身体と魂を錬成して…」
「嫌よっ、面倒くさい。一度で十分よっ!」
「ハァ〜。あなたは魔術が下手過ぎます…」
「何か言ったかしらっ?」キッと睨みつけ、女神は何処かへ行ってしまった。
◆◇◆◇◆◇
目が覚めると、必ずじーさんが私の側にいた。
「エレナさん、お加減はいかがかの?」
「体が重いです。お腹も空いているし、喉も渇いた…」私がそう言うと、じーさんは水を飲ませてくれた。
「貢ぎ物に食べ物が有れば良いのじゃが、神は腹が減らないからの。生身の人間なのだから、このままでは餓死してしまうぞい」じーさんが私を見ながらブツブツ言っている。
「あの女神、碌でも無いわね…」ついそんな言葉を吐いてしまった。
「ですが、せっかく転生したのです。エレナさんがしたかった事、やりたかった事、あるのではないですか?」
じーさん、いつの間に私の名を?
そっか。あんな事が無ければ、確かにまだ生きていたかった。
私が望んだ転生じゃないけど、やり直すチャンスを貰ったって事なのかな?
ならば、また生きてみたいかも。
「おじーさん、お名前は?」
「ワシは見習いとしてこの神界に置いて頂いているだけなので、名は無いのです。じーさんで構いませんよ」
「分かった。これから私がんばってみるね。何か学べって言われたけど何をするの?」
「勇者討伐の為、魔法を学んで頂きます」とじーさんがにこやかに言った。
うわっ初っぱなから無理だ。
「魔法?使ったこと無いけど?」
「だから女神様から習うのですよ」今度はニッコリ笑ってじーさんが言う。
「え〜〜?あの女神信用出来ない…」私はあのクソ女神を全く信用しなかった。
「我慢なされ。自分の為だと思って」と、じーさんに諭されてしまった。
◆◇◆◇◆◇
「この体何とかならない?サイズが縮んでいるよね?」
大人だった自分の体を思い浮かべ、手の小ささに驚いたのだ。
何でちっちゃくなってんの?
「それはですね、あなたの肉体は元の世界にあって、こちらに持って来れなかったのは分かりますか?」
「うん。魂だけだったから召喚に巻き込まれたんでしょ?」
「そうです。なので体はこちらで用意しました。可哀想に、3歳で亡くなった女の子の体にあなたの魂を入れたのです。お名前はアレクシア」じーさんが悲痛な顔で教えてくれた。
「3歳の女の子!?しかも亡くなった人の体なんて…なんて酷い事を…」私は又もや泣き出してしまった。
多分、感情が3歳の体に引っ張られているように思う。
「泣かないで下され、泣かないで下され」そう言ってじーさんが、私の胸をトントン叩く。
それをされると眠っちゃうのよね。
程なくして私は、まんまと眠ってしまったのだった。
◆◇◆◇◆◇
どのくらい時間が経ったのか分からないが、やっと上半身だけ起こせるようになった。
じーさんが時々、果物をくれたおかげだと思う。
その状態で女神に魔法を習う事になった。
「まだ立てないの?ホントグズよねっ!アンタも何やってんのよ!」キンキン喚くクソ女神。じーさんをひと睨みする。
相変わらずド派手で下品だ。
「アタシ〜、これから上級男神様とデートなのぉ。魔力の使い方教えて上げるから、サッサと覚えなさいよっ!」
いちいちムカつく女神である。
「じゃあ、体の中に魔力集めて、手から火や水や風や土を放出するだけよ。やってみなさい」
教え方もド下手である。
「分かるわけないじゃん…」と、隣で心配そうに見ているじーさんと目が合ってしまう。
クソ女神の斜め後ろに立つ若い男は、ニタニタしながら女神の下半身を見つめていた。
はぁ〜、仕方ない。やってみるか。
体の中心に神経を集中して何かあるか探してみると、お腹の辺りにポワッと温かい何かを感じた。
これを手まで持って来て、火を思い浮かべた。すると直径20cmぐらいの火の玉が浮かんでいた。
「やれば出来るじゃない。かなりちっちゃいけど。それの何倍も大きいのを作らないと、あの勇者に敗けちゃうわよ!いいわねっ!」
私に人差し指を向けて「じゃあね」と言って女神と若い男は消えた。
「えっ?これだけ?」
「本当にあの女神様は…。無責任にも程がある…」じーさんが頭を抱えていた。




