14 オコメは必需品
オカユを食べたエレナは、メキメキと元気になった。まだ入院はしているけどね。
俺は宿舎の延長をして、また森へ行って薬草採取や小さい魔物を斃していた。
鍛練も欠かさず、剣も振った。かなり動けるようになった。接近戦なら少しはやれる、と思う…。
一人での行動は楽ではあるが、いつも頭の隅にエレナがいて、早く一緒に森に来たいなぁ〜と思ってしまう。
トーダさんの店に行き、まだオコメが有るか聞いてみたがやはりあれで全部だったらしい。
トーダさんは入荷の為に旧王都へ向かってしまったと、ミアさんに言われてしまった。
トーダさん、Cランク冒険者なんだって。ちょっとだけ驚いた。
ダクサムさんの方も気になったが、店に行って声を掛けても出て来てくれなかったので諦めた。
魔道具、上手く作れているのかな。心配だよ。
◆◇◆◇◆◇
そして一週間が経ち、エレナの退院が決まり、トーダさんも戻って来た。
今度は冒険者ギルドに依頼を出し、人海戦術でオコメを集めたそうだ。
「元農家だった冒険者の子らに、オカユを食べさせたんだよ。皆喜んでね〜。疲れ過ぎて食欲が無い時でも、スルスル入っちゃうじゃない。だからあの子達にオコメの収穫を頼んでさ、上手く行ったよ」
迷宮の5階にしか無いかと思っていたら、他の階にもあったんだって。
今回は、麻の大袋を三つも持って帰って来た。
後はダクサムさんの魔道具だけだ。
手作業でオコメをガンガン叩くのは辛すぎるが、エレナの為ならがんばれるけどな。
トーダさんに少しだけオコメを売ってもらい、俺はダクサムさんの所に行ってみた。
◆◇◆◇◆◇
「こんにちは。魔道具出来ましたか?」
「よう坊主、出来たぞ。次は実際に動かしてみねーとな。オコメとやらは持ってるか?」ダクサムさん、今日は出て来てくれた。良かった。それに魔道具も出来たのか?すごいな。
トーダさんも呼んで来て試してみた。
四角い銀の箱がウィーンと音がした後、ガシャンガシャンと凄い音が鳴りだした。ガトゴト箱も揺れているけど大丈夫か?
「コレ、大丈夫なの?音が凄いね」トーダさんが、また失敗かな〜と呟いている。
「まぁ待てよ。なるべく短時間で済むように、圧力を上げて、回転刃を入れて、風魔法で動かしてんだよ」と、ダクサムさんの解説が入る。
たいしてオコメの量は入れてないから、そんなに時間はかからないと言う。
箱も両手で持てるぐらいだし、魔石もスイッチぐらいで魔力をそんなに使わないで済む。
下の引き出しの上部には目の細かい網があって、そこに“オコメ”が溜まり、茶色の粉は下に溜まって捨てられるようになっていた。
上の蓋にオコメが入れられるぐらいの穴が空いていて、透明な蓋が付いているから出来上がり具合も確かめられる。
なんて親切設計。
5分程で音が止まった。
皆で箱を覗き込む。
オコメは白くなってはいたが、ツブが小さくないか…?
「コレ、オコメが砕けちゃってるよ。それ以外は成功だね、珍しく」トーダさんが口に手を当て、ふふふと笑っていた。
きっと商売の算段を付けているのだろう。
「とりあえず、娘に食べさせたいのでこのオコメ貰って良いですか?」
「あん?こんなんで良いのか?」ダクサムが訝しむ。
「はい。娘が待っているので」俺は目に力を入れて、譲らない意思を示してみた。
ダクサムさんはちょっと引いていたように思う。
「お、おう。おめーが待って来たオコメだからな。ホレ」と、麻袋に詰め返してくれた。
もうここで俺に出来る事は無い。
「すいません、お先に失礼します」後はお二人に任せよう。
「じゃあまた今度。この装置の事は任せてよ。私はじーさんに要望があるし」
トーダさんの要望って何だろう?俺には関係ないか。
早く帰って、エレナと一緒にオカユを作ろう。楽しみだな。
◆◇◆◇◆◇
エレナはまだ医務室にいる。
平熱になったし、アレン先生ともおしゃべりしたり、おやつを貰ったりして仲良くなった。
マックスもよく顔を出してくれていたらしく、意識が戻った時に、目の前に大男の顔があって驚いたそうだ。
食べられてしまうと思ったんだって。
アレン先生にまた、後頭部を叩かれてたらしいケド。
「エレナ、オコメ買って来たぞ。一緒にオカユ作ろうか」
嬉しそうに頷くエレナを見てホッとする。
一時はどうなるかと本気で心配した。
アレン先生に「歩かせるな」と言われたので、毛布に包んで抱き上げた。
共同キッチンまで移動して、エレナの言う通りにオカユを作る。
生卵を溶きほぐして入れても良いらしい事を初めて聞いた。
今度やってみような。美味しそうだ。
今日は兎肉を入れようか。野菜も細かく切って塩も入れた。
グツグツ煮えるオカユを見て、エレナは本当に嬉しそうだ。
アレン先生も食べるかな?
二人で味見をして、エレナから「おいちい」と言ってもらえたよ。
鍋ごとマジックバッグに入れて、医務室に移動した。
◆◇◆◇◆◇
エレナと俺と、やっぱり覗きに来たアレン先生の分も器によそって皆で食べた。
エレナがモグモグとお口いっぱいにオカユを食べ進めるのを見て、オコメは必需品だと改めて思う。
ん~~、自分達でオコメを採りに行った方が安上がり、だよなぁ〜。旧王都、行っちゃおうかな〜。
アレン先生が「おお、エレナちゃん沢山食べてえらいなぁ。これから毎日それぐらい食べられればもう安心だな。うんうん」
どこのお爺ちゃんですか、アンタは。
「明日退院で良いけど、毎日ワシの所に来るように。このぐらいの子はすぐに体を壊すからな。いいな?」指で俺の顔を指すのはやめて下さい。
やったぞ!退院の許可が出た。
「良かったなぁ〜エレナ」俺も嬉しいよ。
エレナも笑顔で頷いている。頭を撫でてやる。
顔色も良いし、肌艶も良くなった。頬にも肉が付いて、ずい分可愛くなった。
そうだよ。ずっと思っていたんだけどエレナの髪、切った方がいいよね?ボサボサなままなんだよね。せっかく可愛いから可愛くしたい。
俺もだいぶ肉が付いたと思うんだけど、どうだろう?元々そんなに太ってなかったしなぁ。筋肉は中々戻らないけど、肌艶は良くなってると思うんだよな。
そんな事を思いつつ自分の頬を触っていると、アレン先生が「お前はもう少し肉を食えよ」と肩を叩かれてしまった。
ハイ、ガンバリマス…。
明日から、またエレナと一緒に行動できる。俺は心底嬉しかった。
そしてその夜………。
寝ていた俺に、とんでもない事が起きた。




