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第3話 初ダンジョンと、死んだらどうなるか問題

街外れのダンジョン前は、異様なほど静かだった。

「ここ……本来なら、人多いですよね」

レオンが周囲を見回す。

「うん。初心者用だし」

ミルフィが小さく付け足す。

「……みんな、様子見してるんだと思います」

それは正しい判断だ。

ログアウトできない以上

ここはもう“遊び場”じゃない。


「入って、危なかったらすぐ引き返そう」

私が言うと、二人は同時に頷いた。


洞窟の中は、じめっとしていて

やけに現実的だった。

水滴の音。

湿った岩肌。

足音が反響する。


「これ、没入感ってレベルじゃないですよ……」

「匂いも、あります……」

ミルフィが顔をしかめる。


(描く前に、慣れないほうがいい)


私は筆を握り直した。

霧の奥で、何かが動く。

スケルトン。


「……HPバー、出てません」


レオンの声が硬くなる。

「非表示なんて、ありましたっけ?」

「ない、と思う」

スケルトンが、急に踏み込んできた。

「っ!」

反射的に、筆を振る。


ばさっ。


空中に走った線が、骸骨を真っ二つにした。

……いや、違う。

切れた、というより“ほどけた”

「……今の、剣技じゃないですよね」

「線、引いただけ」

「それが一番怖いです!」


「ちょっと戦力増やしたほうがいいかな…

ミルフィ、召喚できる?」

私はすぐに切り替えた。

「……やってみます」


鈴を鳴らす。

光が集まり、散る。


「……だめです」

「焦らなくていい」


私は地面に円を描いた。

ゆっくり、均一に。

「この中で」

ミルフィは少し迷ってから、その円に立つ。


もう一度、鈴。

今度は光が揺れなかった。


ミルフィの足元に浮かび上がった魔法陣は、淡い金色だった。細い線で描かれた紋様が、呼吸するように明滅している。

「……来て。お願い……!」

ミルフィの声に応えるように、魔法陣から光が溢れ出す。


 ――ぽん


 間の抜けた音とともに現れたのは、

 手のひらサイズの、ふわふわした生き物だった。

 丸い。白い。

 耳が長くて、目が大きい。

「う、うさぎ……?え、かわいい」

 思わず、いろはが本音を漏らす。


レオンが額を押さえる。

「今の、補助魔法ですか?」

「円、描いただけ」

「だからそれが怖い!」


ズン……ズン……。

洞窟の奥が、低く揺れた。


「……今の音」

レオンの顔色が変わる。

「ボス、いますよね」

「このダンジョン……本来、いません」

ミルフィの声が小さくなる。


(来る、か)


私は筆を握り直した。

「もし死んだら、どうなるか」

誰かが、言いかけて黙る。


「……確かめる必要、ないよ」

私は前を見る。

「戻れるように、描く」

「どういう意味です?」

「あとで分かる」


霧の奥で、巨大な影が動いた。

「行こう」

私が言うと、二人は息を呑んだ。


画家が先頭に立つのは、

たぶん、どこか間違っている。


でも――

今は、それしかなかった。

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