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第2話 フレンドはイケメンで、全員ログアウト不能でした

「いろはさん! いろはさんですよね!」


背後から聞こえた声に、私は思わず振り向いた。

そこにいたのは、見覚えのある剣士アバターだった。

金髪に長身、整った顔立ち。

――でも、表情は明らかに余裕がない。


「レオン?」

「よかった……本当に……!」

レオンは深く息を吐いた。


「メニュー、全部確認しました。ログアウト、ありません」

「やっぱり……」


アップデート後から感じていた違和感が

確信に変わる。


「レオンも、同じタイミングで?」

「はい。街に入った直後から、です」

そのときだった。

――グルルルッ。

低い唸り声とともに、ウルフ型モンスターが路地から飛び出してきた。

「後ろ!」

レオンが叫ぶ。


「え、ちょ……!」

私は反射的に巨大な筆を振り回した。


ばさっ。


空中に、淡く光る線が走る。

次の瞬間、モンスターは衝撃音もなく、霧のように消え去った。


「…………」

「…………」


レオンが、恐る恐る口を開く。

「……いろはさん。それ、通常攻撃ですか?」

「いや、転びそうになっただけだけど……」

「それで倒れる敵、怖すぎません?」


「す、すごかった……」

控えめな声に、二人で振り向く。


物陰から出てきたのは、小柄な少女だった。

召喚士のローブに身を包み、胸元で小さな鈴を握っている。


「……あなたたちも、プレイヤーですか?」


「うん。ログアウトできないのよね」


私が答えると、少女はほっと息をついた。

「よかった……

NPCだったら、どう話せばいいか分からなくて」

「それ、分かります」

レオンが苦笑する。


少女は、さっきモンスターが消えた場所を見つめた。

「……あの攻撃、普通の魔法じゃないですよね?」

「たぶん……」


「召喚でも、剣技でもなかった」

少し考え込んでから、彼女は言った。


「でも……怖くなかったんです」

「怖くない?」

「召喚に失敗すると、魔力が乱れて……気持ち悪くなるんです」

自分の胸元を軽く押さえながら、続ける。

「さっきは、そういう感じがありませんでした」


私は無意識に、筆を見下ろした。

「……線、引いただけなんだけど」

「線が、きれいでした」

少女は、はっきりと言った。


「召喚陣を描くとき、線が乱れると失敗します。

さっきのは……すごく整ってました」

「……ありがとう」

なんだか、少し照れる。

「わたし、ミルフィ・ルゥです。召喚士」


「綾瀬いろは。画家」


「画家……」

ミルフィは驚いた顔をしたあと、納得したように頷いた。

「だから、絵なんですね」

「整理しますね」

レオンが指を折る。

「俺たちは全員、ログアウト不能のプレイヤー」

「うん」

「ミルフィさんは召喚士。いろはさんは……」

ちらっと、巨大な筆を見る。


「……明らかに規格外」


「ひどい」

「褒めてます!」

必死に否定されても、あまり安心しない。


「一人で動くの、危険すぎます」

レオンは真剣な顔で言った。

「パーティー、組みませんか」


ミルフィが小さく頷く。

「わたしも……一人は、怖いです」


少し考えてから、私は答えた。

「絵を描いてていいなら」

「お願いします!」

二人が即答する。

空中に、パーティー申請ウィンドウが浮かび上がった。


パーティー結成

・画家(不遇職)

・剣士(精神耐久低)

・召喚士(初心者)


……本当に、バランスは悪そうだ。

その直後。


ドン……ドン……と、地面が揺れた。


レオンの顔が青ざめる。

「この振動……ボス級、ですよね?」


ミルフィが小さく震えた。

「さっきより……大きい……」


私は巨大な筆を握り直し、深呼吸する。

「……線、太めでいくね」

「だから待ってって!!」


こうして、

ログアウト不能の世界で

最も前に出てはいけない画家を中心にしたパーティーが誕生した。

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