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渇夢を星夜に  作者: つなまぐろ
夢の死骸
30/47

進路

 進路を決め、父と向き合い、自分の「傷」を受け入れてから数日が経った。

 学校の廊下を歩いていると、進路票の話はすっかり終わったかのように、日常の話題があふれている。


 それでも、心の奥ではまだ不安が小さく蠢いていた。


 (これで本当に良かったのかな……)


 朝のホームルーム中、担任の先生が進路関連の資料を配りながら言った。


 「ここからは、模試や説明会、オープンキャンパスなど、自分の選んだ道をより具体的に考えていく期間だ。悩むこともあるだろうが、それが当たり前だからな」


 生徒たちがざわめく中、僕は配られた資料に目を落とす。

 大学の名前、偏差値、合格率……そこには数値化された「現実」が冷たく並んでいた。


 (現実って、こんなにも無機質で、こんなにも重たいんだな……)


 ふと、となりの席の田中が小声で言った。


 「おい真冬……やっぱさ、文系にすっかな、俺」


 「……そっか」


 「いや、理系も面白そうだし、でも文系のほうが楽そうだし……もうわかんねーわ」


 田中の言葉は、笑いながらもどこか切実だった。

 自分だけじゃない、みんな悩んでいる。その当たり前の事実が、ほんの少しだけ僕を支えてくれた。


 昼休み、廊下の窓から外を眺める。

 冬の空は青く高く、見上げるほどに冷たい空気が頬に刺さった。


 (この空の向こうに、僕の行きたい場所がある。……それでも、まだ怖い)


 怖さを抱えたまま、放課後を迎えた。

 帰り道、夕陽に染まったアスファルトを踏みしめながら、僕はふと足を止める。


 (あの夜、星を見て決めたんだよな。あのときの気持ち、まだ胸にあるか?)


 ポケットに手を入れると、進路票の控えのコピーが指先に触れる。

 (何度でも、思い出せ。……迷ったら、空を見上げろ)


 そのまま公園へ向かった。

 冬の夜は冷たく、吐く息は白い。



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